肩を上げ続けるということ

 昨日は後楽園ホールで『三沢光晴メモリアルナイト』。事故から4年…6月13日は「プロレスとは何か?」を改めて考えさせられる日でもある。三沢は「よく受け身が巧いって言われるけどさあ、ダメージはあるからね。少なくとも観ているあなたたちが思っているより痛いんだよってことを少しでも分かってほしい時もあるよね」と冗談めかして言っていたものだが、あの悲しいアクシデントは「プロレスという仕事は命懸けなんだよ」「一歩間違えたら死ぬんだよ」という現実を我々に突きつけた。
 そしてレスラーの意識も変えたと思う。「リングで死ねたら本望だ」という言葉を以前はよく聞いた。もちろん、口に出さないだけで今もそういう覚悟を持ってリングに上がっているレスラーがほとんどだと思う。だが、そう覚悟する反面で「生きてリングを降りなきゃいけないんだ!」という意識が強烈に芽生えたはずだ。小橋建太は小橋建太であり続けることももちろんだが、プロレス界に迷惑にならないように、ちゃんとリングを降りるために引退を決意したのだ。
 この4年間、ノアは時に難破しそうになりながらもがいてきた。突然、舵取りを失ったことで、まず会社の体制を巡って揉めた。リストラされた選手もいた。スキャンダルもあった。昨年をもって主力5選手が辞めた。正直、負のオーラが充満していたが、ここに来て明るい太陽が降り注ぎ始めている。昨日の大会にしても第1試合から本当にいいムードで、お客さんはノアのプロレスを楽しんでいた。4年経って、ようやく新たなスタートラインに立ったような気がする。
 スタートラインに立てたのは、みんなが歩みを止めず、諦めずに頑張ってきたからだ。KENTAvsヨネ、杉浦vs丸藤は素晴らしい試合だった。ノアに新風景をもたらすために頑張ってきたKENTAとリング外では副社長としても腐心してきた丸藤が7・7有明コロシアムで頂点のGHCヘビー級戦として激突するところまで来たことは、4年間の紆余曲折を考えると感慨深いものがある。
 まだ全日本時代のこと。日本武道館の試合後、三沢が控室の床に大の字になっていた。そして天井を剥いたままこう言った。「何でギリギリまで闘うかって言ったらさ、肩を上げられるのに上げなかったら、あとで自分に後悔すると思うんだよね。そりゃあ“このまま3カウントを聞いた方が楽かな?”って思う時もあるけど、もしそこで肩を上げなかったら“本当は返せていたよな”って自分が嫌な気持ちになるじゃん。だから、返せる限りは、俺は肩を上げるよ」。
 この三沢の精神はノアに息づいている。諦めなかったからこそ、肩を上げ続けてきたからこそ、ここまで来られた。肩を上げ続ける先には、きっと明るい未来がある。

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