新時代の息吹

 昨日は後楽園ホールで全日本5月シリーズ開幕戦、そしてディファ有明でKENTAプロデュース興行のダブルヘッダー。そこで目撃したのは若い力の台頭、新しい時代の息吹だった。
 全日本では今シリーズから総合格闘家に転向していた河野真幸が4年ぶりにプロレス復帰。これに若手陣が敏感に反応した。第4試合で真田&征矢vsKAI&大和という07年デビュー組のタッグマッチが行われたが、これが昨日の大会で一番沸いた試合。特にKAI&大和はF4として売り出され、真田はチャンピオン・カーニバル出場という中にあって、後塵を拝している印象が強い征矢が闘志を剥き出しにしたから試合はヒートアップ。4選手はバチバチとやり合い、最後は征矢が若手のトップを走るKAIを垂直落下式デスバレーボムでねじ伏せた。
「これは俺たちにしかできない試合だと思います。今日は第4試合だったけど、試合を重ねるごとにメインに近づきたいと思います。今まで取り残されていたけど、そんなに差はないことを見せつけたかった。これからチャンスがあると思うんで」と征矢。それはKAI、大和、パートナーの真田に向けられた言葉であるのはもちろん、出戻りの河野を意識していたのは明らか。時の流れは速く、征矢は20日の熊本・興南大会で、真田は5・22鹿児島大会で河野と一騎打ちを行うが「接点がない」(征矢)「ナマで試合を観たことがない」(真田)という。2人とも“入門前の先輩”にこの2年をぶつける覚悟だ。
 メインの武藤&河野vs小島&諏訪魔では河野が小島を雪崩式の飛びつき腕ひしぎ十字固めで仕留める大金星を挙げたが、内容的には小島&諏訪魔が河野を圧倒した。河野の実質的なプロレス・キャリアはデビューした03年3月から右肩を負傷して1年2ヵ月もの長期欠場を強いられることになった04年3月までのわずか1年。ハッキリ言って新人と変わらないだけに小島&諏訪魔に太刀打ちできるはずがない。まだ体はプロレス仕様になっていないし、打撃への耐久力ができていない。プロレス復帰というよりも、今デビューしたのと変わりがないのだ。
 だが、私は河野に期待している。03年3月にデビューした当時、192センチの恵まれた体を持ち、コーチ役だったケンドー・カシンに徹底的に鍛え上げられた河野は“全日本の将来のエース”にふさわしい基礎を持っていた。もし右肩の怪我がなければ諏訪魔より早く三冠王者になっていたかもしれない。昨日の試合では敢えて総合の技術を封印してプロレスに専念していたのも好感が持てた。フィニッシュは総合の技術を出したというよりも、カシンに教わったものが咄嗟に出たのではないかと思う。
 とりあえず勝ったが「ショッパイのはわかっています」と唇を噛んだ河野。ようやくプロレスラーとしてスタートラインに立ったことを実感したのではないか。
 そしてKENTAプロデュース興行でも若い力が弾けた。潮﨑との一騎打ちで“ヘビー級の逸材”として05年12月のデビュー当時から期待されていた谷口周平が弾けたのだ。
 国体3度優勝の経歴を持ち、素材的には申し分ない谷口だが、根が器用ではないのか、なかなかプロレスに馴染めない印象のまま今まできたが、先の『グローバル・タッグリーグ戦09』では肉体改造で体を絞り、髪を金髪に染めてイメージチェンジ、パートナーの秋山のリードもあってか、吹っ切れた感じだった。特に開幕戦の4・11後楽園における三沢&潮﨑との公式戦では潮﨑相手にストレートに感情を爆発させた。それがあっての昨日の一騎打ちである。潮﨑のチョップに退くことなくエルボー、タックルで前に出て、ナチュラルなパワーで押しまくった谷口。最後は鉄柱で頭をカチ割られ、ゴーフラッシャー、ラリアット、ムーンサルトの畳みかけに屈したが、帰国してから勢いに乗る潮﨑にまったく余裕はなし。谷口は互角といっていい頼もしいファイトを見せてくれた。ここから谷口がもうワンステップ上がったら…ノアの未来は本当に面白くなると思う。
 メインの秋山vsKENTAのヘビー級vsジュニア・ヘビー級王者対決はノアの頂点に立つ者同士の大勝負だった。ノアの現状を打破するべく、このカードを考えたプロデューサーのKENTAはキックの嵐で序盤は圧倒、試合後に秋山は「立ち上がるのも俺より早いし、スタミナも俺より上。俺は意地しかない。気持ちだけですよ。出せるもの、全部出したね。あんなに蹴られたのは川田さん以来ですよ」と語っていたが、それほどKENTAの攻撃は凄かった。
 もちろん秋山の反撃も半端ではなかった。花道で垂直落下式ブレーンバスターを決めるや、雪崩式バックドロップ、ジャンピング・ダブルアームDDT、ダイビング延髄エルボー…と、徹底した首攻撃。最後はリストクラッチ式エクスプロイダー、変型スターネスダストαで29分14秒の熱闘を制した。
 王者対決はリスクも背負っていた。この試合の内容でノアという団体の評価が下されてしまうからだ。だが、両王者にはきっと「俺たちの試合を見てくれ! これが今のノアだ!」という自信と気概があったはず。だからこそシビアな展開になったし、シビアさの中には「お前はどんな覚悟でノアを引っ張っていくんだ!?」というお互いの問いかけもあったと思う。秋山もKENTAも荒波を行く箱舟の舵取りにふさわしい男だと確信できた戦いだった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です