SMASHの深化

 実は自宅兼事務所(実際には単なる仕事部屋)の引っ越しと諸々の原稿の締め切りが重なって7月10日のノア有明コロシアムから2週間も取材現場に行くことが出来なかった。それだけに24日(土)のSMASH昼夜興行、昨日25日(日)の全日本・後楽園&DDT両国と、2日間で4大会に行けたのは大いなるストレス発散。ということで順を追って感じたことを書いてみたい。今日はまずSMASH昼夜興行だ。
 SMASHはTAJIRIのご指名を受けてサムライTVでの解説をやらせてもらっているが、いつも困ってしまうのは様々な要素、考えさせられることがあって、一言で表現出来ないことだ。今回の昼夜興行で7回目を数えたが、1回目と2回目は様々なキャラクターを紹介するサンプラー的な興行だったと思うし、3回目は1&2回を踏まえて未知のフィンランドFCF勢が日本に初上陸して本編がスタート、4回目は朱里vs華名の女子プロをメインにした実験的な大会だったように思う。
 そして今回の昼夜興行は「私のSMASHに対する考え方、イメージは違っていたのかな?」と考えさせられるものだった。
 SMASHは、あのTAJIRIがプロデュースする興行だけに、お客さんは勝負の行方よりも、その独特の世界観を楽しみに来ているのだと思っていた。ところが、これは考えてみれば当たり前の話なのだが、お客さんは勝ち負けにこだわりを持っているというのを実感させられた。元WWEのユージンやスカリーⅡホッティーのパフォーマンスを楽しみつつも、新日本の三上恭佑に対する児玉ユースケ、華名に対する朱里、昼の部スター・バック、夜の部ヴァレンタインに対する大原への声援は熱く、特に昼の部でスター・バックのパイルドライバーで首にダメージを負った大原が夜の部でヴァレンタインに勝利した時の沸き方は半端じゃなかった。夜の部のメインではTAJIRIがスター・バックにFCF王座を奪われたが、スター・バックが必殺パイルドライバーの態勢に入った時の「アーッ!」という悲鳴にも近い歓声が起こったのも印象的。それは昔、フリッツ・フォン・エリックがアイアンクロー、キラー・カール・コックスがブレーンバスターの態勢に入った時のどよめきを思い出させてくれた。「これを決められたら終わりだ!」という緊迫感である。
 そして注目したのはフィンランドで初めてプロレス団体を立ち上げたスター・バックだ。正直、どういう選手なのか実態は掴めなかった。一応、専門家的に分析すると、必殺のパイルドライバーに持ち込むために常に相手の首にダメージを負わせる技で理に適った試合の組み立てをする選手であることはわかった。しかし、それよりも大きいのは異常に大物感、オーラがあること。「何なんだかわからないけど、こいつは凄いんだな!」と思わせる空気を持っているのだ。
 選手それぞれにキャラクターがあり、観客は勝敗にこだわる。そして必殺技に説得力があり、“まだ見ぬ強豪”は実際に日本のリングに立ってもその神秘性を失わない。これらの要素はまさに古き良き時代のプロレスそのもの。TAJIRIは新しいことをやっているようでいて、SMASH旗揚げ前にサムライTVで対談した時に言っていたようにプロレスの原点回帰を目指しているのだということが旗揚げ4ヵ月して、ようやく理解できたような気がした。
 もうひとつ、今はハッピーエンドが常識になっているが、今回の興行はTAJIRIがベルトを奪われ、大原がTAJIRIに決別宣言するというバッドエンドだったことにも注目したい。だが、それは決してお客さんを嫌な気持ちにして帰させるというものではなかった。昼夜共に満員になったことで年内のJCBホール進出が決定した中で「人生はすべてがうまくいくわけじゃないけど、みんなで力を合わせて頑張ろう!」という空気が生まれたバッドエンドだったのである。
 何だが、ドンドン深化していくSMASH。これが新宿FACEという小さな空間からJCBホールに進出した時にどんな空間になるのか興味深い。まずはその前に8・30新宿FACEだ。

「SMASHの深化」への3件のフィードバック

  1. 大会が終って、こういうメディアでこういう意見を拝見すると
    「あぁ、そうだったのかな」と思うのですが、現実問題、
    会場では頭がついていかないこともあります。特にラスト。
    興行には不満はないし、自分の、観る側の技術の無さが問題
    かな、とは思ったのですが、大会のBADENDとは別に、自分自身
    もBAD状態になってしまいました。

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