新たな戦いの始まり

 どんなに深い悲しみがあろうともプロレス界は動いていく。それを感じさせてくれたのが昨日の後楽園ホールにおける『ザ・グレート・サスケ20周年突入ツアー』開幕戦だった。
 試合前にはみちのくプロレス旗揚げ時からレフェリーとして、裏方として尽力したテッド・タナベさん、そして三沢光晴さんの追悼セレモニー。その前にはみちのく旗揚げの頃、テッドさんと喧嘩ばかりしていた気仙沼二郎が「テッドさん、今日も一生懸命戦います。観ていて下さい」と『俺の海』を熱唱した。
 そして試合になれば、テーマは世代闘争。普段は敵対している正規軍と悪のユニット九龍が合体してサスケ、人生、かつてみちのくを盛り上げたレジェンドたちに挑むというのが今回のツアーのコンセプトだ。
 第2試合にはサスケの師匠ウルティモ・ドラゴンがサプライズ参戦してヤッペーマン1号&2号と合体し、大柳&日向寺&梶原と対戦。ウルティモがアサイDDTでかつての教え子・大柳を仕留めた。闘龍門2000プロジェクト(T2P)としてデビューしながら家庭の事情で一度はリングを去っていた大柳が思わぬ形での師匠との対戦に感激していたのが印象的だった。
 第3試合では、みちのくOBのTAKAみちのく&メンズ・テイオーが沼二郎と合体してラッセ&南野&まぐ狼と対戦。沼二郎がまぐ狼にプランチャ、テイオーが南野にテイオー・ロックを決めている間にTAKAがラッセをみちのくドライバーⅡで仕留め、レジェンド軍の完勝だ。
 10日前にサスケとのSTRONG-K戦をテッドさんに裁いてもらったTAKAは「俺らはまだ負けられないよ。テッドさんは最後まで戦い抜いたんだから、まだまだ若い者には負けない。俺と大塚さん(テイオー)は飛び出しちゃったけど、こうして生え抜きの沼二郎は頑張っているし、今日の東北ジュニアもサスケに獲ってもらって、俺はサスケvs沼二郎が見たい。いつまで最前線でできるかわからないけど、若い選手たちの壁になるのが俺たちの役目。若い奴らは勢いがあるけど、こっちには経験と絆がある」と涙ながらに語ったTAKA。テイオーは「今日はノーコメントで…」と言い残して控室に消えた。
 セミの人生&タイガーマスク&ディック東郷vs佐藤兄弟&野橋も佐藤兄弟にタイガーが卍固め、東郷がクロスフェースを決めている間に人生が野橋に極楽固めというレジェンド軍の圧勝。
 会場のムードもテッドさんのことがあっただけにレジェンド軍を完全に後押し。メインの東北ジュニア戦ではサスケのセコンドにウルティモ、TAKA、テイオー、東郷、沼二郎が付き、ハッピーエンドへのお膳立てはすべて揃った。しかし、ここに現実を突きつけたのはキャリア5年弱、22歳の若き王者フジタ“Jr”ハヤトである。
 試合はお互いに足を極め合うなどのシビアな攻防に。先日のTAKA戦で敗れながらも復活の兆しを見せたサスケはシリアス・ファイトで若き王者に迫ったが、結果的にハヤトはそれを振り切った。最後は左右のハイキックからヘルム(顔面への膝蹴り)! ハヤトは時計の針をキッチリと進めてみせた。
 試合後には新局面が生まれた。まずは「あと10年はやろうと思います」というサスケの決意表明に大きな拍手が起こり、続いてマイクを取った社長の人生がハヤトに「お前にとってひとつ足りないものは鎬を削るライバルだよ」と語りかけ、そこに昨年3月にデビューして1年前に修行の旅に出て消息を絶っていた拳王が出現。
「どんな挑戦者が来てもよ、最後に勝つのは俺だ。別に今日勝ったからって世代交代したなんて思ってねぇよ。でも、これからのみちのくプロレスは、このフジタ“Jr”ハヤトが世界一熱くて、世界一面白いプロレス団体にしてやる。これからの俺たち九龍、そしてフジタ“Jr”ハヤトに付いてこい!」と絶叫した若き王者は、サスケの「チャンピオンベルトはちゃんと腰に巻け!」という忠告を受け入れたかのように、チラッとだけベルトを腰にすると、すぐに再び肩に掛けた。
 ツッパっている王者はこれでいい。心の奥底でサスケや先人たちへのリスペクトがあればいいのだ。リングに上がれば容赦なく叩き潰すのみである。
 王者ハヤトの勝利によって真のスタートを切ったと言っていい世代闘争、そして拳王という新たな力の出現…みちのくプロレスは新時代に突入した。

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