諦めない気持ち、折れない心

 03年以来となる大日本プロレスの最侠タッグリーグは波乱の連続だった。優勝候補のBJWタッグ王者・関本大介&マンモス佐々木は、マンモスが2月28日、車で信号待ちしているところで横から追突されて頸椎挫傷の事故。関本のパートナーはリーグ戦序盤で田中将斗に変更になり、タッグ王座は返上。同リーグ戦は新タッグ王座も賭けられることになった。さらに3月に入って沼澤との045邪猿気違’Sで参加していた葛西純が右膝前十字靱帯断裂及び半月板損傷で欠場に。
 紆余曲折を経て決勝戦は宮本裕向&佐々木貴vs伊藤竜二&石川修司に決定したが、その直後の5・9四日市大会のデスマッチで伊東が負傷。その時の模様はサムライTV『S-ARENA』の映像で見た。ロープに振られて蛍光灯に激突…という一見、普通の攻防だったにもかかわらず、変な角度で破片が刺さったのか、脇腹から背中にかけて大流血、しかも肉片が飛び出すという凄惨な事故だった。これだからデスマッチは怖い。どんなデスマッチをやっても欠場しないのがプロという信念を持つ伊東にとって、これは痛恨のアクシデントだった。
 結果、昨日の後楽園における決勝戦は準決勝で伊東&石川に敗れている木高イサミ&竹田誠志が繰り上がる形で宮本&佐々木と対戦することに。竹田については3・26後楽園で宮本&佐々木に勝った試合に触れて、このダイアリーで『大日本に新スター誕生の予感』として書いたが、またまたやってくれた。
 観客は試合開始と同時にイサミ・コール、タケダ・コールで若いコンビを後押し。ここ最近のイサミと竹田の頑張りがちゃんと大日本のファンの心に届いている証拠だ。勢いに乗る2人は序盤、攻めに攻めたが、2人の真価が発揮されたのは10分過ぎ、竹田がつんのめるように蛍光灯タワーに激突して背中から大流血、戦闘不能状態に陥ってからだった。
 竹田をかばうように細いイサミが孤軍奮闘、そして竹田も止血して試合にカムバック…30分時間切れにまで持ち込んだのである。
 この試合は決勝戦だから決着をつけなきゃいけない。時間無制限1本勝負の延長戦に突入した時点では、キャリアのある宮本&佐々木の方に余力が残っているように見えた。しかし、それを上回ったのは若い2人の“諦めない気持ち”と“折れない心”、そして他のデスマッチ・ファイターとはちょっと違う2人のスタイルだ。
 竹田がボブワイヤーボードでサンドイッチにした佐々木の上めがけて宮本をジャーマンで叩きつけ、さらに宮本をラダーの上に国体スラム、佐々木にはラダーの上にジャーマン、そしてイサミがラダーの上から宮本にダブル二―ドロップwithチェア、とどめは竹田が宮本にドラゴン・スープレックス! 竹田のSTYLE-E仕込みの技とイサミの空中技が巧く融合、そして何より2人の心の絆が大きな勝利をもたらした。竹田はデスマッチ王者・宮本に2連勝である。
「勝因はデスマッチが大好きなことです! 諦めなきゃ、こういう形がついてくるんです。プロレスに限らず、諦めなければ何かがあると思う。今日は人生で最高の日です」(イサミ)
「何度も心が折れそうになったけど、木高さんが頑張ったから獲れました。これからは俺たちが時代を変えます。文体(7・12横浜文化体育館)では宮本裕向のデスマッチ・ヘビー級王座に挑戦します」(竹田)
 イサミは何度も「諦めない」という言葉を口にした。振り返れば、イサミはちょうど2年前に頸椎椎間板ヘルニアで医師から引退を勧告された。そこで諦めていたら昨日の“人生で最高の日”はなかった。だからこそ、重みのある言葉だ。そして竹田には2年前の宮本のような勢い、追い風がある。
 この2人は、6・29後楽園ではタッグリーグで当たっていない045邪猿気違’Sで対戦する。また同大会では伊東が宮本&佐々木絡みの復帰戦を行う予定になっている。そして7・12横浜文体のビッグマッチでは宮本vs竹田のデスマッチ・ヘビー級戦が決定。
 この春、大日本はアクシデント続きだったが、その中でもこうして若い力が台頭してきたのは頼もしい限り。昨日、大日本は新たな扉を開いた。

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