プロレスラー、立野記代…完結!

 昨日は解説の仕事がなかったので、全日本・後楽園ではなく、新宿FACEの立野記代の引退試合に行った。これも浮世の義理というか…古くからの友人の引退試合は見届けたかったのだ。私は女子プロレスの担当記者になったことがないから、全女時代の記代とは接点がない。“飲み友だち”になったのはLLPW参加後の93年春頃。それでも17年の付き合いがあるわけだ。そう、記代は私にとって取材対象ではなく、あくまでも友だちだった。Gスピリッツ第17号のインタビューは、これまで雑談として聞いていた話を改めて仕事としてきちんと聞いたもの。偉大なる女子プロレスラー、立野記代をちゃんとした形で最後に記事にしておきたかったのである。
 さて、新宿FACEは同窓会のようだった。マスコミ関係でもJBエンジェルスが誕生する前から取材し、フジテレビの放送席に座っていた重鎮のデイリースポーツ・宮本久夫氏が昔と変わらずに取材。そして懐かしい選手たちがわんさかいる。基本的に女子レスラーはLLPWの人たちしか知らなかった私だが、いつの間にか多くのレスラーと知り合いになっていたんだなあと実感した場でもあった。
 大会はまず入場式。ここで記代は早くも号泣。客席から「これからだぞーっ!」という励ましの声が飛ぶ。昔から記代はよく泣いた。他の選手の引退試合でも、引退する当事者よりも先に泣く人だった。果たして、これで大丈夫なのか…。
 試合は、井上京子&貴子のW井上と豊田真奈美&下田美馬のスイートハーツのタッグ対決でスタート。全女の雰囲気だ。第2試合は華名&大畠美咲&佐藤綾子vs春日萌花&チェリー&下田佐和子の今のコたちの6人タッグ。第3試合の時間差バトルロイヤルは全女、JWP&LLPW(というよりもジャパン女子)がズラリ勢揃い。ここでやってくれたのが広田さくら。記代に扮して登場し、フライング・ネックブリーカーを連発。最後はダンプ松本のラリアットを記代オリジナルの“逆上がり式回転受け身”(Gスピリッツ参照)で食らって散るという通ぶりを発揮してくれた。
 バトルの最後に残ったのはダイナマイト関西、尾崎魔弓、ハーレー斉藤、GAMI、コマンド・ボリショイ、遠藤美月。全女勢からは「ジャパン女子ばっかじゃん!」の声が飛ぶ中、関西&尾崎&ハーレーの一期生vs後輩の図式に。最後に勝利したのはハーレーだった。
 いよいよメインの記代引退試合。記代&GAMIvsハーレー&栗原あゆみのカードは当初、30周年記念試合用のものだった。それをそのまま引退試合にしたのである。ロープを開け、記代をリングに招き入れたのは、91年3月17日の最初の引退(25年定年制)の対戦相手を務めた貴子だった。
 先発を買って出た記代は、いきなり栗原にフライング・ネックブリーカー2連発。実は引退後、入院して手術をすることが決まっている記代は、この技が一番自分の体にこたえて「最後まで試合が出来るのか…」と思ったという。しかし、これがラスト。技を出し惜しみしている場合ではなかったのだ。その後もロメロ・スペシャル、STF、ラリアット、ダブルアーム・スープレックス、ダイビング・ボディプレス、ジャーマン・スープレックス、デスバレーボム…と持てる力を存分に発揮した。
 引退試合では恒例のセコンド勢が参加してのコーナー攻撃では後輩の下田、豊田、京子、アジャ、関西が記代に突進するものの、直前で攻撃出来なかったのが微笑ましかった。そして「オリャー!」と襲いかかったダンプがそのまま記代を抱き締めた場面は、過去を知る者にとってはジーンとくるものだったはずだ。
 試合は栗原がリストクラッチ式の裏投げで記代をフォール。トミーが3カウントを叩いた後、記代が下から栗原の頭を「よしよし!」と撫でたのが印象的だった。記代はインタイビューの中で気になる選手として栗原の名前を挙げていたが、その後輩にバトンを渡した場面でもあった。
 引退セレモニーは試合前に泣いた分、湿っぽさはなし。LLPWのOGとして半田美希、穂積詩子、レオ北村、紅夜叉、全女のOGとしてライオネス飛鳥、ブル中野、コンドル斉藤、ドリル仲前が駆けつけ、長与千種とニューヨーク在住の山崎五紀からはビデオレターが届いた。
 10カウントゴング、最後の選手コール後にハプニング発生。記代はサッサとリングを降りて花道を下がってしまったのである。慌てて風間ルミが呼び戻しに行き、戻ってきた記代にハーレーが「落ちつけ!」と一言。この素の天然ぶりも記代の魅力である。そして改めて記念撮影。記代の女子プロ生活は幕を閉じた。
「プロレスは人生そのものでした。辞めても一生レスラーですからね、気持ちは。やっぱりアメリカでプロレスの楽しさに巡り合えたのが大きかったな。何万人も入るような会場で毎日試合して。言葉がわからなくても出来る商売はいいなって思った。そして全女、LLPW…素晴らしい仲間に囲まれていたんだなと思いました。ムーラを越えることができなかったのが悔いかな。でも、体が辞める勇気をくれたのかなとも思います」
 ジャンピング・ボム・エンジェルスとしてアメリカでも今なおリスペクトされる偉大なる女子プロレスラー、立野記代、ここに完結。
ノリヨ、お疲れさまでした!

「プロレスラー、立野記代…完結!」への2件のフィードバック

  1. 大ファンでした、いぶし銀のような彼女の動きがどんな相手とでも試合全体を引き締めていたのが思い出されます、またレオ北村の名前が出てきてなつかしさが倍増しました。

  2. 記さんファン歴30年です。新宿Faceの最後列で涙していました。普通引退試合は体力も落ちてるし、選手の思い入れが強すぎて凡戦になることが多いのですが、記さんの試合は違いましたね。身体に鞭打ち最後まで試合の質を落とさなかった記さんのプロ根性は本当にすごいと思いました。
    試合前の休憩時間のサイン会で、偶然記さんの現役最後のサイン色紙をゲットできたのは一生の思い出になります。
    Gスピリッツのインタビュー記事、出色でした。週刊ファイト、ゴングと続いては消えて行ったプロレスマスコミのインテリジェンスの復活を感じさせてくれた記事でした。
    記さんの引退興業で私のプロレス観戦も終わりにしようと思っていたのですが、逆に記さんの引退興業のお陰で、記さんに選ばれたであろうポスト記さん候補の栗原あゆみを始め6人タッグの選手達を少し追いかけてみようか、と言う気になりました。
    記さんはやっぱり凄い人だと思います。

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