<第30回>ガチンコ!大晦日決戦(05.11.16)

 新日本のユークス子会社化についても書きたいが、ここは少し様子を見ることとして大晦日決戦について書きたいと思う。

 これはK−1とPRIDE、TBSとフジのテレビ局同士の文字通りのガチンコだ。当初、K−1の『Dynamite!!』方が断然リードしていた。山本"KID"徳郁VS須藤元気のミドル級世界最強王者決定トーナメント決勝はテレビ的にも視聴率が見込めるし、永田克彦の総合格闘家デビューはプロレス・ファンにとって注目すべきニュース。そこへもってきての曙VSボビー・オロゴンである。これは完全にNHKの『紅白歌合戦』を意識したカード。テレビを観る視聴者を意識したバラエティ色も兼ね備えたビッグ・カード。メディアを熟知し、ミーハー的な感覚を持った谷川氏ならではのものと言っていい。

 一方のPRIDE側の『男祭り』はシリアス路線。PRIDEウェルター級トーナメント決勝のヘンダーソンVSブスタマンチ、ライト級決勝の五味VS桜井、菊田とシドニー五輪金メダリストの瀧本の激突、今年大活躍した中村とパンクラスの近藤の一戦など、こちらは格闘技ファン好みの直球勝負である。そこにメインとして緊急決定したのが小川と吉田の激突だから、これは凄い巻き返しだ。

 明治大学柔道部の先輩・後輩である小川と吉田の激突にはドラマがある。高校から柔道を始めてわずか4年で世界王者になった小川と、小学校4年から柔道一筋で生きてきた吉田の人生観の違い、バルセロナ五輪で銀メダルに終わって戦犯扱いされた小川と、金メダルを獲って英雄になった吉田。94年の全日本選手権無差別級で小川のX6を阻止した吉田。そんな2人がプロの総合のリングで相まみえるのだ。まさにお互いの全人生を賭けた一戦と言ってもいいだろう。

 異色の曙VSボビーか、観る方まで手に汗握ってしまう小川VS吉田か!?今、プロレスにこんなワクワクするカードがないのが寂しい限りだ。

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<第29回>ハッスルの可能性(05.11.9)

 11月3日の横浜アリーナにおける『ハッスル・マニア』の熱は未だ冷めていない。私はハッスルについてターザン山本!氏に「ハッスルは観戦するものじゃないですよ。観賞するものです。あそこまでエンターテインメントとして作りこまれている以上、従来のプロレスの取材する感覚とは違います。記事も戦評ではなく、映画やドラマの批評のような感じになってしまいますよ」と話したが、これには凄く納得したようで、自身のホームページのコラムに「小佐野氏から観賞プロレスだと教えられた」と書いていた。

 勝敗のみの総合格闘技と一線を画すスポーツ・エンターテインメント(ハッスルに言わせるとファイティング・オペラ)は日本に根付くのか? 思えば、これをやりたかったのは故・冬木弘道さんだった。だが、これをやるには資金が必要。冬木さんが生きていたら、ハッスルをどんな目で見つめていただろうか…。

 日本人の感覚にはエンターテインメントというのは、まだ馴染んでいない。何かエンターテインメント=バラエティーといった感じだ。これまでのショー的要素が強いプロレスの傾向はお笑いであり、エロだった。ハッスルにしてもインリン様=色気、HG=お笑い&下ネタ。ここで大きかったのは和泉元彌の参戦だ。日本伝統芸能・狂言の第一人者がリングに上がったのは大きい。一般マスコミが食いついて当然である。そしてインリンも、HGも、和泉元彌も一見(いちげん)の観客だけでなくプロレス・ファンにも支持された。ちゃんとプロレスを成立させたのである。これは今後のハッスルの可能性を大きく広げた。

 だが、いつまでも芸能人頼りだったら、やっぱり苦しい。彩として、外の世界のタレントが参加しても、主役はプロレスラーであり、高度なプロレスの試合でなければならないと思う。一般の人が離れた時、プロレス・ファンが離れていたら、それで終わりなのだ。そしてそれは、単にハッスルの衰退だけでなく、日本プロレス界全体の衰退を招いてしまう。プロレスはあらゆる意味で今、正念場だ。


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<第28回>インディー・サミットについての見解(05.11.2)

 12月9日、東京・後楽園ホールにおいてインディーのオールスター戦『インディー・サミット』を主催することになった。今から10年前の94年4月2日、週刊ゴングのライバル誌・週刊プロレスの親元であるベースボール・マガジン社が『夢の懸け橋』なるプロレス・オールスター興行を開催、これに対して「マスコミが興行をやるべきではない!」とキャンペーンを張った週刊ゴングが興行を手掛けるのである。

 当時、週プロに「ノー!」を言って、大会まで丸3ヵ月、誌面で戦ったのは当時の週刊ゴング編集長の私だ。私は自分のクビを賭けて全身全霊で当時の週プロ編集長のターザン山本!氏と戦った。これも運命か、同じ4月2日、後楽園ホールを押さえていた団体があった。天龍率いるWARである。全日本を離脱してSWSに移籍した時、週プロに「金で動いた」とバッシングされた天龍は「俺は金では動かない!」とベースボール・マガジン社の好条件を蹴って単独の後楽園興行開催を決意。かくして週プロの『夢の懸け橋』VSWAR後楽園&週ゴン連合という図式が出来上がった。

 両大会とも盛況で、私も山本!氏も意地を通すことができて引分けだった。振り返ってみれば、あの94年の春はそれ以外にこれといった話題がなく、はからずもプロレス2大専門誌が業界の話題を作った形になった。今でも山本!氏と「あの時は最高に面白かったね!」という話になる。2人ともガチンコでやり合ったからこそ、お互いに相手の苦しい立場も理解できたし、あれがあったからこそ、今、誌面上やテレビで一緒に仕事ができるのだと思う。

 さて、あれだけ『夢の懸け橋』に反対した私が今回の週ゴンの興行をどう思っているかだ。私は10月11日からロング・バケーションを取ってしまったために、大会の是非を問う週刊ゴング1096号の座談会にも出席していないし、10月20日の大会発表記者会見にも行っていない。ただ、両方の記事を読む限り、なぜ私が10年前に「ノー」を言ったのか、きちんと理解されていないという印象を受けた。

「一プロレス・マスコミがプロレスの興行をやるべきではないというのが当時の週刊ゴングの姿勢だったが…」というニュアンスで書かれているが、大筋はそうでも、やはりきちんと細かく説明するべきだろう。私は単にマスコミが興行をやることに反対したのでない。その証拠に当時も東京スポーツ主催の『夢のオールスター戦』は肯定していたはずだ。

 当時、私が腹を立てたのは、主義主張を異にして枝分かれしたはずの各団体が週プロ…というより、プロレス・ファンに絶大な影響力を持っていた(これは素直に認める)山本!氏の顔色を窺っていたことだ。それは私に対する社交辞令だったかもしれないが「本当は参加したくないんですけど、週プロにホサれたくないので…」と言う団体関係者もいた。

「ライバル誌が主催する興行には意地でも協力できない」というのも本音なら「プロレス界は一つのマスコミに左右されるほど軟弱な業界かよ!」「権力で業界を私物化していいのか!」という2つの怒りが私を動かしたのだ。もし、WAR後楽園がなかったとしても、私は戦っていた。この件に関して、私は会社に自由にやらせてもらったが、それは裏を返せば、会社は私に丸投げしたということ。もし『夢の懸け橋』バッシングによって週刊ゴングの売り上げが落ちていたら、私ひとりが責任をかぶっていただろう。それを覚悟で戦ったのだ。

 昔のことはさておいて今回の『インディー・サミット』である。結論から言えば、私はよしとしている。理由は、週刊ゴングから持ちかけた話ではなく、インディー各団体側から生まれたということ、マッチメーク、大会の運営等も各団体が自発的に役割り分担して意欲的に取り組んでいることが第一。そして何より吉川編集長が他のマスコミに配慮していることである。

 これで週刊ゴングが自分の誌面で大会を大々的に発表し、ニュースを独占していたら話にならないが、きちんと週プロを含めて各マスコミに挨拶をして理解を求め、発表事はすべて記者会見を行なっている。ということは最初に発表事が記事になるのは週刊ゴングではなく新聞ということになる。こうした姿勢に他のマスコミも協力的になっているのだから、そこに異議を唱えることは何もないだろう。では週刊ゴングのメリットは何かと言うと、そういうイベントをバックアップしたというイメージ。それだけで十分だと思う。

 もし、今回の『インディー・サミット』について何か協力要請があったら、私は快く応じるつもりだ。

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<第27回>ハワイでWWE観戦(05.10.26)

 10月11日〜23日まで仕事を忘れてハワイでバケーションを取っていたが、やはり私の生活からプロレスは切り離せなかった。14日、ホノルル・アドバタイザーを読んでいたら、23日にニール・ブレイズデル・アリーナでWWE・RAWブランドのハウスショーがあるというではないか。かくして私は、この業界に入って初めて…実に25年半ぶりにチケットを買い、ビールとポップコーンを手にプロレス観戦することになった。

 買ったのは当日券。3年前の6月にロックの凱旋試合が行なわれた時には前売りチケットが発売当日に完売するほどの人気だけに、駄目モトで試合開始2時間前にボックス・オフィスに行ったが、すべてのチケットが残っていた。で、私が買ったのは一番安い26ドルの席。ちなみにリングサイドは75ドルだった。

 ラインナップはジョン・シーナにカート・アングルが挑戦するWWE戦、リック・フレアーにカリートが挑戦するインターコンチ戦、ビッグショーVSエッジ、タジリVSクリス・マスターズ、ケインVSタイソン・トムコなど、なかなかのものだったが、客入りは6割。アリーナは埋まったが、2階席は閑散としていて、過渡期のWWEの苦しさを物語るものだった。

 メインのWWE戦はノーDQ…つまり反則自由の試合だったが、これも王者シーナのキャリア不足を補う苦肉の策。アングルが必死になってシーナをWWEの看板に育てようとしている感じだ。絶大なる人気を誇っていたのはベビー・チェンジしたインターコンチ王者フレアー。子供も大人も「フォーッ!」と大喜び。日米問わず、長年第一線を張っているレスラーはリスペクトを集めるのだなあと思った次第。

 細かい分析はともかくとして、来ていたファンはWWEを娯楽として思う存分、楽しんでいた。お父さんから子供までミステリオのマスクでキメたファミリー、お手製のベルトを誇らしげに肩にかけて会場内を闊歩する若者。エキサイトしてイスから転げ落ちそうになるオジサン…みんなが日曜日の休日を楽しんでいた。

 難しい講釈はいらない。こうして人をハッピーな気分にさせるのがプロレスの使命なのだ。興行成績が落ちようが、やっぱりWWEはスポーツ・エンターテインメントとしてしっかりと根付いている。


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<第26回>新日本のストロング・スタイルとは(05.10.19)

 よく言われる新日本のストロング・スタイルとは何か? よく言われるのは「そこに闘いがあること」「強さの追求」といったところか。だが、私が学生時代に見ていた新日本のストロング・スタイルとは、もっと幅が広くて面白いものだった。

 まず前座で若手の元気いっぱいのぶつかり合いがあり、続いてドン荒川の笑えるファイトや、栗栖正伸の喧嘩ファイト、藤原喜明や木戸修の職人業などの中堅レスラーの深みのある試合が続く。休憩明けからはジュニアの華麗なるファイト、外国人選手、日本人同士の熱い闘い、そしてアントニオ猪木が締めるという具合で、プロレスのあらゆる面白い要素が一大会の中にあったのだ。

 その最盛期にはタイガーマスクがいて、長州VS藤波の名勝負数え唄があって、アンドレVSハンセンのド迫力スーパーヘビー級対決があり、その上でアントニオ猪木VSハルク・ホーガンがあったりしたのだから人気が爆発して当然だろう。

 今の新日本はジュニアからヘビーまで選手の駒が揃っている。ヤングライオンも充実してきた。外国人選手にしてもブロック・レスナーを獲得したことは大きい。いくらでも面白いシチュエーションを作れるはずだ。こうした人材をどうキャスティングするか、新現場監督・長州のお手並み拝見である。

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<第25回>長州の新日本現場監督復帰について(05.10.12)

 長州が10・8東京ドームから新日本の現場監督に復帰した。本当にプロレス界は何が起こるかわからない。3年4ヵ月前、アントニオ猪木を完全否定して去ったのは記憶に新しいところ。その猪木とサイモン社長の決断というから、それだけ新日本の状況は切迫しているのだろうし、それだけの人材がいなかったということになる。

 これは、一度は長州体制の新日本を壊しにかかった猪木が、90年代の黄金時代を作った長州のやり方を認めたということ。長州のやり方は徹底している。「これをやれ」と言ったら、絶対にやらせる。「できません」は通用しないのだ。そして「駄目!」と言ったものは絶対に駄目。その強引なやり方に反発した選手も多かったが、個性の強い人間の集まりだけに、そこまで強権を使ってまとめるというのは正しい。統率力がなくなり、方針がバラバラになったことによって新日本が衰退したのは事実である。

 そして今回の長州の現場監督復帰で興味深いのは、この3年4ヵ月で長州がいろいろなリングを見てきたということだ。ハッスルもそうだし、金村キンタロー率いるアパッチを始めとして、いろいろなインディーの選手とリング内外で接触してきた。それがどういう形でこれからの新日本に活かされるのか注目したい。

 ただし、今回の長州起用は新日本にとって劇薬なのも確か。一部の選手は公然と不快感を露にしているし、ノアとの交流もなくなるだろう。佐々木健介が新日本に上がることもないと思う。また、長州と前田、上井氏らとの関係はどうなっていくのか? しばらく新日本の動きから目が離せない。


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<第24回>カ全日本のハッピーな気分(05.10.5)

 今、全日本プロレスが最高に面白い。何が最高かというと、観ていてハッピーな気分にさせてくれるのだ。プロレスは非日常空間を楽しむ場。思いっきり声を出してストレスを解消してもいいし、明日への活力にしてもいい。本来、プロレスは難しいことを考えずにそうやって楽しむものだと思う。そうした材料を全日本の大会は提供してくれるのだ。

 試合前のRODタイムでTAKAの軽妙なお喋りを楽しみ、そこに割って入るブードゥー・マーダーズにブーイングを飛ばす。この時点で観客のプロレスに対する気持ちが出来上がる。大抵、第1試合には菊タローが登場して笑わせてくれ、その後はジュニアのスピーディーなファイト。中盤で中堅の試合でちょっと落ち着いて休憩タイムとなり、後半戦はROD、VMが登場してド迫力のファイトを見せてくれる。

 笑える試合、ジュニアの試合、RODとVMの外国人のスーパーヘビー級ファイト、TARU&YASSHIの憎まれぶり、そして武藤や小島…と、今の全日本にはプロレスのあらゆる要素が詰まっている。武藤が言っていた"パッケージとしての面白さ"が確立されているのである。

そして冒頭で書いたハッピーな気分。これはレスラーたちが楽しそうに乗って試合をしているからこそのもの。武藤も、フリーの健介も「だって、やってる俺たちがハッピーだからね」と言う。

 まったく風景が変わったが、外国人選手の魅力を伝えるという馬場時代の伝統を受け継ぎ、新しい形での"明るく楽しく激しいプロレス"を今の全日本プロレスは提供している。

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<第23回>どうなる!?東京ドーム(05.9.28)

 新日本の10・8東京ドーム大会が10日後に迫ったが、未だに発表されたカードは藤田VSレスナーVS蝶野のIWGP戦、永田VSモーガン、中西&カシンVSハース&ジンドラックのチームJAPANVS元WWE対抗戦、タイガーVSブラックのIWGP&NWA世界両ジュニア・ヘビー級戦のみ。ハッキリ言って、東京ドームの話題に呑み込まれてしまうと思われていた10月2日のW−1GPの方が盛り上がっている。

 ゼロワンMAXとの対抗戦はどうなるのか? 中邑、棚橋、天山、吉江のカードはどうなるのか? あまりにも発表が遅すぎる。もったいをつけているというより、万策尽き果てたというイメージしかないのは凄いマイナス材料だ。

 発表済みのカード自体は決して悪くない。だが、一向に盛り上がらないのは、今の新日本の沈滞ムードが大きく影響していると言っていいだろう。サイモン新体制になったのはいいが、今ひとつ、団体として一丸となっているように見えないのである。

 と、嘆いていても仕方がないので、発表されたカードの私なりの着眼点を述べておこう。まずメインの3WAYマッチだが、これはかなり難しい試合形式。簡単に言えば3人のバトルロイヤルみたいなものだから、内容に期待感が膨らまない。レスナーはWWEで、何度もこの形式の試合をしているが、藤田と蝶野の中に試合のイメージができているかがカギになる。ちなみにWWEで行なわれている3WAYは面白い。ここは藤田と蝶野の器量が試されるのだ。潜在能力はあるものの、キャリアの浅いレスナーの魅力を引き出した上でファンが満足できる内容のあるファイトをし、その上で勝つという、とてつもない難題を2人は突きつけられた。1・4のアルティメット・ロワイヤルといい、今回の3WAYといい、いずれもアントニオ猪木の発想なのは間違いない。そして多分、猪木だったら、どちらの試合形式でも面白い試合をやってのけるだろう。天才の猪木にしてみれば「こんな面白い試合を何で料理できないの?」ぐらいの感覚だと思う。言い換えれば、今回の3WAYは藤田と蝶野にとって、猪木の感性との勝負なのだ。

 チームJAPANと元WWE戦士との対抗戦も、チームJAPANの器量が問われる闘いだ。勝敗だけを考えれば、チームJAPANの勝利は固いが、やはり注目されるのは内容。これでいい内容を残せなければ、日本人VS外国人という基本路線が崩れてしまうのである。

 タイガーVSブラックは、タイガーが黄金の虎伝説復活を賭けた一戦。タイガーのこの一戦への意気込みは並々ならぬものがあり、期待していいと思う。初代を越える平成のタイガーマスクの第一歩となる重要な試合だ。


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<第22回>ノアの求心力(05.9.21

 今年に入って、さりげなくノアが凄い。総合格闘技に押されるプロレス界にあって、軸がブレることなく"確かなプロレス"をやっていたら、いつの間にか新日本に取って代わってプロレス業界の盟主になってしまった。

 注目すべきは"確かなプロレス"が外部の人間が入ってきても崩れないことだ。天龍源一郎、鈴木みのる、7・18東京ドームの川田利明、佐々木健介と、今年に入ってノアには外部の大物が入ってきているが、きっちりとノアのフレームに収まっているのである。8・4W−1GP1回戦では、秋山が柴田勝頼相手にノアのカラーを見せつけて、同大会のベストバウトをやってのけたのも、さすがだった。

 なぜ外部とやってもノアがブレないかというと、外部の選手のいずれもがノアのプロレスに魅力を感じ、ノアの空間から何かを感じ取りたいという気持ちを持って上がってくるからである。いわばノアへのリスペクトから、みんなノアのリングに吸い寄せられるのだ。秋山に触れた柴田は、KENTAとのタッグ結成によってノアのリングに上がることが決定した。外部の選手に「上がってください」とお願いするのではなく「上がりたい」と言わせてしまう求心力が今のノアにはある。

 10・2国立代々木競技場第一体育館で開催されるW−1GP第2戦では公式トーナメントで秋山VSボブ・サップ、三沢&小川VS曙&スコーピオが実現する。曙とサップが何を感じ取るか? 試合内容もさることながら、私の興味はそこにある。

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<第21回>前田と船木(05.9.14)

 9月11日、後楽園ホールにおけるビッグマウス・ラウドの旗揚げ戦。私は同日、ノア名古屋大会の取材のために行けなかったが、翌日の『NEWS侍!』でゲスト解説を務め、ダイジェスト版だけは見ることができた。これですべてを語ることはできないものの、ビンビン感じたのは会場の異様な熱気と期待感…今のプロレスに失われつつあるファンの溢れんばかりのエネルギーである。

 メインの村上VS柴田は、ふたりの何かを生み出したい、何かをファンに刻み込みたいという気持ちが伝わってきた試合。何か、まだルールが整備される前のプロレスと総合格闘技の狭間にあった時代のUWFを見ているような気がした。これがビッグマウス・ラウドの目指すものかどうかはわからないし、多分、本人たちもハッキリとは方向性を打ち出せていないと思うが、実験という角度から見たら、十分に合格点だったと思う。

 だが、この日の主役は何と言っても前田日明と船木誠勝だ。2人の過去の経緯を知っている者からすると、和解したのは知っていても、いざツーショットを見せられると「オーッ!」と声を上げたくなってしまう。

 それにしても船木はカッコイイ。今のレスラーにはないスター性がある。このスター性は地味なパンクラスの時代からも発散されていた。船木の華やかなムードと鈴木みのるのアクの強さ…パンクラスの他の選手にはない、プロレス出身ならではの煌めきが2人には備わっていた。

 恐らく船木はプロレスラーとして現役復帰するだろう。これは歓迎すべきこと。もし船木が89年4月に新生UWFに移籍していなければ、間違いなくIWGP王者になっていたはず。それほどの逸材にもかかわらず、プロレスラーとしてのファイトはヨーロッパ遠征以前のヤングライオン時代までしか日本のファンに見せていないのである。これはもったいない。今、プロレスラーとして再出発することには拍手喝采だ。

 前田と船木の2ショットの画面を見ていて思ったのは、2人とも“青春の忘れ物”を取りに来たのではないかということ。新生UWFは90年11月に事実上崩壊。翌91年1月から前田を中心に第3次UWFが発進するはずだった。ところが選手が3派に分裂し、田中心のUWFインターナショナル、船木は鈴木と共にプロフェッショナル・レスリング藤原組へ、孤立した前田はリングスを設立した。この3派に分裂する際に船木は「前田さんに捨てられました」と泣き、後日、前田は船木を引きとめようと手紙を送ったが、時すでに遅かった。もし、第3次UWFがあったとしたら、前田は船木を自分の後継エースにしていたと思う。

「あの分裂がなかったら、総合格闘技に押されることはなかった」と前田も船木も感じているのではないか。そうなると、やり直すのは今のタイミングがギリギリ。前田も船木も1度はプロレスに疑問を持って格闘技に邁進した。だが、ここでプロレスに回帰したということは、格闘技を突き詰めたからこそ、プロレスの本当の醍醐味が見えたのではないだろうか。

それが一体、何なのかを2人3脚で見せてくれることに期待したい。


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