鈴木みのるの真意

「プロレスで水がない人の喉をうるおすことは出来ないんですよ。プロレスやったからって亡くなった人が戻ってくるわけじゃないんですよ。食料だって、水だって…物資は必要なんですよ。それは俺だってわかっている、バカじゃないんだから。でも、俺はあの時(3月27日のディファ有明)杉浦を目の前にして言わずにいられなかったし、言わなきゃいけなかった。ネットとかで試合の話題作りみたいに書かれたりもしたけどさ、俺は言わずにいられなかったし、俺が言わなきゃいけなかったんですよ。杉浦に指名されたけど、もうタイトルマッチなんかどうでもよかったんだ。なぜかって…それは杉浦とのタイトルマッチが終わったら言うかもしれないし…。いや、一生言わないままかもしれない。それはちょっとわからないけど…」
 これはすったもんだの揚げ句、杉浦vs鈴木みのるのGHCヘビー級選手権が正式決定してしばらくした後にプライベートな会話で聞いたみのるの言葉。取材ではなく、あくまでもプライベートな会話だから、どこにも書かなかった。
 昨日の杉浦vsみのる。みのるのタイツの脇には東北の地図、SAVE TOHOKUの文字があった。試合は最後、ゲンコツでの殴り合いになり、みのるは敗れた。そして、みのるは「言い訳になっちゃうかも…」と言いながら、涙をにじませながら、胸に秘めていたことを吐き出した。
 震災があった時、みのるは全日本・石巻大会に参戦するために移動バスの中にいた。バスで一晩過ごした後、帰京することができたが、その途中で「本当は昨日のプロレスを観に行く予定だったんですけど、町がこんなになっちゃいました。でも、町は必ず僕らが元通りにするから、必ずプロレスを見せに来てください」とファンに声をかけられたのだ。家が流されて「もう、僕にはプロレスしかないんです」と言うファンもいたそうだ。そんな声を直に聞いたみのるは「俺には何の力もないけど、そういう奴がひとりでもいるなら、俺は絶対にプロレスを捨てない。待っている人がいる限り、プロレスをやろう」と心に誓ったという。だから、杉浦の後ろ向きに受け取れる発言が許せなかった。「何でお前がプロレスの力を信じないんだ!? 何で“立ち上がれ!”って言えねぇんだ!?」と叫ばずにいられなかったのだ。
 もちろん、みのるも杉浦の真意も、杉浦の主張も理解していた。だから昨日のタイトルマッチは、わだかまりを流す、和解のための殴り合いになったのだと思う。
「杉浦っていうレスラーは嫌いなレスラーじゃないんだよ。どっちかっていったら好きかもしれない。気持ちのいい奴だしね」とみのる。それでもフッと笑って「俺に勝ったぐらいでいい気になるなよ」と、らしい言葉を付け加えた。
 鈴木みのるは明日から全日本の東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティ大会に出場する――。

「鈴木みのるの真意」への2件のフィードバック

  1. いつも言葉少なな鈴木ゆえに、心に響きます。彼は言葉でも大技を使わずにプロレスができるプロレスラーです。

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