全日本プロレスの真剣勝負

 全日本プロレスの株を100%取得し、新オーナーとなった㈱スピードパートナー社の白石伸生社長の言動及びFacebook上での発言が大きな波紋を呼んでいる。新日本プロレスを演劇プロレスと斬って、ガチンコセメントプロレスを推進していくことを主張、それができないKENSOの解雇を示唆し、さらに総合格闘技進出、鎖国…などなど、今やその主張に対して選手、関係者、ファンは喧々囂々となっている。
 全日本の武藤会長、内田社長、選手たちは「リングの上は選手のもの、ファンのものであり、変えさせない!」と一斉に白石路線に真っ向からNOを突きつけ、全日本はオーナーvsその他の人間というおかしな図式になってしまった。そして昨日の両国大会の全試合終了後、白石オーナーが遂にリングに上がって挨拶した。私はGAORA中継の解説者としてリングサイドの放送席にいたが、観客の凄まじい怒号で白石オーナーが何を言っているかは聞き取れなかった。目の前で展開されたのは、オーナー批判を繰り返していたKENSOがリングに駆け上がって白石オーナーと対峙して「ガチンコプロレス、やってやろうじゃないか!」らしき言葉を叫び、何と白石オーナーがKENSOに張り手。さすがにKENSOが手を上げることはなかったが、佐藤光留が突進して、あわや白石オーナーはリングから転落するところだった。その後、花道に引き戻された光留は人目もはばからず、ずっと号泣していた。
 プロレスは誰のものか?「全日本プロレスのスポンサーはお客さん」というのは全日本の創始者ジャイアント馬場の言葉。オーナーがどんな理想を持っていようとも、お客さんが付いて来なければ、経営者として方針を変えるのは当然のことである。正直、今の全日本プロレスの状況を考えるとオーナーと五分に闘えるのは選手ではなくファンなのだ。その意味では、昨日のファンの反応を白石オーナーは真摯に受け止めてほしいと思う。
 ただ、譲渡した武藤会長、内田社長、そして対価としてのファイトマネーをもらう選手たちはファンに甘えてはいけない。経営サイドの人間は結果を出すこと(興行収益を上げること)で、今の路線が正しいということを白石オーナーに証明しなければならないし、選手たちは自分たちのプロレスで白石オーナーに「プロレスはこんなに素晴らしいものだったのか!」と言わせなければならない。ファンの気持ちを第一にしつつ、自分たち自身で闘わなければいけないのだ。昨日、最後に白石オーナーに突進したのは全日本所属ではなくフリーの光留。その行動の良し悪しは別問題として、光留は全日本で仕事ができなくなるリスクを越えて義憤に駆られてリングに飛び込んだ。その一本気な心はファンに伝わったはずだ。
 昨日、新三冠王者になった諏訪魔は「もう俺らレスラーは、リングの上で結果を出して認めさせるしかないよね。俺の目指すプロレス、強いプロレスでリング上を通して納得させる。総合どうこうはいらないし、そこはリング上でどういう風に納得させるか。そことの闘いだと思う」と言った。KENSOは白石オーナーに向かって「ガチンコプロレスをやってやる!」と言ったが、それはKENSOが考えるKENSO流のガチンコプロレス。「リングの上でお客さんの目を見て、自分のメッセージを伝える」プロレスだろう。
 プロレスは誰のもの? プロレスとは何? これは全日本プロレスの真剣勝負。闘わなければ答えは見えない。

「全日本プロレスの真剣勝負」への1件のフィードバック

  1. 同じ発言を、今のプロレス界に対して前田日明が言ったとしたら・・・と考えると、白石氏の言っていることはあながち検討外れでもないと僕は思うんです。
    しかし、白石氏は空気が読めないというか、自分の立場をわかっていないというか、従来のプロレスファンからすると「お前が言うな!」という感じで、彼の言葉を受け付けたくなくなるんですよね。
    とりあえずは、ガチとかセメントとかいった隠語を、オフィシャルの場で使うことはあらためられたほうが良いと思います。それだけで、白石氏の印象は変わるのではないでしょうか。

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