タナと真輔の時代

 昨日は新日本の東京ドーム大会。まず毎回、話題になるのは観客動員数だ。前売りチケット数が2012年大会を上回っているとのことで、実際にスタンド席から見渡しても明らかに前年を上回っていたが、発表は43000人から1万4000人減の29000人。菅林社長の説明によると昨年まではスポンサーへの招待券、会場に来てくれる来てくれないにかかわらず手売りしたチケット数も含めた数字だったが、今回は有料入場者の実数を発表したためだという。肝心なのは表面上の数字よりも、実際にどれだけ多くのファンが足を運んでくれて、どれだけの人が満足して帰路についたかということ。こうして敢えて少ない数字を発表したことについては、今後への自信でもあるだろうし、いつかバックスクリーンギリギリまでスタンド席が満杯になった時代を再現してやろうという前向きな意気込みを感じる。
 さて大会の中身は、近年の中でも濃密だったと思う。ここ何年間かは様々なスタイルのプロレスが観られるバラエティー大会という印象が強く、それはそれでお祭りとして楽しめたし、プロレス・ビギナーの入口として良かったと思うが、今年はちょっと趣が違った。それは時代を賭けた世代闘争の棚橋弘至vsオカダ・カズチカのIWGP戦、総合格闘技の匂いをも漂わせた中邑真輔vs桜庭和志のインターコンチ戦がダブル・メインイベントに据えられたからだ。
「棚橋、中邑で今を創ってきた自負があるから…」とは試合後の棚橋の言葉。確かに昨日の東京ドームは“新時代到来!”と言うよりも、ユークスの子会社となり、選手が次々に離脱するなどの混迷を極めた05年暮れからの新日本を引っ張ってきたのは棚橋&中邑という当時の若い力であり、そこから今日の時代が生まれたことを証明したような大会だったと思う。
 まず中邑vs桜庭が素晴らしいプロレスだった。序盤のグラウンドの攻防に「プロレスをやってくれ!」という声も飛んでいたが、これこそベーシックなプロレス。武藤敬司&大谷晋二郎vsテンコジのスタートでの小島を支配しようという武藤のグラウンドの攻めもそうだが、中邑vs桜庭の攻防の中にはプロレスの原点があったし、新日本の原点でもあるアントニオ猪木のストロングスタイルの香りがあった。桜庭のサクラバロックもプロレス的には基本技のダブルリストロックと同じ。昔は逆腕固めとして若手の試合の極め技でもあったのだ。緊張感がありながら違和感がない試合になったのは中邑にも桜庭にプロレスvs総合格闘技という意識がなかったからだろう。新日本に参戦して以来の桜庭は、どこかプロレスとちゃんと向き合っていないような感じもあったが、昨日は本当に素晴らしかった。桜庭は大晦日の『DREAM&グローリー』で総合復帰を示唆する発言をしていたが、両立も可能だろうし、できればプロレスに没頭する姿を見てみたい。
 そしてトリの棚橋vsオカダ。中邑vs桜庭の緊張感溢れる攻防の直後だけに、序盤から中盤にかけてのオカダの首攻めvs棚橋の足攻めの攻防は理に適っているものの、まったりと見えてしまったのは割りを食ってしまったように感じられた。しかし終盤に向けての両者のファイトは鬼気迫るものがあった。30分過ぎのオカダのドロップキックは“本物”だったし、レインメーカーを封じ込めた棚橋も見事だった。最後は大舞台を数多く経験している棚橋の“ここ一番での強さ”が勝敗を分けたのではないか。
「オカダは時代を変えると言ったけど、時代は変えるものではなく動かしていくもの。プロレスはひとりじゃ出来ないし、今日だったら俺とオカダで動かしていく。そういう意味のある試合になりました」という棚橋のコメントには、新日本のエースにふさわしい重さがあった。
 棚橋弘至が全国のファンと愛を紡ぐ新日本のエースなら、ギラギラした刃を持つ中邑真輔は新日本の強さの象徴。今、本当の意味でタナと真輔の時代が確立されたと言っていいかもしれない。

「タナと真輔の時代」への1件のフィードバック

  1. 桜庭が新日本vsUインターの対抗戦のとき高い評価を得ていたのをふと思い出しました。
    Uスタイルは貫くけども新日本の若手たちとスイングした試合を連発してましたよね。
    ここ十数年は総合格闘技で試合をしてきましたけども元々適応力が豊な選手ではあるんですよね。
    あれからだいぶ経ちましたがその片鱗を垣間見た気がします。
    面白い試合でした。
    棚橋vsオカダの序盤の攻防、私は楽しみましたよ。
    当日放送は枠の関係でハイライトになりその部分がカッとされてましたね。
    あの攻防があってこそ後半の目まぐるしい攻防が活きるのにちょっと残念でした。
    長い尺での放送、完全版でもう一度見たいです。
    何にせよ文句なしの名勝負だったと思います。
    非常に満足できた大会でした。
    有料入場者数での観客発表はシビアだなぁと思いました。
    今後のためなんでしょうけども。
    あと木谷さんのオーナー辞任のニュースも驚きました。
    まだまだこれくらいの成功では満足しないという表れなのかもしれませんね。

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