三冠&世界ジュニア

 昨日の横浜文化体育館における諏訪魔vs船木誠勝の三冠ヘビー級選手権、カズ・ハヤシvs武藤敬司の世界ジュニア・ヘビー級選手権は、いずれも濃密な試合だった。
 まず世界ジュニアだが、武藤が公約通りにウェートをジュニアの規定内の103キロまで落としたのは立派。ポジティブ・シンキングの武藤のことだから「こうやって減量をやっている俺ってカッコイイぜ!」と思っていただろうが(勝手な推測)、1ヵ月ちょっとで15キロ近く落としたのだから、やっぱりこの人はプロである。
 試合はカズと武藤の技術と駆け引きの丁々発止の勝負。そんな中でもカズはスピードできっちりと武藤を翻弄してジュニア王者のプライドを誇示。武藤は武藤で、ジュニアになりながらも自分の従来の組み立てを押し通してカズに食い下がった。お互いに自分のスタンスを守って変に合わせないところがかえってスリリングな展開を生んだと思う。そして武藤が言うところの「餌の撒き合い」を制したのはカズ。2年前のチャンピオン・カーニバル公式戦でもそうだったが、シャイニング・ウィザードをギリギリのところでかわして丸め込む技術はさすが。それを返そうとした武藤をさらに巻投げ固めでガッチリ押さえたあたりはカズの研究勝ちだ。タイトルマッチが決まると、相手のことを研究して前哨戦であらゆる試みをし、タイトルマッチ本番に万全で臨むカズを切り崩すのは容易ではないだろう。
 メインの三冠戦は、まず船木の引き出しが開いた。船木はいわゆるプロレスラーが持っていないスキルを沢山持っている。グラウンドでの相手のコントロール、サブミッションの戦略、打撃…序盤、諏訪魔が手も足も出なかったのも当然だ。そして注目すべきは、プロレスに戻って来てから感情が内に向かっている感が強かった船木が、この三冠戦では外に発散させたこと。掌打のラッシュで諏訪魔をダウンさせた後のガッツポーズには嬉しい気持ちにさせられた。
 週刊ゴングではかつて船木に『2001年の超星』というキャッチフレーズを付けた。2001年…21世紀になっても32歳という若さに無限の可能性を感じていたからだ。21世紀の新日本プロレスのエースは間違いなく船木だという意味もあった。それが2010年、41歳になって新日本ではなく、全日本の三冠に挑戦するというのも、これはこれで感慨深いものがあった。王座奪取はならなかったが、これからもプロレスに専念し、その技術を若い選手に伝えていってほしいと思うし、また三冠に挑戦してほしいと思う。
 そして、その船木を振り切って防衛した諏訪魔。あらゆる技術を駆使した船木に対して、ベタにプロレスだけで向かっていったところに諏訪魔のこだわりと意地を感じた。だから決してスイングした試合ではなかったが、逆に緊張感の試合になったのではないか。敢えて船木に体をさらした結果、両膝の靱帯を痛め、掌打のラッシュで鼓膜を破り、首とアゴにもダメージを負ってしまったが、恐らく諏訪魔にしてみれば承知の上。プロレスラーのタフさを表現し、最後もナチュラルな力で船木をねじ伏せた。
 正直、今の諏訪魔は粗削りで、そのまんまの強さだけで試合をしている気がする。その部分がなくなってしまったら魅力は半減してしまうが、こうした苦しい戦いを続けることで、いろいろなものを纏って本物のトップのプロレスラーになるはず。逆風もあるが、3本のベルトと一緒にスケールの大きいプロレスラーになっていってくれることを願う。何よりも「こいつは強い!」と感じさせるのが諏訪魔の財産あり、そういう新時代のレスラーがいることが日本プロレス界の財産でもある。

「三冠&世界ジュニア」への2件のフィードバック

  1. >船木はいわゆるプロレスラーが持っていないスキルを沢>山持っている。グラウンドでの相手のコントロール、サブ>ミッションの戦略
    この部分には反論があります。グラウンドや関節技は本来
    プロレスラーの基本であり、諏訪魔選手が手も足も出なかったから、プロレスラーが持っていないスキルというのは言いすぎではないでしょうか?ゴッチさんや猪木さん前田さんはグラウンドや関節技をきちんと出来ていたと思うのですが。小佐野さんの見解をもう一度聞かせて頂きたいです。
    >かつて船木に『2001年の超星』というキャッチフ>レーズを付けた。
    NO.237号ですね。今でも過去の週刊ゴング大切に保存しています。

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