賢人出演

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 今夜7月19日の23時~24時にサムライTVで放映される『全日本プロレス FLASHING NIGHT』には全日本プロレス所属になったバーニングの秋山準が出演する。私もこの番組は初出演なので元井美貴センパイに指導を仰ぎつつ、番組を進行させてもらった。
 話題はもちろん、新生・全日本プロレスの今後。賢人・秋山が諏訪魔、KENSO、SUSHI、白石社長、もちろんバーニングの面々についても舌鋒鋭く斬り込んでいる。もちろん、その根底にあるのは全日本プロレスへの愛情。ぜひ、ご覧ください!

放送席から観た新生・全日本プロレス旗揚げ戦

 6月30日の両国国技館から2週間…昨日はGAORAの新生・全日本プロレス旗揚げ戦中継の解説席へ。実際には『サマー・アクション・シリーズ』開幕戦だが、武藤・全日本が6・30両国で終焉して新たな体制の出発だから事実上の旗揚げ戦という形で鍵野アナウンサーとともに実況解説に臨んだわけだ。
 そして放送席にはセミファイナルから渕正信も。去就を明らかにしていなかった渕だが、この日の入場セレモニーで諏訪魔に呼び込まれてリングイン。「私は生涯、全日本プロレスです!」と宣言した。この渕の選択は予定調和のように感じる人も多いかもしれないが、それは違う。今回の分裂騒動が起こった時に「全日本プロレスの看板の重さをわかってない!」とえらい剣幕だったのだ。白石社長と会うことすら拒否してまるで聞く耳を持たなかった。やはり昭和のレスラーは頑固なのだ。ただ、その一方では6・30両国終了後、「やっぱり全日本プロレスはいいよねぇ。出来れば、またここ(解説席)に一緒に座れたらいいなとは思うよ」とも言っていた。和田京平レフェリーは「渕君を連れてくるのは諏訪魔の宿題だよ」と言っていたが、諏訪魔の全日本に懸ける熱意が通じたのだろう。きっとあの大歓声を浴びて、渕自身も王道一筋40年で生きてきてよかったと思ったに違いない。90年代にブッカーとして鶴田軍vs超世代軍、四天王時代を支えた渕の存在は、これからの全日本にとって大きいはずだ。
 さて959人という発表観客動員数が話題になっているようだが、実数発表にこだわっていたのは秋山だ。「団体がふたつに割れたんだから、普通はお客さんの数も半分になると考えるんだろうけど、俺は3分の1になると考えるべきだと思うんですよ。全日本も武藤さんのところ(W-1)も3分の1ずつ。残りの3分1は今回の騒動で嫌気がさして来てくれなくなると。そのくらいの厳しさだと思っていて間違いないですよ。だからこそ、みんなが現実を知らなきゃいけない。今までが1000人だったとしたら300人で当たり前。そこからどうやって増やしていくのかが重要なんですよ。だから会社には実数発表にしてくれって注文をつけました」と試合前に言っていた。昨日はあいにくの天気で、ちょうどお客さんが来る時間帯の4時前から雷雨。それを考えたらよく入っていたと思うし、お客さんの観る目も温かかったと思う。
 そして選手たちは緊張していたが、その緊張感の中でお客さんの気持ちに応えよう必死に、誠意を持って闘っていたと思う。ここでひとつ書いておきたいのは、新生・全日本が目指しているのは“ガチンコ格闘プロレス”ではない。全日本の伝統である“明るく楽しく激しいプロレス”である。原点回帰した上で新しい闘いを構築していく。そして一度失ってしまったファンの信頼を取り戻す。その視点で見れば、メインの諏訪魔vs潮﨑豪の一線を越えたような激闘も頷けると思う。正直、開幕からあんな試合をしていたら最終戦までもたないのではないかと心配になるが、彼らは1日1日、その日に会場に足を運んでくれたお客さんにベストを尽くした試合を提供すること、その積み重ねしか信頼を取り戻せないことを知っているのだ。
 87年春に長州力らジャパン・プロレス勢が大量離脱した時、天龍源一郎と阿修羅・原は「後楽園を満員にするところから始めよう」と猛然と走り始めて、そこから鶴龍時代が生まれた。その天龍が90年春に離脱した時には「鶴龍のプロレスを越えるにはどうしたらいいか!?」と試行錯誤しながら三沢光晴、川田利明、小橋建太らが怪物ジャンボ鶴田に挑むことで超世代軍のブームが生まれ、それは四天王プロレスとして完成形になった。
 昨日の後楽園には、そうした先人たちの気概と同じものが感じられ、どこか懐かしさもあった。
 この新生・全日本プロレス旗揚げ戦は23日(火)22:30~25:30の3時間番組としてGAORAで放送される。実際に自分自身の目で新生・全日本のスタートを判断してほしいと思う。

諏訪魔、充実!

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 昨日はサムライTV『速報!バトル☆メン』に出演。MCは豊本明長さん、そしてゲストは諏訪魔だった。諏訪魔に会うのは5日の全日本新体制発表会見以来だが、その明るい表情からは充実した日々を過ごしているのが見て取れた。
 新体制が固まるまでは様々な雑務、取引先や各方面との交渉、話し合いなど、リング外のことに忙殺されていた感があり、ちょっと心配だったが、それも全日本プロレスを守っていく人間としての勉強だ。
「いろんな人に同じことを聞かれるけど、何度でもちゃんと答えますよ。ちゃんと話してわかってもらうことが大切ですからね」「今まではリングで暴れていただけだけど、会社の実務のこともわかってきました」「秋山さんには両国の後に自分から“今後もバーニングと向き合っていきたい”って言ったんです。でも、まさか入団を決意してくれるとは思いませんでした」「あちこちから人を集めて興行の体裁を繕うことはできますけど、それよりも若い人材を育てていきたいです」「渕さんとは今も話をしています。頑固な人なんで(苦笑)、なかなかウンと言ってくれないですね」「ファンの人が思っていることは俺も一緒なんで、白石社長にはガンガン言ってますよ。そうした中で、とことん話をすればわかってくれる人だと思ったんですよ」
 諏訪魔がイキイキしているのが嬉しかった。武藤・全日本は終わった。これからは残った者、去った者が振り返らずに自分の未来に全力を尽くすしかないのだ。今日10日、武藤派も記者会見を行う。
どちらも頑張れ!

放送席から見た武藤・全日本の集大成

 昨日は両国国技館で2002年10月からの10年8ヵ月続いた武藤・全日本の最後の大会。ノアの後楽園ホールを途中で切り上げて14時前に国技館入りすると、リング上で何やら笑いながら話している諏訪魔、渕、中ノ上。諏訪魔は残り、中ノ上は去る。渕はまだ去就を明らかにしていないが、7月1日以降、この3人がリングサイドに集うことはない。そして残る木原文人リングアナと去る阿部誠リングアナが進行の打ち合わせをしていた。試合前のいつもと変わらない風景…いや、選手とスタッフの誰もが“最後の時間”を大切にしているように感じた。
 武藤の要請で02年2月にアメリカから帰国、全日本に入団して武藤政権発足後は選手としてジュニア・ヘビー級を牽引し、コーチ役として若手を育成したカズ・ハヤシは「2日前に荷物を整理しに道場に行った時には涙が出ましたね(苦笑)。今日は、この11年間の俺の集大成を見せますよ」と言っていた。そう、明日からは道は分かれるとしても、この6月30日には武藤・全日本の全員が「集大成を見せよう!」という気概に溢れていた。
 この大会はCS放送のGAORAで『全日本プロレス ALL JAPAN B-Banquetスペシャル』として7月6日(土)19時~22時30分に放映される。放送される時には事態が動いているわけだから、分裂騒動を前提にしての実況解説でなければ意味はない。だから番組冒頭では今、全日本で何が起こっているかをきちんと伝え、去就がわかっている選手については、なぜ残ることを決意したのか、去ることを決意したのかという気持ちも交えての解説となった。どちらの判断が正しいのかという角度ではなく、どうしてその決断に至ったのか、そして、それを踏まえてこの試合にはどういう意味があり、どういう気持ちで闘っているのかを伝えることを心掛けた。私もアナウンサーの鍵野威史さんも選手の気持ちがしっかりと伝わるように丁寧に喋ることを心掛けたつもりだ。
 泣いていたのは心ならずとも去ることを決断した人たちだった。前説で「ゼンニッポン、ヤーッ!」の観客の掛け声を終えた後に思わず言葉に詰まった阿部リングアナの顔を見た時にはグッとくるものがあった。彼は今後、レスラーの名前をコールすることはあっても「ゼンニッポン」を口にすることはないのだ。第1試合では去る大和ヒロシ、その大和を殴りに来た佐藤光留が泣いていた。宮本和志を交えての3WAYマッチだったが、2人の気持ちを察してか、宮本は試合にほとんど加わらず、2人にやりたいようにやらせていた。昨年夏から今年初めまで「全日本のゆとり世代を鍛え直す!」とターメリックとして上目線で参戦してブーイングを浴びていた宮本だが、彼は2000年6月の分裂騒動直後の唯一の全日本の練習生だった男。試合前に話を聞くと「今日はターメリックじゃなくて、13年前の分裂騒動の時の気持ちに戻っちゃってますね」と苦笑していた。
 シリーズ終盤で「自分は武藤さんに付いていきます」と意思表示した中ノ上は、全日本に残るジョー・ドーリングと組んで6ヵ月ぶりに復帰した太陽ケア&大森と対戦後にケアに声を掛けられると思わず涙。残ることを表明した大森は13年前の分裂騒動の時には三沢光晴に付いていった過去もあるだけに「辞めていく人たちの気持ちもわかりますよ、特に若い人が武藤さんに付いていくっていうのはね」と言っていた。
 私も鍵野さんもこうした場面を目の当たりにして何度か言葉に詰まることもあったが、メインの諏訪魔vs秋山準の三冠ヘビー級選手権は“これからの全日本”を支えていこうという諏訪魔と秋山の気迫がこもった素晴らしい一戦だった。特に秋山の厳しい姿勢は「お前は本当に全日本を背負う覚悟があるのか!?」と諏訪魔に問うているようにも感じた。そんな秋山に真っ向から打ち勝った諏訪魔はやはり武藤・全日本が生んだ“本物”だった。その諏訪魔をカズ、近藤修司、ジョー・ドーリング、中ノ上がラスト・レボリューションとして最後の最後までサポートしたのも心が救われた思いだ。
 それぞれに頑張っていれば、いつかどこかでまた会える。そんな気持ちが伝わってきた武藤・全日本の集大成だった。いつか、この全メンバーが揃った大会の解説をできる日が来ることを祈っている。

Gスピリッツ第28号の総力特集は…伝説の爆弾小僧!

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 6月26日(水)発売のGスピリッツ第28号の特集は“爆弾小僧”ダイナマイト・キッド! 私は1979年7月19日にキッドの日本第1戦の相手を務めた寺西勇、初代タイガーマスク引退後のライバルとなったザ・コブラ、84年11月に新日本から全日本に電撃移籍した時の仕掛け人・大塚直樹氏(当時、ジャパン・プロレス社長)、89年3月にキッドに見込まれてカナダ・カルガリーに武者修行に出てキッドの家に住み込み、末期のカルガリー・マット事情も知る北原光騎に取材することでダイナマイト・キッドのプロレス観、葛藤と苦悩、素顔のトム・ビリントン…爆弾小僧の魅力を様々な角度から探ってみた。とにかく手に取って、じっくりと読んでみてください!

違う道を進むことになったとしても…

 昨日は群馬県のニューサンピア高崎で全日本プロレス『CROSS OVER 2013』開幕戦。分裂が明らかになってから初めての大会、現在のメンバーが全員揃うのは最後になってしまう可能性が高いシリーズの開幕戦だった。
 前日のイベントで6月いっぱいでの離脱を表明したと報道された船木誠勝は「今回のことで選手同士に揉め事はありません。例えるなら武藤さんと内田さん、それと白石オーナーという親が離婚して、その子供にあたる選手たちがどちらかの親を選ばざるを得なくなったってことです。気持ちが途切れると大きな怪我にもつながりますから、とにかく試合に集中しようと。先日の後楽園(6月2日)でKAI選手が何でもない場面で怪我をしてしまったのも、精神的な動揺が原因だと思いますよ。試合前に泣いていたみたいですから…。こういうことが起こるといつも犠牲者になってしまうのはファンの人たちですよね。だから心を痛めているファンの人たちに6月30日の両国までとにかくいい試合を提供するつもりでいます」とキッパリ。
 もうひとり、15日の東スポ誌上で離脱を表明したのは近藤修司。かねてから武藤と行動を共にすることを宣言しているカズ・ハヤシと近藤は諏訪魔をリーダーとするラスト・レボリューションのメンバー。ということは、今シリーズ限りでラスト・レボリューションも分裂してしまうことになるが…。
「別に俺と諏訪魔が喧嘩したわけではないし、諏訪魔は諏訪魔なりに決断して、俺は俺なりの決断をしたということですよ。今回のことで選手それぞれがプロレスについて物凄く考えたと思います。そこでのそれぞれの決断は尊重されるべきでしょ。だから俺もハヤシさんも6・30両国では全力でアジア・タッグを獲りに行くし、最後の最後まで諏訪魔をサポートして、三冠戦でももちろんセコンドに付いて応援しますよ。そこから先は…進む道が違ったとしても、お互いに成長して、お互いに幸せになれればいいと思います。そしてまた再会する時が来るかもしれないし」と近藤。
 諏訪魔も「とにかくリングに集中してお客さんの信頼を得ないといけない。今日は3人で組むけど、そうした時間を大切にしたいし、札幌(6月23日)の近藤戦も大切な試合ですよ。そして両国…俺は、決めたからにはリングに集中していきますから」と決意を語ってくれた。
 大会はとてもいいムードだった。試合前にはプロモーターの関係で来場した武藤敬司が挨拶、負傷欠場中のKAIもリングに立った。休憩時間前にはアドバイザーの蝶野正洋も挨拶。いつもと変わらないアットホームな全日本の風景がそこにはあったし、選手たちもリング外の話題を吹っ飛ばそうと、熱い試合を繰り広げた。メインの諏訪魔&カズ&近藤のトリオも普段と変わらず息を合わせて秋山準&鈴木鼓太郎&青木篤志を撃破。試合後の3人の笑顔は、とてもこの先に別れがあるとは思えないものだった。
「今、全日本プロレス、騒がしいですが、俺ひとりでも守ります。絶対にこの看板は潰しません」とマイクを手にオラオラ調ではなく、丁寧に観客に語りかけた諏訪魔。その時、カズと近藤は一足先にリングを降りていたが、それは彼らなりの諏訪魔に対する気配りだったように思う。
 違う道を進むことになったとしても…その直前まで選手はリングに集中して、大会を盛り上げていく。その心意気をぜひ観に行って確かめてほしい。

28日ぶりの小橋建太

 6月13日の『三沢光晴メモリアルナイト』にはテレビ解説として小橋建太も来場した。小橋と会うのは5月16日にニコニコプロレスチャンネルの生インタビュー以来。8日に京都で『オフィシャル・ライブツアー2013―感謝―』がスタートして相変わらず休む間もなく活動している。
 引退3日後にはトレーニングを始めてしまった小橋だが「いやあ、今は時間がなくて練習できないんですよ」と苦笑。秋山から話を聞いているようで全日本の分裂騒動については顔を曇らせていたが、自身は“第2の青春”に向かって充実した日々を過ごしているようだ。ライブツアーは7月20日の大阪まで続き、今日15日は岡山だ。以後、21日=東京、22日=札幌、7月に入って6日=新潟、7日=仙台、14日=福岡、そして千秋楽の20日=大阪というスケジュールになっている。イベントは3部構成になっていて1部=来場者の質問コーナーもあるトークライブ、2部=その日の来場者が選んだベストバウトを小橋の生解説付きで観賞、3部=名刺交換&握手&ツーショット撮影会。くわしくはFortune KKのサイトを見ていただきたい。
 このところ心が痛む話題も多いが…そんな時はプロレスの伝道師となった小橋に触れてみよう!

肩を上げ続けるということ

 昨日は後楽園ホールで『三沢光晴メモリアルナイト』。事故から4年…6月13日は「プロレスとは何か?」を改めて考えさせられる日でもある。三沢は「よく受け身が巧いって言われるけどさあ、ダメージはあるからね。少なくとも観ているあなたたちが思っているより痛いんだよってことを少しでも分かってほしい時もあるよね」と冗談めかして言っていたものだが、あの悲しいアクシデントは「プロレスという仕事は命懸けなんだよ」「一歩間違えたら死ぬんだよ」という現実を我々に突きつけた。
 そしてレスラーの意識も変えたと思う。「リングで死ねたら本望だ」という言葉を以前はよく聞いた。もちろん、口に出さないだけで今もそういう覚悟を持ってリングに上がっているレスラーがほとんどだと思う。だが、そう覚悟する反面で「生きてリングを降りなきゃいけないんだ!」という意識が強烈に芽生えたはずだ。小橋建太は小橋建太であり続けることももちろんだが、プロレス界に迷惑にならないように、ちゃんとリングを降りるために引退を決意したのだ。
 この4年間、ノアは時に難破しそうになりながらもがいてきた。突然、舵取りを失ったことで、まず会社の体制を巡って揉めた。リストラされた選手もいた。スキャンダルもあった。昨年をもって主力5選手が辞めた。正直、負のオーラが充満していたが、ここに来て明るい太陽が降り注ぎ始めている。昨日の大会にしても第1試合から本当にいいムードで、お客さんはノアのプロレスを楽しんでいた。4年経って、ようやく新たなスタートラインに立ったような気がする。
 スタートラインに立てたのは、みんなが歩みを止めず、諦めずに頑張ってきたからだ。KENTAvsヨネ、杉浦vs丸藤は素晴らしい試合だった。ノアに新風景をもたらすために頑張ってきたKENTAとリング外では副社長としても腐心してきた丸藤が7・7有明コロシアムで頂点のGHCヘビー級戦として激突するところまで来たことは、4年間の紆余曲折を考えると感慨深いものがある。
 まだ全日本時代のこと。日本武道館の試合後、三沢が控室の床に大の字になっていた。そして天井を剥いたままこう言った。「何でギリギリまで闘うかって言ったらさ、肩を上げられるのに上げなかったら、あとで自分に後悔すると思うんだよね。そりゃあ“このまま3カウントを聞いた方が楽かな?”って思う時もあるけど、もしそこで肩を上げなかったら“本当は返せていたよな”って自分が嫌な気持ちになるじゃん。だから、返せる限りは、俺は肩を上げるよ」。
 この三沢の精神はノアに息づいている。諦めなかったからこそ、肩を上げ続けてきたからこそ、ここまで来られた。肩を上げ続ける先には、きっと明るい未来がある。

諏訪魔の決断、そして秋山は…

 昨日6月11日は予想外に忙しい1日だった。6月26日(水)発売予定のGスピリッツ第28号の原稿の締切日だったのだが、午前11時30分から全日本プロレス事務所で白石伸生新社長、諏訪魔の記者会見の取材。自宅に戻って原稿を仕上げてから夜はサムライTV『速報!バトル☆メン2000万パワーズ』に出演。ゲストが6・30両国で諏訪魔の三冠王座に挑戦する秋山準だったのだ。このタイミングで秋山がゲストとは、番組的にはオイシイ巡り合わせだったと思うが…。
 両国につながる6月ツアー『CROSS OVER2013』は6月16日の高崎で開幕する。その直前での会見は…もはや現状では仕方がないことだった。5月31日付で武藤敬司が会長の辞任届を提出、内田雅之社長が更迭されて白石オーナーが新社長に就任。白石新社長と武藤派の間で株の返還についての交渉がある一方、武藤が新団体旗揚げを示唆…と、この10日間は様々な情報が飛び交った。当然、選手たちには「あいつはどっち派か?」という好奇の視線が浴びせられる。先シリーズ最終戦の6・2後楽園を前にしての新体制発表について、私はダイアリーの中で、選手やファンへの配慮のないことに苦言を述べさせてもらったが、今回ばかりはシリーズが予定通りに行われることを示す意味でも記者会見をせざるを得なかったと思う。会見前日には7月の『サマー・アクション・シリーズ』の日程も発表された。ただし、当初は『ハイパー・ジュニアリーグ』だったはずなのが名称変更されたということは、選手離脱を想定してのことであることは否定できない。やはり予断を許さない状況なのだ。
 さて、白石新社長の会見だが、6・2後楽園のリング上の挨拶もそうだったが謝罪と反省を口にして、これまでとは随分と違う印象を受けた。これまで白石氏はプロレス村の悪しき習慣云々という発言を繰り返してきたが、どんな業界や社会にも、その世界特有のルールと秩序はあるはずだ。今になって白石氏はそれを実感してきているのではないかという印象を受けた。とはいえ、その言動によって今回の混乱を招いた責任は大きい。武藤&内田の旧経営陣が「この人にはやっぱり任せられない!」と判断したことから分裂騒動はスタートしているのである。今回の騒動で傷ついたのは、本来だったら分かれる必要などなかったのに、否応なしに選択を迫られる選手たち、そしてファンなのだ。
 もちろん、その経緯はどうあれ、譲渡した武藤&内田の旧経営陣も自分たちの落ち度を認めて反省しなければならない。分裂は避けられない状況になってしまった以上は、白石新社長は全日本プロレスというプロレス界の財産を建て直すのが責任の取り方だし、武藤派にはプロレス界を活性化させるようなアクションを起こしてくれることを祈るばかりである。
 そうした中で、最初に自分の選択を明確にしたのが三冠王者の諏訪魔だった。昨日の会見の様子はニコニコプロレスチャンネルでも観ることができるので、ご覧になればわかっていただけると思うが、これほど緊張した諏訪魔は見たことがない。武藤について語る時には目に涙が滲んでいた。馬場さんはおろか、鶴龍時代も四天王時代も知らない生粋の武藤・全日本生まれの諏訪魔だが、子供の頃から全日本のファンだった。中学時代に柔道を始めたのも「全日本でプロレスラーになるなら受け身だろう」というのが動機だったと聞いている。プロになってからは巡業バスのビデオで70年代からの全日本の歴史を勉強した。諏訪魔は自分がいなかった馬場時代から現在の全日本までの流れすべて背負う気概を持っている。そんな諏訪魔だから、今回の決断は当然といえば当然のようにも思える。ただし残留を決意したからには、今後、白石新社長との闘いもあるだろう。これも全日本を守る意味で大きなポイントになる。諏訪魔が選択したのは白石新社長ではなく全日本プロレスなのだ。その意味で武藤の「廃業する気か?」は言い得て妙。すべてをひっくるめての武藤ならではの表現であろう。
 私は今回の諏訪魔の決断をファンの人に非難してほしくないと思っている。いや、諏訪魔だけでなく、選手たちのそれぞれの選択、決断を非難してほしくない。会見後、諏訪魔と少し喋ったが「誰がどういう道を選んだとしても、俺はそれについてわだかまりはないです」と言っていた。それこそ武藤が言うように「今度、会う時はお互いに笑って会えるように」だ。たとえ離れ離れになったとしても、再び相まみえることがあるのは歴史が証明している。
 そして夜のサムライTVでの秋山。秋山及びバーニングの場合はフリーなので所属選手とは立場も契約の形も違う。秋山はフリーになった時に声をかけてくれた武藤&内田に感謝している一方で白石氏と接点があることも隠さない。むしろ所属選手ではないから白石新社長に遠慮なく物言いができるという面も感じられる。
 今現在、秋山が最優先で考えているのは、とにかく16日からスタートするシリーズ&両国をどう盛り上げるかということ。6・23札幌ではSMOP相手に潮﨑との世界タッグ防衛戦があるし、両国は諏訪魔の三冠に挑戦する大一番だ。今の秋山からは「リング外の話題じゃなくてリング上で、試合でファンの目を集中させたい!」というプロレスラーとしての純粋な気持ち。身の振り方を決めるのは両国以降。バーニングはその都度の契約で、6月30日で当面の契約は切れるのだ。「俺らはフリーなんで、オファーがなかったら上がるリングはないんですよ」と笑っていた秋山だが、武藤&内田への恩義か、巡り巡って戻った故郷・全日本への愛着か? 現在、バーニングは世界タッグ、世界ジュニア(金丸)、アジア・タッグ(鼓太郎&青木)と全日本のベルトを保持していることも見逃せない要素。これでもし両国で秋山が三冠を獲ったら…。
 繰り返しになるが…誰がどちらに付こうが、どういう選択をしようが、私はそれを支持したいと思っている。私はこれまで様々な分裂&離脱劇を渦中で取材してきたが、ファン同士、選手同士のいがみ合い、中傷合戦はこりごりなのだ。

あえてゼロ年代!

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 6月3日(月)に徳間書店から週刊アサヒ芸能増刊として発売された『ゼロ年代平成プロレス100大名勝負』。私は名勝負100のセレクト、巻頭の『至高のベストバウト10』の全10試合の執筆、『バトルコラム』全5本の執筆、そして巻末の三田佐代子さんとの対談という形で関わった。
 この数年、昭和のプロレスが注目され、私自身が主戦場としている『Gスピリッツ』も昭和のプロレスがメインになっているが、この本にはアントニオ猪木もジャイアント馬場も登場しない。ゼロ年代…つまり2000年以降に絞った名勝負集なのだ。日本プロレス界は99年1・4東京ドームにおける橋本真也vs小川直也で新日本最強伝説が崩壊したところから暗い闇に突入する。ゼロ年代半ばまでは混迷の時代だった。だが、暗い闇のなかで懸命にもがいたからこそ今の時代があるし、当時を振り返ってみると、結構、興味深い戦いが実現している。その当時の希望の光が今、新たな時代を照らそうとしているのである。そうした想いでページをめくってもらえたら幸いだ。私自身が育った昭和のプロレスは素晴らしかった。でも平成の、それもゼロ年代のプロレスも面白い!