船木vs諏訪魔に見た全日本の新しいカラー

 昨日、横浜文化体育館で行われた王者・船木誠勝vs諏訪魔の三冠ヘビー級戦は凄かった。8・26大田区で船木が秋山から三冠を奪回した4分37秒の短期決戦も凄かったが、それとは違った凄さがあったのだ。
 ハッキリ言って、両雄ともに“いわゆるプロレス”が巧いわけではない。試合の組み立てが緻密だったり、受け身やロープワークが美しかったり、技が華麗だったり、ファンの心理を読んで…ということに長けているわけではない。馬場さんの時代からの全日本プロレスでは、そうした要素を備えているのが一流レスラーとされていたのだが、船木と諏訪魔はそこを突き抜けたところで勝負していた。
 何が凄かったかというと、諏訪魔のタフさと火事場の馬鹿力、船木の「三冠王者の自分が全日本を背負っていかなければいけないんだ」という揺るぎない覚悟だ。最後、諏訪魔は事実上のKO負けだったが、船木の掌底や蹴りの猛攻に一歩も退かず、「もう無理だろう」というところでぶん投げる強さを随所で発揮した。プロレスのセオリーが通用しないナチュラルな強さが諏訪魔にはある。そして船木の「自分が全日本のトップ」という意識と責任感、プロレスへののめり込み方は頼もしさを感じる。船木は「自分は武藤さんの膝の代わりです」と言った。「膝の代わりに俺がいます。武藤さんが1ヵ月に1試合、2ヵ月に1試合になってもいいんで、その間は俺が絶対守ります」と言った。こんなに迷いがなくプロレスに夢中になっている船木は、10代のヤングライオン時代以来かもしれない。
 結果、昨日の三冠戦も船木vs秋山同様に従来の全日本の三冠戦とは異質なものになった。船木vs秋山がそうだったように昨日の試合も船木と諏訪魔でしかできないものだったと思う。そして、もうひとつ書いておきたいのは試合のスタイルや中身がまったく違うにもかかわらず、平成の四天王プロレスと同じような後味を感じたこと。それはきっと船木と諏訪魔が邪心なくピュアな闘争心で体と心を全力でぶつけ合ったからだろう。闘いの精神は四天王プロレスも昨日の船木vs諏訪魔も一緒なのだ。
 船木誠勝というプロレスと総合格闘技のハイブリッドな王者が誕生したことによって、今の全日本には馬場・全日本でもない、この10年の武藤・全日本でもない、まったく新しいカラーが生まれたような気がする。

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