2012年度プロレス大賞選考会議

 東京スポーツ新聞社制定『2010年度プロレス大賞』選考会議は選考委員長=柴田惣一(東京スポーツ運動部選考委員)、特別選考委員=嶋田隆司(キン肉マン作者)、選考委員=大沢裕治(東京スポーツ運動部長)、平塚雅人(東京スポーツ運動部次長)、楠崎弘樹(東京スポーツ運動部部長)、水沼一夫(東京スポーツ運動部)、小坂健一郎(東京スポーツ運動部)、大島啓(東京スポーツ運動部)、岡本佑介(東京スポーツ運動部)、細島啓輔(東京スポーツ写真部次長)、秋山直毅(東京スポーツ写真部主任)、前田利宏(東京スポーツ写真部)、奥村展也(サンケイスポーツ新聞社)、仁木弘一(スポーツニッポン新聞社)、藤澤浩之(デイリースポーツ新聞社)、大西洋和(東京中日スポーツ新聞社)、小谷野俊哉(日刊スポーツ新聞社)、佐藤正行(週刊プロレス編集長)、門馬忠雄(プロレス評論家)、小佐野景浩(プロレスライター)、三田佐代子(サムライTVキャスター)の計21名で行われた(※敬称略)。
【最優秀選手賞(MVP)】オカダ・カズチカ
 MVPには初受賞となったオカダの他、昨年受賞者の棚橋弘至、森嶋猛の3人がノミネートされた。約2年の海外修行を経て1・4東京ドームに“レインメーカー”として凱旋帰国したオカダは、最初こそファンの大ブーイングを浴びたが、2・12大阪で棚橋を撃破して初挑戦、25歳の若さでIWGP王者になってプロレス界を活性化させ、新しい時代の空気を作ったことがまず大きかった。その後の防衛戦の内容もよく、6・16大阪で棚橋に王座奪回されるも、失速することなくG1に優勝、IWGP挑戦権利書をかけた試合など、通年の活躍が評価された。投票の結果はオカダ=16、棚橋=2、森嶋=3でオカダに。
 私自身は最後まで棚橋かオカダかで迷った。今年の新日本人気はオカダだけによるものではなく、パッケージとしての充実ぶりが大きかったと感じている。その新日本の顔は紛れもなく棚橋であり、棚橋が安定していればこそという思いがあったからだ。だが、最終的に投票したのはオカダ。やはり年初めのオカダの大仕事がなれば、新日本人気、プロレス界復活の気運は盛り上がらなかったと思う。IWGP&G1制覇の実績はやはりMVPにふさわしいものだろう。25歳でのMVPは82年度MVPのタイガーマスク(佐山聡)以来の快挙である。
【年間最高試合賞(ベストバウト】オカダ・カズチカvs棚橋弘至(IWGPヘビー級選手権=6月16日、大阪・ボディメーカーコロシアム)
 これは毎年揉める賞。多種多様なスタイルの試合があるし、年間最高試合の解釈によっても違ってくる。最終的には選考委員の個人的な好みも反映されるからだ。私は2・12大阪の棚橋vsオカダをノミネートした。純粋に見た場合には、棚橋が奪回した6・16大阪の方が上だと思っているが、年間最高試合=その年を振り返った時の代表試合として考えるならば、オカダがIWGPを奪取したあの試合こそが、今年のマット界の流れを左右した試合だと思ったからだ。もうひとつ、投票とは別にノミネートだけさせてもらったのは8・26大田区における秋山準vs船木誠勝の三冠戦。4分37秒決着は三冠史上最短。そのわずかな時間でファンを納得させる緊張感ある試合、濃密な試合はこの2人にしかできないものだと思う。その他、各選考委員に「ノミネートだけはしておきたい!」という思い入れの試合があるから、実に多くの試合がリストアップされた。
 投票数と共に列記すると棚橋vs鈴木みのる(IWGP戦=10・8両国)=1、棚橋vsオカダ(IWGP戦=2・12大阪)=1、飯伏幸太vsケニー・オメガ(KO-D無差別級戦=8・18日本武道館)=3、中邑真輔&オカダvs諏訪魔&近藤修司(7・1両国)=2、太陽ケアvs諏訪魔(カーニバル決勝=5・7後楽園=1、オカダvs棚橋(IWGP戦=6・16大阪)=6、大仁田厚vs曙(ノーロープ有刺鉄線バリケードマット・ダブルヘル・メガトン電流爆破デスマッチ=8・26横浜)=5、桜木裕司vs菊田早苗(10・27ディファ有明)=1、秋山vs船木(三冠戦=8・26大田区)=0、葛西純vsMASADA(デスマッチ・トーナメント決勝=8・27後楽園)=0、田中将斗vs石井智宏(初代NEVER無差別級王座決定トーナメント準決勝=11・19渋谷)=0、KENTAvs杉浦貴(グローバル・リーグ戦決勝=11・23後楽園)=0、ケインvsダニエル・ブライアン(8・9両国)=0、桜庭和志&柴田勝頼vs澤田敦士&鈴川真一(11年12・31さいたまスーパーアリーナ)=0。0票はノミネートのみの試合だ。
 最終的にオカダvs棚橋(6・16大阪)、大仁田vs曙、飯伏vsケニーの上位3試合の決選投票に。オカダvs棚橋は今年の新日本を代表するタイトルマッチ、大仁田vs曙は一般マスコミにも注目された。そして飯伏vsケニーの極限の試合は、以前ダイアリーでも書いたが、スタイルは違ってもかつての四天王プロレスを思い出せてくれるものだった。
 そして私が投票したのはオカダvs棚橋。私がノミネートした2・12大阪は私の1票のみの結果に終わったが、いずれにしても2012年を代表するのはこの2人の試合だというのが私の考えだ。結果はオカダvs棚橋=12、飯伏vsケニー=8、大仁田vs曙=1でオカダvs棚橋に。この決選投票に入る前に飯伏vsケニーについては賛否両論が飛び交った。ただし否の意見にしても、誰もが凄さを認めた上でのものだったことを記しておきたいた。私はオカダvs棚橋と比較しての否の立場だったが、試合後に「こういう激しい試合はもういいかな。違った形でもっと凄い試合をやります」と言ってスタイルを変えてきている飯伏に好感を持っている。
【最優秀タッグチーム賞】GET WILD(大森隆男&征矢学)
 その他にノミネートされたのは新日本に喧嘩を売った桜庭和志&柴田勝頼、生まれながらのタッグチームにして、ハチャメチャながらコンビとしての力量を高く評価されているバラモン兄弟の2チーム。さらにドラゴンゲートで思わぬ大人気となってこの1年を大いに盛り上げたジミーズ(ジミー・ススム、ジミー・カゲトラ、ジミー神田、堀口元気H.A.Gee.Mee!!、斎藤ジミー了、Mr.キューキュー・豊中ドルフィン)だった。該当なしの厳しい声もあるなかでGET WILD=8、桜庭&柴田=4、バラモン兄弟=3、ジミーズ=6となり、GET WILDとジミーズの決選投票に。
 GAORAの全日本プロレス中継解説者の私としては、心情的には当然GET WILDなのだが、ここはジミーズに投票。GET WILDはキャラクターを練り上げているし、面白会見で話題を提供するなどコンビとしての取り組みは素晴らしいが、試合にムラがあるのが難点。彼らが最優秀タッグチームになるには、もう一歩というのが私の考えだった。ジミーズはタッグチームではなくユニットだが、ススム&カゲトラはツインゲート統一タッグ王者だったし、ZERO1でもNWAライトタッグ王者になった。そして現在は堀口&斎了&キューキューがトライアングル・ゲート王座を持っている。ブードゥー・マーダーズが06年にユニットとして同賞を受賞した前例があり、問題はないという判断だ。今年はあまりドラゲーの会場に足を運べなかったが、いくたびに楽しみだったのがジミーズ。仕事ができる男たちが揃っているから、きっかけ次第でブレイクするのは当然…とは言っても、罰ゲームのような形からスタートしてブレイクしたのだから凄い。そこを評価させてもらった。
 結果はGET WILD=13、ジミーズ=8でGET WILDが受賞。もちろんこれに文句はない。これからタッグチームとして完成していってくれることを期待している。大森&征矢、2013年もワイルドに行こうぜ!
【殊勲賞】森嶋猛
 MVPでは票が伸びなかったが、殊勲賞部門では1回の投票で決まった。1・22大阪でGHC王者になってから、小橋建太も杉浦貴もKENTAがいない時も「やる気、元気!」で明るいムードを作ってハイテンションで突っ走り、年間最多防衛記録のV8も達成した。その頑張りを選考委員の誰もが評価した形だ。もちろん私は森嶋に投票した。ノミネート&投票の結果は以下の通り。
 森嶋猛=13、船木誠勝=3、アブドーラ・小林=3、KENTA=1、高木三四郎=1(今やメジャーもできない日本武道館大会を成功させた手腕が評価の対象に)。
【敢闘賞】アブドーラ・小林
 ノミネート&1回目の投票は小林=9、CIMA=6、柴田勝頼=1、後藤洋央紀=2 大仁田厚=3。よって小林とCIMAの一騎打ちになった。プロレス大賞を目標にデスマッチというひとつのジャンルを引っ張り、愛を叫んでファンをハッピーな気持ちにさせてデスマッチ王座V7の新記録を作った小林か、ドリームゲート王者として愛知県体育館、神戸ワールド記念ホール、大阪ボディメーカーコロシアムといった大会場で常に満員の観客を沸かせてきたCIMAの決選投票だったが、結果は小林=14、CIMA=7。私は悩んだ末、アブ小に1票を投じた。
【技能賞】中邑真輔
 この賞も白熱した。CIMA=6、中邑真輔=8、矢野通=1、アントーニオ本多=1、船木誠勝=5となり。CIMA、中邑、船木の3人で2回目の投票。CIMA=6、中邑=9、船木=6と誰も過半数にならず伯仲。私は船木押し。それはベストバウトにノミネートだけさせてもらった秋山戦もそうだし、27分11秒の長期戦になった横浜での諏訪魔相手の三冠初防衛戦も“船木にしかできない試合”だと評価していたから。諏訪魔戦は、秋山戦とは打って変わって長期戦を組み立て、あの諏訪魔の破壊的な攻撃を真正面から受け止めたことを評価したのである。それは、誰にでもできることではないと思うのだ。
 議論の末の投票も上記のまま変わらず、最終的には1回目の投票を尊重してCIMAと中邑の決選投票になり、CIMA=9、中邑=12で中邑に凱歌が上がった。決選投票では中邑に入れた。中邑はここ何年も技能賞にノミネートされるが、それも当然で、誰が相手でも持ち味を発揮していい試合をするのだ。そしてくねくねの独特のスタイル、コスチューム、仕草、発言…その自己プロデュースも素晴らしい。新日本人気はパッケージによるものと前述したが、その中での中邑の役割は大きい。投票の結果は中邑=12、CIMA=9の僅差で中邑に。中邑の場合はどうしてもハードルが高くなってしまっていたためか、03年の新人賞以来の受賞である。
【新人賞】橋本大地
 去年、鈴川真一に競り負けた大地が今年は15票を獲得して、堂々の新人賞に。私がノミネートしたのはデビューまで1年9ヵ月、シングル初勝利まで2年8ヵ月を要した全日本の中之上靖文だが、残念ながら2票止まりだった。その他はドラゴンゲートでマッド・ブランキーで頭角を現したキャリア2年9ヵ月の谷崎なおき=2、今年4月にデビューした女子の夕陽=2だった。
【女子プロレス大賞】愛川ゆず季
 昨年に続きゆずポンが連続受賞。白いベルトを守り、シングルのリーグ戦にも優勝。団体のエースとしての自覚、プロレスラーとしての強さを兼ね備えてきただけに、投票が終われば納得の連続受賞だった。
 私が投票したのは紫雷美央。WAVEやアイスリボン、男子のユニオン、SMASH、WNCと幅広い活動で発信力を発揮したことを評価した。SMASH時代はテレビ解説をやっていた私もキトタクとの愛の劇場に巻き込まれてイジられたが、その頭の回転の速さと自分の見せ方のうまさには本当に感心させられたものだ。
ノミネート&投票結果は愛川=13、美央=5、旧姓・広田さくら=2、里村明衣子=1だった
 その他、特別功労賞=坂口征二、レスリング特別表彰は米満達弘(男子大士フリー66キロ級)、小原日登美(女子フリー48キロ級)、吉田沙保里(女子フリー55キロ級)、伊調馨(女子フリー63キロ級)のロンドン五輪レスリング金メダリスト4人。
 以上、約1時間50分(去年より長い)に及ぶ選考会議の詳細でした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です