全日本を背負うべき者

 44分24秒。昨日の両国における鈴木みのると諏訪魔の三冠ヘビー級選手権は死闘だった。全日本の今後がかかる一戦だった。昨日のこの一戦がコケていたら、全日本はヤバかった。武藤の欠場以来、ハッキリ言って全日本の観客動員数はよくない。それでも武藤は他団体の力を借りずに超党派軍vs新世代軍という現在の図式に託した。これに応え、先につなげるには、昨日の三冠戦は勝敗の行方と同時に内容が求められていたのだ。そして出来得れば諏訪魔が王座を奪取するのが理想だった。今の全日本にとって、諏訪魔は“最後の希望”だった。
 図式的には世代闘争になるが、「俺の時代だ!」と豪語する鈴木みのるもまた時代と戦っていた。「今の全日本に必要なのは鶴龍、四天王、武藤も含めて過去に勝つこと。過去最高、史上最高が現在じゃないといけない」というのが現王者としての鈴木の心意気。「俺のおもちゃ」と言って、ベルトを乱暴に扱うのはあくまでも挑発行為で、鈴木も三冠王座の重み、全日本の歴史の重みを実感し、それを乗り越えるために戦っていたのである。そして諏訪魔は全日本の過去の歴史を背負った上で新しい全日本を目指す“諏訪魔革命”をぶち上げていた。考え方や表現方法は違っても、共に歴史、過去と戦っていたのは確かだ。
 結果は諏訪魔の勝ち。肝心の試合内容は、この2人だから、いわゆる最近の名勝負と呼ばれる試合のような複雑なハイスパートがあったり、リズムのいい攻防戦ではなかったが、魂のこもったゴツゴツ感のある激闘だった。正直、私的には好きな試合だ。
 この試合をリングサイドからテレビ解説していて、過去の全日本とオーバーラップした。何があっても意地になってカウント2で跳ね返し、最後は魂だけをぶつけ合うような2人に過去の鶴龍対決を感じたし、諏訪魔のフィニッシュのバックドロップ・ホールドでは90年4・19横浜文化体育館の最後の鶴龍対決が甦った。新世代軍に肩車される諏訪魔が、あのジャンボ鶴田を初めて攻略した時の90年6・8日本武道館の三沢光晴に見えた。
 諏訪魔はジャイアント馬場も、鶴龍も、四天王も知らない武藤・全日本の生え抜きの選手。しかし子供の頃から全日本プロレスのファンで、VM時代には移動バスの中で70年代からの全日本のビデオを観て、その歴史を頭に叩き込んだ。自然と全日本というものが体と頭に刷り込まれているのである。思わず過去がオーバーラップしてしまったのも、諏訪魔の中に全日本のDNAが自然に組み込まれていたからだろう。
 昨日の試合を観て思ったのは、やはり諏訪魔は全日本を背負うべき男だということ。現実問題として、諏訪魔はまだまだ発展途上の段階だが「これからベルトと一緒に新しい全日本プロレスを創っていく」「これから、このベルトの権威を取り戻す、一生かけて」の決意通りに、懐が深くて、強くて、スケールの大きなプロレスラーに成長し、全日本の歴史を受け継ぎつつ、新時代を切り開いてくれることを願う。
 この2年間の試行錯誤があったから、昨日があった。諏訪魔、おめでとう! これからに期待しています。

「全日本を背負うべき者」への3件のフィードバック

  1. 諏方魔選手も、鈴木選手も、最高でした。
    意地の張り合い、頭突き合いでのすごい音!
    思わず、もう止めて~と。
    鈴木選手が、フィニッシュ前、「全日本かかってこいー!」この叫びにゆさぶられました。
    2人の熱い気持ちを見せて頂きました。
    これからも、会場で応援するぞ!
    生観戦は最高です!

  2. 昨夜、GAORAで見た新世代VS超党派軍の8人タッグ戦は、テンポが凄く良くて久々に面白いと思った!
    最近、全日本だけじゃなくプロレス全体の試合の流れがつまらなくて冷めがちだった私にプロレスの面白さを再認識させられました。

  3. 本当にまぁ、両者のすべてが出尽くした 凄まじい試合であったと思います。どうなるのかわけが分からなくなった挙句、このところ出していないのは惜しい諏訪魔のバックドロップは、さすがの説得力でした!!
    でも、選手生命を無駄にするような試合が少なくて、それでも面白いのが全日本プロレスの良さなんで。あの、えげつない頭突きは金輪際止めて欲しいです。(汗)
    船木の入団とKENSOの参戦で、vsムタとか、曙vsダディみたいな試合が中心になっていくことを望みます。あと、柴田の乱入も。(!) KENSOは、いまのところ感情移入しがたいのが致命的な欠点ですが、柴田が出てくるとがらっと変わりそう。
    「紙芝居みたいなプロレス」。それこそ、武藤さんはずっとリング上に出てくるのに1年も試合はしていなくて…みたいな展開でさえ楽しいような。武藤さんには、「ボスキャラ」になって欲しいですね。
    それには、鈴木みのるがいっぺんぐじゃぐじゃに「泥」をかぶってしまって、西村あたりに救出されるような展開がいると思うのですが。
    節目と思って、ごちゃごちゃ申してしまいました。ごめなさい。

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