この屈辱と怒りがバネに!

 昨日のレジェンド・ザ・プロレスリングで坂口征夫は難しいポジションに置かれていた。征夫は高校卒業後にプロレスラーを目指すも挫折し、総合格闘家の道に進むなど回り回って去年の7月、39歳の誕生日を目前に控えてDDTでプロレス・デビューした。つまり新人レスラーである。にもかかわらず昨日のメインに据えられたのは坂口征二の長男だからだ。レジェンドというイベントで坂口二世というのはまさにブランドであり、売りになる。かくしてメインで長州力&藤波辰爾の2大レジェンドと組んで蝶野正洋&天山広吉&獣神ライガーという破格のカードが用意された。入場はテーマ曲に乗ってひとりずつだったが、征夫は何と他の5人を差し置いてトリで入場。プロの興行としては一番の売り物は征夫だから、当然の演出だが、これはある意味では残酷でもある。試合の中身が伴わなければ、まさに客寄せパンダで終わってしまうのだ。
 レジェンドたちのプロレスは「お互いに持ち味を発揮しましょう」ではなく、相手を支配して「どうだ!」と力関係をわからせるスタイル。だから興行的には主役の征夫でも相手チームには立ててやろうという気持ちはないし、長州と藤波も必要以上には助けてはくれない。長州がコーナーから発していたのは「征夫、下向くな!」というプロの表現者としてのアドバイスだけ。闘いの部分は本人に任せていた。
 私の目から見た征夫は、いつもは綺麗に決まるドロップキックが不完全だったのは残念だったが、天山に鋭いミドルキック、ライガーに飛びつき十字、蝶野の厳しいSTFに耐えて下から三角絞めと今持っている自分の持ち味を出すことは出来たと思う。ただプロレス特有の6人タッグで3人掛かりで回されると対処できないし、総合とは間合いが違うからスムーズに闘えない。さらに受けるのか、防御するのか…ところどころで躊躇があったようにも感じた。
 恐らく本人は他の5人のリズムに乗り切れない孤独感、そして屈辱感を味わっただろう。試合後に蝶野に「お前には時間がないんだ」、ライガーには「今度はシングルで潰す!」と挑発され、向かって行こうとしたものの長州に「(リングから)降りろ!」と制止され、試合後のコメントも長州、藤波が言葉を挟む形で感情を剥き出しにすることはできなかったのだ。
 また試合後の蝶野とライガーの言葉はリング上以上に辛辣だった。子供の頃から征夫を知っている蝶野とライガーは、征夫がここにくるまでの紆余曲折を知っているだろうし、今回、彼がメインに据えられた事情も知っているだろうが「厳しさを自分で知るしかない。駄目なら駄目で諦めるしかない。邪魔になるなら2世レスラーはいらない」(蝶野)、「総合やってきたからってプロレスのリングに立って“はい、メイン!”って通じるのか? 何も出来てねぇ。坂口って名前を名乗るなよ。一からやれよ、一から。征夫なんて次、このリングで潰してやりますよ」(ライガー)とほとんど全否定するようなコメントを残している。これは征夫に発奮を促すものか!? 現実問題として3人の立場がそれぞれに違うだけに蝶野、ライガーと征夫が再び相まみえる機会があるのかどうかはわからないが…昨日の試合はプロレスラー、坂口征夫にとってバネになるに違いない。この屈辱と怒りを忘れるな!

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