お疲れさま、スティーブ

 今日が2009年最後のダイアリーだが、悲しいことを書かなければならなくなった。現地時間の12月29日、コロラド州デンバーのセント・アンソニー・セントラル・ホスピタルでスティーブ・ウイリアムスが咽頭がんのため、49歳の若さで亡くなったという知らせを受けたのだ。
 スティーブは86年7月に新日本に初来日後、90年2月に全日本に円満トレードされて常連のトップ外国人選手として活躍した。スティーブは単に日本をビジネスの場としているのではなく、日本が大好きな人だった。だから私のブロークンなイングリッシュもちゃんと理解してくれて取材もやりやすかった。
 思い出すのは05年2月5日、日本武道館におけるジャイアント馬場さんの7回忌追善興行。スティーブは招待ゲストとしてではなく、自分の気持ちだけで駆けつけてきた。ちょうど出くわしたので控室まで案内したのだが、スタン・ハンセンや天龍さんと嬉しそうに旧交を温めていた。
 そして今年。IWAジャパンの7・19新宿FACEでのカムバックだ。04年7月に咽頭がんになってから丸5年、対戦相手のヘルアントマシン2号が大型だったために必殺のオクラホマ・スタンピードを決めたようとしたところで体勢が崩れて危険な角度のパワースラムのようになってしまって本人は悔やんでいたが、123キロの体を作ってきただけで、私はジーンときてしまった。試合後の囲み取材後、記者団から拍手が自然発生した。「お帰り、スティーブ!」と誰もが生還を喜んだのだ。
 だが運命は冷酷だった。10月25日のIWAジャパン新宿FACEで引退試合を行う予定だったのが、咽頭がんが再発してしまったのである。そして今回の悲報…。
 スティーブ、5年を越える闘病生活は本当に辛かったでしょう。それでも貴方は最後に1度だけ日本のファンにファイトを見せてくれました。ありがとうございました。そして本当にお疲れさまでした。ゆっくりとお休みください。
PS.ご指摘があり、後日に内容を一部訂正しました。

1月3日、お見逃しなく!

「も~う、いーくつ寝ると~お正月~」。来年のことを言うと鬼が笑うという諺があるが、今日は新年の情報をお届けしたい。
 CSチャンネルのGAORAスポーツでは昨日29日から新年1月3日までの6夜連続で23時~24時に全日本プロレス2009総集編を放映。最終日の1月3日放送分は『武藤敬司が選ぶ全日本プロレス2009重大ニュース』ということで、映像を盛り込みつつ、トークがメインの特別番組になっている。で、そこに参加しているのは武藤、お笑い芸人でプロレスファンでもあるビビる大木さん、アイドル・タレントの夏川純ちゃん、そして私なのだ。
 番組上は「あけましておめでとうございます!」だけど、収録は12月下旬の某日、全日本プロレス合宿所にて。名物・浜ちゃんこを突きつつのトークで、これがぶっちゃけ話全開。プロレスの話だけでなく、武藤社長は平気で夏川純ちゃんの年齢詐称疑惑にまでツッコミを入れていた。そして、それに対する夏川純ちゃんの返しもサスガ。また、ちゃんこ係だったはずの浜ちゃんも武藤社長に誘導されて、いつしかトークに参加して“禁断のモノマネ”を披露する破目に。どこの部分が実際に番組で使われるかはわからないが、武藤社長のリラックスした素の顔が随所に出ていて、面白い仕上がりになっているはずだ。
 最後に浜ちゃん、美味しいちゃんこをごっちゃんでした!

09年最後の『S-ARENA』

 昨日は今年最後のサムライTV『S-ARENA』。スペシャル番組として午後9時から2時間のナマ本番だった。出演者はキャスターの三田佐代子さん、私、そして週刊プロレスの佐久間一彦編集長。番組の前半には潮﨑豪、後半には棚橋弘至が特別ゲストとして登場した。
 潮﨑も棚橋も明るいのが素晴らしい。この明るさはきっと2010年のプロレス界も照らしてくれるはずだという頼もしさを感じた。2人は1・4東京ドームで激突するが、対抗戦という枠をハミ出して、新しい時代のプロレスを見せてくれることだろう。印象としては潮﨑はまっさらな気持ちで臨もうしているようだし、棚橋はリングに上がるまでにいかに空気を作り上げていくかという舞台設定を自分なりに模索しているようだった。
 今年の『S-ARENA』を振り返ると、やはり印象に残っているのはレスラーがMCを務める回に出演した時だ。腐男塾が来た時にはMCのカズ・ハヤシも私も壊れかけ、武藤の台本を無視した天才的なアドリブMCに神奈月さんと私が振り回され、小島聡MCはゲストの荒谷望誉のゆる~い空気に「もっと感動的な話をしろよ!」と頭を抱えたっけ。そういう何が起こるかわからないナマ本番のライブ感が結構、面白かった。
 レギュラー放送でも中邑真輔への挑戦直前にゲスト出演した棚橋がプロレス観の違いを熱く語った後に「あっ、今のはオレのキャラじゃなかったですね。カットしてください」と慌ててチャラ男に戻ったり、選手の素顔が垣間見れるのもミソ。
 何だかんだとレギュラーになって来年で6年になるが、ダイジェストであってもインディーや女子などの団体の様子を知ることができるし、それまで取材したことがなかったレスラーとも知り合うことができた。この番組は私にとっても大きな財産なのだ。
 ということで、来年は1月4日の月曜午後9時から、またまた2時間スペシャルでスタート。東京ドームを見終わったら、家に直帰してテレビをつけてください!

日向あずみ引退&DDT09年最終興行

 昨日は昼12時から後楽園でJWPの日向あずみの引退試合。日向がレスラー生活を送った94年から現在までの女子プロ界は男子よりも激動だった。デビューした94年の11月20日には全女が全女子プロ団体を集めて東京ドームに初進出するなど女子プロ人気はピークを迎えたが、その反動は大きく、徐々に衰退。JWPは主力選手の引退や離脱が相次いで2000年11月から3ヵ月間、活動休止を余儀なくされた。一時は所属選手が5人だけになったこともあった。
 今や女子プロはフリー選手が多いが、そんな中で日向が15年間、JWP一筋でやってきたことは改めて凄いことだと思う。引退試合は日向&コマンド・ボリショイvs春山香代子&米山香織というJWP生え抜きによるタッグマッチ。試合的には空回りの感もあったが、それだけ「これがJWPだという試合を見せたい!」という4選手の気持ちが強過ぎたということ。
 引退試合を終えた日向は「みんなと離れるのは寂しいし、明日からどうしよう?」と天然っぷりを発揮していたが「活動休止になったこともあったし、後楽園ホールを借りるお金がない時期もあったから、今日、こうして後楽園ホールできちんと日向を送り出せてよかったです」というボリショイの言葉は本当に重かった。
 日向の第2の人生にエールを送ると共に、今後のJWPにも期待したい。
 夕方6時半からはDDTの2009年最終興行。両国初進出を成功させ、飯伏がプロレス大賞技能賞獲得とノリに乗った1年の締め括りは、バラエティー色よりもシリアスに寄った興行に。メインの石川修司vsHARASHIMAのKO-D無差別級選手権は、勝ちにこだわるHARASHIMAがシビアなローキックと徹底した足殺しで攻め立てれば、王者・石川はHARASHIMAの両腕をかんぬきで極めた上でゴツンゴツンと鈍い音がするヘッドバットを連発。最後のクロスアーム式スプラッシュマウンテンも高角度でバッチリ決まった。
 そしてエンディング。スーパーJカップで新日本のリングに上がったディーノが全選手をリングに集めて「業界最大手の団体に上がって気付いたことがあるの。どうしても新日本プロレスにしかないものってある。でも新日本にはなくてDDTにしかないものもあった。だから胸張っていいと思う。高木三四郎、アンタが十何年前に作り上げたDDTが、最大手に一歩も引かないところまで来たの。次はどんな夢を見よう!? いや、どんな夢見せよう!? アンタがやってきたことの方向性は何ひとつ間違っていなかった。私も飯伏もそれを証明した。だからアンタが舵を取りなさい! 私たちはその船を全力で漕ぐだけ」と新年に向けて涙の誓いを。
 スーパーJカップ1回戦で外道に敗れた飯伏は新日本出撃を宣言し、髙木は「2500年までDDTを続けるぞ! 皆さんに楽しんでいただける、皆さんと共に歩んでいける団体にしたいです」と宣言。
 控室に戻ってきた髙木は「2500年って…俺も含めてここにいる誰も生きてないけど、プロレスはそこまで続いていると思います。来年も両国をやるけど、それは通過点。まだまだ先を見ていますから」と新年への意欲を改めて宣言した。昨日の後楽園ホールから来年7月25日の両国大会のチケット先行発売を開始。大人げない人たちが集まったDDTは疲れを知らない子供のように休まずに動き続ける!

菊タローの世界でみのる&高山は…

 昨日は昨年8月の旗揚げ戦以来のアキバプロレス。アキバプロレスは秋葉原のオタク文化とプロレスを融合した菊タローの世界だ。
 コンセプトは秋葉原を守ろうとするアキバ軍団と、秋葉原を乗っ取ろうとする悪の軍団の戦いというわかりやすいもの。ちなみに旗揚げから3回大会までは秋葉原をホストの街にしようとしていたRionが今回から菊タローと握手。Rionを裏切り者とするキッダーニ男爵率いる悪の軍団が襲いかかるという新展開を迎えた。
 正直、私はアキバ文化、オタク文化には疎いが、それでも楽しめるのがミソ。プロレスファンは菊タローの世界観の中のプロレスを楽しめばいいし、オタク系の人にとってはプロレスへの入口になっている。様々な設定上、キャラ付けされたマスクマンが多いものの、その中身は“本物のレスラー”だから試合はしっかりしているのだ。
 第1試合は秋葉原名物対決のダンボール肉まんvsおでん・カーン、第2試合ではヒーローショーをプロレスにアレンジした天体戦士サンレッド&ウェザーブルー&ウェザーイエロー(菊タロー=実際にアニメの声優も担当している)がクリスマスをこの世からなくそうとたくらんでいるサンタ怪人・三太&サンタ怪人・九郎&戦闘員を懲らしめた。
 第3試合はアップルみゆき、華名、紫雷美央、風香、紫雷イオ、飯伏幸太、佐藤光留がメイド服で時間差バトルロイヤルを行うメイド・ランブル。これはこれで華やかで面白かった。
 こうした趣向を凝らした試合&ストーリー展開にあって、純粋にプロレスを見せてくれたのはセミの田中将斗&マグニチュード秋葉原(岸和田)vs関本大介&円華。必ず本格的な試合をひとつは入れるというのが菊タローのこだわりだ。
 そしてメインはアキバ軍とキッダーニ軍の全面戦争。アキバ軍の菊タロー&Rionに“世界一でかいオタク”高山善廣が加勢、キッダーニ軍のヴァイス&シュバルツには“世界一性格の悪いオタク”鈴木みのるが加勢するというのが今回のウリ。
 私生活でも怪獣オタクの高山はウルトラセブンのフィギュアを持って、おどおどしながら入場。どうやら内気な性格という設定らしい。対するみのるはジーンズの中に服を入れるオタク・ファッションで登場。“世界一性格の悪い…”という大前提があるだけに普段と同じいじめっこキャラだ。ただ、そのいじめ方はパソコンや携帯で2ちゃんねるの掲示板に菊タローやアキバプロレスを中傷する内容の書き込みをするなど、かなり陰湿。さらに高山のウルトラセブンのフィギュアをぶっ壊すという暴挙に出た。
 このまま2人ともオタクキャラのまま終わってしまうのか!? いや、違った。勝利を確信したキッダーニ軍が菊タローが身に付けていた『ONE PIECE』のグッズを投げ捨てると、みのるの表情が豹変! 「お前、何してるんだ!? 俺は『ONE PIECE』が好きなんだぞ!」と怒り心頭のみのるはオタク・ファッションを脱ぎ捨てると、いつもの鈴木みのるに! そしてヴァイス&シュバルツをボコボコにし、さらに高山もビッグブーツで追撃、最後は「スリー、ツー、ワンピース」の掛け声とともにゴッチ式…じゃなかったワンピース式パイルドライバーを炸裂させ、そこに菊タローがムーンサルト・プロレス。アキバ軍の勝利でハッピーエンドとなった。
 みのるも高山も菊タローの世界に浸かってエンジョイしつつ、最後の最後にきっちりと見せてくれたわけだ。「今日が俺の2009年最後の試合なんだぞ!」とみのる。こういう締め括り方も破天荒でいてプロレス愛に満ちたみのるらしい。
 さて、メインの中盤で菊タローが鼻血を噴き出すというアクシデントがあった。それはマスクの表面まで真っ赤になるほどの出血量だったが、それでも菊タローは最後まで自分のキャラを平然と通して大会を締めた。
「馬鹿なことをやってても、プロレスには命が懸かっているんです」と菊タロー。そんなプロレスラーの心意気は、普段はプロレスを見ない人にも伝わったはずだ。

良くも悪くも…初期FMW

 昨日は新木場でターザン後藤30周年&FMW再旗揚げ興行が行われた。タイトルの『良くも悪くも…』は、いい部分でも悪い部分でも初期のFMWを思い出させてくれた興行だったということ。
 いきなり悪い部分を書いてしまうが、イベントとしては出たとこ勝負、行き当たりバッタリのドタバタだった。20年前のFMW旗揚げ時、プロレス・イベントの経験があるスタッフはのちにW★INGを旗揚げした茨城清志氏とレフェリーを買って出たウォーリー山口氏ぐらいしかいなかったが、昨日のスタッフはプロレス・イベントの経験者は皆無という状態。リングアナの久保田氏は選手コールもゴングを叩くのも初めてという状態だったし、音響や照明の演出を出来る人間もいない。進行チェックを頼まれて手伝いにきていたプロレス・イベントに精通しているY氏が急遽、音響と照明までやることになり、さらに某団体のM選手が救援に駆けつけるという有様だった。
 そして私はインターネットのスティッカムTV(26日=20時~21時放映)の解説を前日に頼まれたのだが、実況アナウンサーが不在! 実況と解説ではまるっきり仕事が違う。実況はプロのアナウンサーでなければ無理だ。その意味では大日本プロレスの登坂さんが実況をやっているのは尊敬に値する。また、全日本の解説の時にはモニターを見ながら、どんな場面をどんな角度で映しているかをチェックしつつ喋るのだが、モニターがないから自分の目で見ていることを喋るしかない。結果、実況なしでゲストのグラビア・アイドルの松坂南さん、斎藤えり菜さんととにかく雑談形式で喋るという、私としては恐ろしい展開になってしまったわけだ。また前半の試合ではセコンドがいないから、一番前の本部席に座っていた私はいきがかり上、紙テープを片付けたり、ミス・モンゴルのガウンを受け取ったり、アピールしたい選手にマイクを渡したり…と、ほとんどスタッフ状態。TVの喋りに専念できるのか不安を感じたものだ(苦笑)。
 というわけで大会の進行はグダグダだったが、その分、リングに上がった選手は頑張ったと思う。オープニングは藤田峰雄vs円華、第2試合ではミス・モンゴル&木村響子vs紫雷姉妹のFMW・OGvsインディー姉妹女子プロレスという“しっかりしたプロレス”を提供した上で、第3試合は蟹KINGvsバカボンのパパの下町ヘビー級選手権の“お笑いプロレス”、お笑いの後は高瀬大樹vsサセの異種格闘技戦。圧倒的な強さを見せて「プロレスラーはこんなに弱いのかよ!」と観客を煽った高瀬は、初期FMWで活躍したキックボクサー、上田勝次を思わせた。続いて鮎川れいなvsキャロットのニューハーフ世界王座決定戦。お笑いやニューハーフから異種格闘技戦まで…これは初期FMWの「何が起こるかわからない」「何でもあり」「オモチャ箱をひっくり返したようなプロレス」というコンセプトに沿ったものだ。セミではリッキー・フジ&GOEMON&ザ・シューター1号のFMW・OBがターザン後藤一派の松本トモノブ&グレート・サタ&ザ・すずめに胸を貸した。
 いよいよメイン。大仁田厚&ターザン後藤が約15年ぶりにそろって入場するや、会場の空気が一変! 熱狂という言葉ふさわしい、熱くて激しい空間になった。そう、これが初期FMWの空気だ。それまでグダグダでも大仁田&後藤の登場、そして大暴れによって観客の興奮はピークに達する。メインイベントは私を初期FMW時代にタイムスリップさせてくれた。
 試合後の大仁田劇場。本部席にいた私を指さしてニヤッと笑った大仁田は、ペットボトルの水を口に含むと、レザーのジャケットを着ているというのに私めがけて聖水を大噴射! おかげで発生したオサノ・コール! 大仁田さん、ありがとう(苦笑)。1981年8月のテネシーからの付き合いだもんね。親愛の情として、冷たい水を受け止めました。
 それからポーゴさん、私の肩に手をかけてくれてありがとう。私のレザー・ジャケットは水浸しになっただけではなく、アナタの血もしっかりと付いていました(涙)。
 ということで、私にとっては様々な意味でインパクトの強いクリスマスイブだった。
 最後に真面目なことを書くと、のんびりした昔の時代だったらグダグダ感もひとつの味としてお客さんも優しく見てくれたかもしれないが、今の時代はそうはいかない。昨日は照明&音響を担当したY氏とM選手、レスラーとデューク佐渡レフェリーの機転によってサマになったが、お金を頂くイベントならばスムーズな進行は当然の義務だし、レスラーとレフェリーがリング上に専念出来る環境を作るのは当たり前のこと。 スタッフの方々は初めての経験で戸惑いもあっただろうし、テンパッていたのもわかるが、今回の興行を反省材料にしてプロレス・イベントというものを勉強してほしい。

才気煥発!

 昨日は午後3時からディファ有明で丸藤プロデュース興行、午後6時半から後楽園でスーパーJカップのダブルヘッダー。取材する方も大変だが、掛け持ちで試合をするレスラーはもっと大変。中でもスーパーJカップで優勝した丸藤は自身のプロデュース興行のメイン(丸藤&青木vsスーパー・ストロング・マシン&スーパーSマシン)とJカップ2回戦~優勝決定戦(2回戦=タイガースマスク、準決勝=田口隆祐、優勝決定戦=プリンス・デヴィット)の4試合をやり、しかもプロデュース興行では自分の試合だけでなく大会の進行等も見なければいけなかったから相当ハードだったはずである。
 気軽に天才児という言葉は使いたくないが、やはり丸藤は天才だった。12・6日本武道館の青木戦で8ヵ月ぶりに復帰して一昨日のスーパーJカップ1回戦(vs獣神サンダー・ライガー)が復帰第2戦という状態での1日4試合だったのだ。
 全部の試合を観た後に感じたのは、ちゃんとペース配分もしていたし、先を見据えた戦略を立てていた。スーパーJカップ3試合はオースイ・スープレックス、不知火、ポールシフトとフィニッシュを全部変え、しかも試合の組み立ても全部変えていた。タイガースマスク戦と田口戦は受けのファイトで、特に田口戦は疲労のピークという感じで珍しく技の正確さに欠けるシーンも見られたが、優勝決定戦のデヴィット戦では完全に立て直して、受けのファイトから一転して4試合目とは思えないぐらい動き回った。きっちり計算しながら緩急をつけて4試合を乗り切ったとしたら、やはり天才と言うしかない。
「前回の優勝から5年間、俺は自分の団体でやれることはやってきたっていう自信もあるし、その蓄積を出せたかなと。自分の間というものを大切にして活かしつつ、自分のスペシャルな部分を出せれば」と丸藤。これは実は深い言葉だ。
 1・4東京ドームで対戦が決定したIWGPジュニア王者タイガーマスクは「独創的なレスリングをする選手。ドームは新日本vsノアだけど、僕と丸藤選手には何も遺恨はないし、個人vs個人としての戦いだと思っています」とコメントした。
 2010年、丸藤は日本マット界の表舞台で躍動する!
PS.一昨日、小鉄さんを激怒させた男色ディーノが昨日もやってくれた。臆するどころか入場時にテレビ解説席に座っていた小鉄さんに抱きつくという勇気ある(?)アクションに。放送席を立ってディーノに突進しようとする怒髪天の小鉄さんは凄味タップリ。若手が必死に止めて事なきを得たが、己のスタイルを貫いたディーノがプロなら、「それは許さない!」と顔色を変えて怒りを爆発させ、新日本ストロングスタイルを守ろうとした小鉄さんもプロである。

スーパーJカップ1回戦で印象に残ったのは

 昨日は後楽園ホールで新日本プロレス主催『第5回スーパーJカップ』1回戦。第1回大会が開催されたのは94年4・16両国(新日本主催)で、その後は第2回=95年12・13両国(WAR主催)、第3回=00年4・1仙台&4・9両国(みちのく主催)、第4回=04年4・21大阪城ホール(大阪プロ主催)と、参加団体の持ち回りで開催されてきた由緒あるジュニアの大会だ。
 昨日の1回戦、私はサムライTV『S-ARENA』出演があったため、残念ながら第6試合の外道vs飯伏幸太の途中で会場を出なければならなかったが、それまでの5試合はいずれも好試合だった。ジュニアの選手はヘビー級の選手に比べると体が劣るため、それを補うべく自分のスタイルを確立しているし、キャラも立っている。こういう対抗戦的大会になると、各選手の技術はもちろん、どちらがキャラを印象付けられるかという勝負もあるし、当然ナマの感情も出るから面白くないわけがないのだ。
 そんな中で私の印象に残ったのは田口隆祐に敗れたGENTAROと、邪道に逆転勝利した男色ディーノだった。
 大学に入ったばかりの時に両国で第1回大会を観戦したというGENTAROは、今ではインディー・ジュニア界のエース。インディペンデント・ワールド・ジュニアヘビー級王者に君臨している。
 私がGENTAROを初めて観たのは01年あたりだと思うが、その頃はブレット・ハートとショーン・マイケルズをミックスさせたような、いかにも学生プロレス出身というレスラーだった。だが、キャリアを重ねていく中で上っ面の華やかさではなく、試合の組み立てや流れを重視する職人肌のレスラーになっていった。昨日の田口戦でも足殺しから入って自分のリズムを作り、要所で派手な技も盛り込むという巧さを発揮してくれた。田口も巧いレスラーだから、ジュニアらしい試合の中にもオールドスクールな匂いがあった。敗れはしたものの、インディーファンも納得できたのではないか。
 男色ディーノは入場から大暴走。客席に雪崩込んで男性客を襲い、それをメイド服を着た佐藤光留らベルト・ハンター×2のメンバーが慌てて制止するというDDTお馴染みの場面を新日本の会場でもやってのけたのである。私のリアルジャパン実況の清野アナウンサーを襲ったのも笑えたし、もちろん尾崎リングアナはディーノの好み。いきなりディープ・キス攻撃だ。
 さて試合は、邪道が密着戦は避けようと水平チョップ・オンリーのファイト。そして場外戦ではイスで思いっきりぶっ叩く。イスでメッタ打ちにされれば「ア~ッ!」とどさくさまぎれに男性客やテレビ解説の柴田惣一氏に抱きつき、胸がミミズ腫れになっても、あのキャラを崩さないのはディーノのプロフェッショナル根性。
 一方の邪道もディーノに付き合わず、男色ナイトメアをサッとすかし、ファイト1発!にもノーリアクション。客席から「邪道、付き合ってやってくれ~」「ディーノ、今日はヤバイ!」などの声も飛んだが、それくらい邪道が頑なに突き放したからこそ、試合が茶番にならなかったのだろうし、ディーノに声援が傾いたのだと思う。
 そして大逆転劇。それまで何も通用しなかったディーノだが、ディープキス(男色ベーゼ=リップロック=一応、技)からゲイ道クラッチ(外道クラッチ)! 何と邪道の兄弟の必殺技で勝利したのだ。
 試合後もディーノは舌好調で「新日本ジュニアをナメるなって、ナメるわよ! だってナメられて、大きくなって、カタくなっていったんでしょ。このスーパー・ゲイ・カップの参加16人中14人はゲイね。兄弟とかアニキとか獣の神とか、隠語を読み解いていくのも必要ね。こうなったら全部のタマを集めて願い事を叶えるわ!」と、いつの間にやら違うジュニア大会の話みたいになってしまった。
 ただ、この試合を観ていた山本小鉄さんは激怒したという。さあ、ディーノ、今日のデヴィットとの2回戦はどうする?
 さて、後楽園を途中で抜けて駆けつけた『S-ARENA』についても触れておきたい。昨日のゲストは27日に引退するJWPの日向あずみ。96年5月18日、大田区体育館で行われた『第1回ジュニア・オールスター戦』で田村欣子vs日向あずみの全日本ジュニア戦がベストバウト賞を獲得したが、この賞を贈ったのは、当時週刊ゴング編集長だった私だった。
 今では男子プロレスと女子プロレスの違いがハッキリしないが、日向のファイトには男子にはない女子プロならではの美しさがあるし、15年間、体型を維持してきたのも凄いと思う。ファイトとは裏腹なホンワカした語り口、性格も魅力だった。
 27日、悔いのないファイトでプロレス人生をまっとうしてくれることを願っている。

週プロの…

 昨日の夜は週刊プロレスの忘年会に呼んでいただいた。増刊号や週プロ本誌で何度か原稿を書かせてもらい、今は週プロモバイルで毎週日曜日に『サンデー・小佐ポン』を連載しさせてもらっているが、昔を思うと週プロの忘年会にいるというのは不思議な感覚だったし、何だか感慨深いものがあった。
 私の先生のひとりでもある宍倉清則顧問、現在は週プロで活躍している元週刊ゴングの記者やカメラマンもいて、何だか同窓会的な要素もあった忘年会。佐久間編集長が『Sアリーナ』出演のために一次会で抜けたので、キャスターの三田さんらサムライTVスタッフを連れて戻ってくる三次会まで参加。最近、こんなに長時間飲んだことはなかった。
 かつて週刊ゴングと週刊プロレスは鎬を削っていた。それは当然のことだが、でも根っこでは両誌のスタッフに共通した想いはプロレス界を盛り上げたいということ。だから同志、戦友という意識もあった。プロレスを愛する者同士として、取材記者時代は出張先で結構一緒に飲んだものだった。今、属する場所がなく、フリーの立場で独自に活動している私を週プロの人たちが『プロレス・マスコミの同志』として見てくれているとしたら、本当に嬉しいことだ。
 昨日は楽しい時間を過ごせました。ありがとう!

新刊発売

 明日21日、草思社から『プロレスは生き残れるか』という本が発売される。著者はルポライターの泉直樹氏。
 同書は三沢光晴さんの事故からプロレスを考えたもので、平成プロレスはなぜ過激化したのか、プロレスラーはなぜ引退できないのか、興行スポーツとしての問題点、次世代レスラーの作り方、社長レスラーの条件、新たなビジネスモデルとは…など、丹念な調査と取材によって分析している。
 取材には私、全日本プロレスの武藤敬司社長、内田雅之常務取締役、世界ジュニア・ヘビー級王者であると同時に若手のコーチでもあるカズ・ハヤシ、ゼロワンを始めとして様々な団体で試合を裁く笹崎勝己レフェリー、様々な団体でリングドクターをやっている林督元氏が協力した。
 著者の泉氏は、私の古くからの友人の知り合いということで協力させていただいた。元々、プロレスファンだったというが、私のようなプロレス村の住人ではない。プロレス村の外の人間の取材、視点というのも業界にはプラスになるはずと思う。ぜひ、御一読願いたい。
PS.1月22日、後楽園ホールで全日本と大手AVメーカーのエスワンとコラボ興行をやることに対して不快感を示し、私の感想を求めるコメントがあった。 実際、どういう興行になるかは現時点ではわからないが、私自身は武藤敬司を信頼している。
 今、プロレスを少しでも世間に広めるためには、様々な分野とのコラボもひとつの戦略であり、武藤・全日本はお笑い芸人を取り込んだF-1を継続しているし、かつてはプレイボーイ・チャンネル、腐男塾とのコラボもあった。少なくとも、今までのコラボ興行はきちんとした武藤ワールドになっていて、恐らく会場に足を運んだファンで不快感を持った人はそんなにいないと思う。確固たるプロレス観を持ち、自分が提供するプロレスに自信がある武藤だからこそ、他ジャンルとコラボが出来るのだと私は思う。そうでなければリスクのあることには手を出せないだろう。
 まずは1・22後楽園での全日本のお手並み拝見ということで、議論するのはその後のことだと私は考えています。武藤敬司はプロレスを、日本のプロレス界の未来を深く考えている男ですよ。