『キン肉マニア2009』で感じたこと

 昨日、JCBホールで開催された『キン肉マニア2009』は、まったく新しいタイプのイベントだった。スクリーンを使ってアニメの『キン肉マン』と実際のリングがコラボして、まさに虚実入り混じったファンタジーの世界がそこにあった。
 以前、書いたように私はキン肉マン世代ではないが、上映された『ファンが選ぶキン肉マン・ベスト5』の煽りVは、あの佐藤大輔氏の制作だけに「今まで詳しくなかったけど、キン肉マンを観てみたい!」と思わせる内容。
 そして超人とプロレスラーがタッグを結成しての6人タッグ・トーナメント、キン肉マンvs子供の頃からキン肉マンに憧れていた美濃輪育久(敢えてミノワマンではなく本名で出場)の試合は、超人に扮していたレスラーたちがキャラクターをキッチリと押さえていたようで観客の反応も上々。きっと「キン肉マンと実際のプロレスラーが戦ったら、どうなるんだろう?」と子供心に思っていたファンにとっては夢のイベントだったのではないだろうか。
 この模様は6月13日、午後11時からサムライTVで放映される。実際にその眼で確かめていただきたい。また無粋になるので超人に扮したレスラーの名前はここでは明かさないが、自身の眼でチェックするのも面白いかも。
 この『キン肉マニア2009』を観て、今後、プロレスと他ジャンルのコラボ・イベントは増えていくんじゃないかと感じた。それはプロレスファンの拡大につながる可能性があるのでいいことだと思うが…もしもコラボ・イベントがプロレスの主流になってしまったら、それは寂しいこと。やはり純プロレスがしっかりしていてこそのコラボ・イベントであるべきだと思う。

諦めない気持ち、折れない心

 03年以来となる大日本プロレスの最侠タッグリーグは波乱の連続だった。優勝候補のBJWタッグ王者・関本大介&マンモス佐々木は、マンモスが2月28日、車で信号待ちしているところで横から追突されて頸椎挫傷の事故。関本のパートナーはリーグ戦序盤で田中将斗に変更になり、タッグ王座は返上。同リーグ戦は新タッグ王座も賭けられることになった。さらに3月に入って沼澤との045邪猿気違’Sで参加していた葛西純が右膝前十字靱帯断裂及び半月板損傷で欠場に。
 紆余曲折を経て決勝戦は宮本裕向&佐々木貴vs伊藤竜二&石川修司に決定したが、その直後の5・9四日市大会のデスマッチで伊東が負傷。その時の模様はサムライTV『S-ARENA』の映像で見た。ロープに振られて蛍光灯に激突…という一見、普通の攻防だったにもかかわらず、変な角度で破片が刺さったのか、脇腹から背中にかけて大流血、しかも肉片が飛び出すという凄惨な事故だった。これだからデスマッチは怖い。どんなデスマッチをやっても欠場しないのがプロという信念を持つ伊東にとって、これは痛恨のアクシデントだった。
 結果、昨日の後楽園における決勝戦は準決勝で伊東&石川に敗れている木高イサミ&竹田誠志が繰り上がる形で宮本&佐々木と対戦することに。竹田については3・26後楽園で宮本&佐々木に勝った試合に触れて、このダイアリーで『大日本に新スター誕生の予感』として書いたが、またまたやってくれた。
 観客は試合開始と同時にイサミ・コール、タケダ・コールで若いコンビを後押し。ここ最近のイサミと竹田の頑張りがちゃんと大日本のファンの心に届いている証拠だ。勢いに乗る2人は序盤、攻めに攻めたが、2人の真価が発揮されたのは10分過ぎ、竹田がつんのめるように蛍光灯タワーに激突して背中から大流血、戦闘不能状態に陥ってからだった。
 竹田をかばうように細いイサミが孤軍奮闘、そして竹田も止血して試合にカムバック…30分時間切れにまで持ち込んだのである。
 この試合は決勝戦だから決着をつけなきゃいけない。時間無制限1本勝負の延長戦に突入した時点では、キャリアのある宮本&佐々木の方に余力が残っているように見えた。しかし、それを上回ったのは若い2人の“諦めない気持ち”と“折れない心”、そして他のデスマッチ・ファイターとはちょっと違う2人のスタイルだ。
 竹田がボブワイヤーボードでサンドイッチにした佐々木の上めがけて宮本をジャーマンで叩きつけ、さらに宮本をラダーの上に国体スラム、佐々木にはラダーの上にジャーマン、そしてイサミがラダーの上から宮本にダブル二―ドロップwithチェア、とどめは竹田が宮本にドラゴン・スープレックス! 竹田のSTYLE-E仕込みの技とイサミの空中技が巧く融合、そして何より2人の心の絆が大きな勝利をもたらした。竹田はデスマッチ王者・宮本に2連勝である。
「勝因はデスマッチが大好きなことです! 諦めなきゃ、こういう形がついてくるんです。プロレスに限らず、諦めなければ何かがあると思う。今日は人生で最高の日です」(イサミ)
「何度も心が折れそうになったけど、木高さんが頑張ったから獲れました。これからは俺たちが時代を変えます。文体(7・12横浜文化体育館)では宮本裕向のデスマッチ・ヘビー級王座に挑戦します」(竹田)
 イサミは何度も「諦めない」という言葉を口にした。振り返れば、イサミはちょうど2年前に頸椎椎間板ヘルニアで医師から引退を勧告された。そこで諦めていたら昨日の“人生で最高の日”はなかった。だからこそ、重みのある言葉だ。そして竹田には2年前の宮本のような勢い、追い風がある。
 この2人は、6・29後楽園ではタッグリーグで当たっていない045邪猿気違’Sで対戦する。また同大会では伊東が宮本&佐々木絡みの復帰戦を行う予定になっている。そして7・12横浜文体のビッグマッチでは宮本vs竹田のデスマッチ・ヘビー級戦が決定。
 この春、大日本はアクシデント続きだったが、その中でもこうして若い力が台頭してきたのは頼もしい限り。昨日、大日本は新たな扉を開いた。

ハッスルについて

 今日はお約束通りにハッスルについて書く。まず、私がハッスルを肯定…というよりも興味を持ったのは、その出発点がPRIDEを主宰するDSEが手掛けたことだった。PRIDEという勝負論のみのイベントを突き詰めた会社だけに、勝負論だけではないプロレスにPRIDEとは違った可能性を感じたのだろうというのが私の見方だった。
 ただ、そのスタート時に髙田延彦の『泣き虫』が出版されたことで「ひょっとしたらプロレス潰しかも…」と疑念が生じたのも事実。しかし、その後、プロレスファンの冷やかな視線を浴びながら髙田総統というキャラに真面目に取り組み、やり切る姿を見て、髙田のハッスルに賭ける覚悟を感じた。私がハッスルを肯定するようになったのきっかけは髙田総統というブレないキャラの出現からだったと思う。
 さて、問題の素人=タレントがリングに上がることだが、その技術面は素人なのは当然として「ジャンルは違っても、狂言もプロレスも失敗が許されてない真剣勝負の世界に変わりありません」と語っていた狂言師・和泉元彌に好感を持ったし、素顔とはまったく違ったインリン様に同化し、イメージを守るためにリスクを承知でピンヒールでリングに上がったインリンにプロ根性を感じた。プロレスには格闘技性、技術、勝敗、いろいろな要素があると思うが「人に勇気を与える」「人を感動させる」というのも大きな要素。その意味では泰葉にしても、試合自体は虚構だとしても、その虚構の中に“泰葉の本当”が見えたから、私は感じるものがあった。それを「プロレスではない!」と言われれば、それまでなのだが。
 HGとRGについてはレベルはともかくとして、これはもうプロレスラーという括りで見ている。シンに流血させられ、天龍や川田にボコボコにされてもリングに上がり続けたRGという存在も、私がハッスル肯定派になった要因だ。
 以前、ハッスルの山口社長は「成功した人たちは稽古の賜物だと思っています。やり直しがきかないナマの舞台で、お客さんに四方八方から見られる緊張感を知っている人は伸びていくし、TVタレントとして編集に慣れている人はダメですね。どっかでやり直しがきくとか、ライブの怖さを知らない人たちは対応しきれないですよ」と言っていた。闇雲にタレントを起用しているのではないのだ。
 本音を言えば、私もタレントがリングに上がるのに抵抗はないとは言わないが、ハッスルに上がる人たちはプロレスを舐めていないし、プロレスラーを同じパフォーマーとしてリスペクトしていることは確か。プロ意識という点ではプロレスラーと同じだけのものを持っているから、彼らのリングに上がる気概を素直に認めている。
 さて、昨日のハッスルだが、久々のハッスルは明らかにこれまでとは違っていた。第1試合の越中&KGvsレイ大原&赤鬼蜘蛛は純然たるプロレスの試合。特に去年の10月にデビューしたKGの成長には目を見張るものがあった。小路晃に格闘技を、TAJIRIにプロレスを叩き込まれているだけあって、タイミングが良くなったし、蹴りに頼らなくなったことでレスラーとしての魅力が出てきた。
 第2試合の坂田亘と小路二等兵のシングルマッチは、小路の今後のストーリーに沿った試合ではあったものの、序盤はリングス出身の坂田と格闘家・小路らしくグランドの攻防、サブミッションの攻防で見せてくれた。第3試合の天龍&RGvsモンスターHG&パンチ・ド・Cはお笑いテイストを盛り込んだ試合だが、イベントの味付けとしては良かったのではないか。
 セミの川田vsボノくんは5分19秒で川田が勝つという短期勝負に客席から「エーッ!?」という声が上がった。だが、この試合は川田もボノも、激しさを全面に出したかったのではないかと思う。
 メインのマグナムTOKYO&TAJIRIvsボナパルト&ケイドは「プロレスだなあ」と思わせてくれる試合だった。もちろん昔と今ではスタイルも、飛び出す技も違うが、日本人vsラフな大型外国人のタッグマッチは懐かしさを感じさせてくれるものだったし、テクニックvsパワーという試合は理屈抜きに面白かった。個人的にはマグナムが本来の輝きを取り戻してイキイキと試合していたのが嬉しかった。スポーツ・エンターテインメントとしてはカッコイイ、華のあるスターが必要。その意味でマグナムはハッスルの新エースにふさわしい。
 以前のハッスルは“格闘技とは違う勝負論だけではない面白さ”を意識するあまり行き過ぎることも多かったし、お笑いの間にプロレスがあるという印象が強かったが、昨日の大会を観ての感想は、もちろんお笑いやストーリー展開があっても、あくまでも中心はプロレスだったということだ。
 髙田総統は7・26両国における『ハッスルエイド』でのアルマゲドンを予告しているが、ハッスルは確かに新段階に入っている。この両国を境にハッスルがどういう方向に進んでいくのか注視しなければならない。
P.S. 大阪プロレスのサスケ&アジアン・クーガーvsタイガースマスク&ブラックバファローの鉄人寸劇についてどう思うかという書き込みに答えていなかったので、ここで書こう。あの試合には私も感心できまなかった。タイガースとバファローはヒールであってもお笑いテイストを持ち合わせているから試合の味付け程度ならアリだと思うが、あの試合はちょっとやり過ぎ。4選手共、いいモノを持っていて、ちゃんとやればいい試合になるはずだけに残念! 最近はトンパチぶりばかりが目立つサスケだが、そろそろシリアス・バージョンも見たいというのが正直な気持ちだ。

キン肉マニア2009に期待感!

 昨日のサムライTV『S-ARENA』には5・29JCBホールでの『キン肉マニア2009』を目前に大会実行委員長の原作者ゆでたまごの嶋田隆司氏と同イベントの構成を手掛けるマッスル坂井がゲストとして登場してくれた。
 私は嶋田さんとちょっと縁があって、その昔、天龍さんたちを交えての飲み会で何度も同席していた。昨日は十何年かぶりにお会いしたことになる。だが、失礼ながら私はキン肉マン世代ではない。生誕30周年ということは、私が18歳の時にスタートしたということ。もう漫画は卒業している年齢だ。ちなみに私の年齢だと、モロに影響を受けた漫画は『巨人の星』『あしたのジョー』『タイガーマスク』…梶原一騎世代なのだ。そうそう、高校時代には少年マガジンの『1・2の三四郎』を読んでいた。で、私の相方の三田佐代子さんも残念ながらキン肉マン世代より、ちょっと上になってしまう。惜しい!
 という状態での番組だったが、いろいろ話を聞いてみると面白そうなイベント。中西学、永田裕志、大森隆男らがキン肉マンに出てくる超人たちとトリオを組んで6人タッグ・トーナメントに出場するというのである。嶋田さんは何かにつけてマッスルの発想に「インディー臭い!」とダメ出ししていたが、これはかなりのメジャー感。ただし、6人タッグ・トーナメントには男色ディーノも出場、またこのトーナメントは、かつてのIWGPの世界予選のようにすでに世界各地でスタートしており、それに勝ち上がってきたチームがJCBホールの決勝トーナメントに出場するというあたりは、ちょっとインディー臭いかも。でも、ディーノと中西、永田の絡みはぜひ見てみたいものだ。さらに嶋田さん、マッスルともに明言はしなかったが、キン肉マンとミノワマンのスペシャル・シングルマッチもほぼ確実。
 キン肉マンそのものをよく理解していなかったために、それまではどんなイベントになるのかイメージできなかったが、何だか期待感が湧いてきた。きっとキン肉マンのファンならもっとワクワクするのだろう。
 先日は全日本とアイドル(腐男塾)のコラボ・イベントが話題になったが、一世を風靡して未だに根強い人気を誇る(らしい)キン肉マンとプロレスのコラボは世間的にも注目されている。これもまた、プロレスの新たな可能性を探るイベントになるだろう。
「プロレスを知らないキン肉マン・ファン、キン肉マンを知らないプロレス・ファンも楽しめるイベントにしますよ」とは嶋田さんの言葉。嶋田さん、マッスル、期待してますよ!

15年の重み

 Gスピリッツ第12号の発売日が6月26日(金)に決定! ということで俄然、取材&原稿書きが忙しくなり、さらに他の仕事も重なって23日のハッスル草加大会は断念。27日の後楽園大会には顔を出すので、約束していたハッスルについては27日を観てから書きたいと思う。
 で、昨日は新宿FACEでIWAジャパンの15周年記念大会。プロレス団体で15年も続いているのはハッキリ言って凄い。国際プロレスは足掛け14年、あの日本プロレスだって19年で歴史に幕を閉じているのだ。
 ビルの前には長蛇の列。試合開始は6時の予定だったが、結局30分押しになってしまった。普通、試合開始時間が押すのは客入りが悪い時だが、昨日はその逆。新宿FACEに行くエレベーターが2基しかなく、お客さんが入り切るまで試合開始時間を延ばしたというわけだ。
 バックステージではレスラーもマスコミも懐かしい顔がいっぱい。元週刊プロレス編集長の浜部さんも顔を出していたし、今はプロレスの取材をしていない人たちも。「いやあ、俺がIジャを取材していた頃は…」などという話で盛り上がった。選手では鶴見五郎さんや剛竜馬さんと久々に再会。またカードに組まれていない先週もチラホラいたが、その謎は試合が始まってから解けた。
 第2試合のウルトラセブン&タイガー・ジェット・シンジュク(懐かしい!)vs河童小僧&ヘルアント・マシン2号ではセブン&シンジュクのマネージャーとしてMAYA姉さんがムチを手に登場! シンジュクがマスクを脱ぐと…その下から現れたのはK-DOJOのYOSHIYA。Iジャのファンにしてみれば山下義也だ。
 第3試合では市来貴代子vsさくらえみが13年ぶりに実現。さくらには「元川!」という声援が飛ぶ。そう、さくらえみは、Iジャのファンにとってはいつまでも元川恵美である。Iジャの女子と言えばいじめっ子の市来vs泣き虫・元川が定番だった。試合開始前、まともに市来の顔を見ることができない元川…いや、さくら。顔を踏みにじられ、両手を踏まれて半べそをかき、反撃に転じてもまともに市来の顔を蹴ることができないさくら。やはりトラウマがあるのか!? それでも、さくらは過去を払拭するようにバックドロップ、フットスタンプ…と、途中から今現在のファイトを見せ、最後はミサイルキックで勝利。試合後はさくらから市来に握手を求め、深々と礼。市来の笑みも印象的だった。
 第4試合の維新力&浅野社長&ジェイソン・ザ・テリブルvsビッグフット&雪男&ハル・ミヤコのIWA浅野ジャパンvsUMA軍という現在進行形の試合でもサプライズが。場外乱闘の中、ジェイソンの中身がターザン後藤に入れ替わったのだ。後藤の姿に一度は嫌悪感を示した浅野社長だったが、途中でガッチリ握手! だが、最終的にはまたも後藤に裏切られるというオチが待っていた。
 メインは『IWAの現在、過去、そして未来』と銘打たれた6人タッグマッチ。現在のエース、松田慶三とキャリア2年の小部卓真がTAJIRI(田尻義博)と組んでブラックバファロー(山田圭介)&シャドウWX(志賀悟)&三宅綾と激突。まさに過去から未来につながる試合だ。立会人は咽頭がんを克服して7月にIジャで復活するスティーブ・ウイリアムスが務めた。
 この試合で印象的だったのは、Iジャが存亡の危機に立たされた時期に若社長兼エースとして頑張ったバファロー。その熱いファイトはまさしく山田圭介だった。
 その他、レフェリーとしてカブキさん、チョコボール向井、今は新日本でレフェリーをやっているマーティ浅見も参加。試合後はUMA軍、ターザン後藤を除いてノーサイドで記念写真に収まった。
 Iジャほど選手の移り変わり、路線の変更が多かった団体も珍しい。だが記念大会に縁のある選手がこれだけ集まったということは、みんなIジャでいい時期を過ごしたことがあるという証明だと思う。15年の重みを実感させてもらった1日だった。浅野社長、おめでとうございます。これからも楽しませてください!

ディック東郷の言葉

 一昨日の後楽園ホールにおける大阪プロレス10周年興行はバランスが取れた面白い大会だった。24年間、道頓堀に眠り続けていたというヨーネル・サンダースで始まったかと思うと、第2試合は小峠、原田、タダスケのブラッド&ガッツと火野&大石&旭のΩによるキビキビした対抗戦。そした再び菊タロー&勘十郎&ミラクルマンvsくいしんぼう&えべっさん&アップルのお笑い試合…という具合にメリハリが利いていた。
 秀吉&正宗の戦国タッグがドラゲーの望月&フジイに挑んだ一戦は新たな流れが生まれることを示唆するものだったし、2000年に大阪を離脱したディック東郷が参加して現大阪プロレス王者のビリーケン・キッドと対戦したというのは凄いこと。ビリーケンの大阪初登場は02年だからは、本来だったら実現するはずがないカードなのだ。
 結果はビリーケンが敗れた。記念大会のメインを締められなかったビリーケンは「大阪プロレスのチャンピオンとして絶対にこのままでは終わりません。次はタイトルマッチ…俺は絶対に逃がさない」と東郷を挑戦者に逆指名した。
 勝利した東郷は「離脱した時には2度と上がることはないと思っていたけど、これも運命。昔の大阪プロレスと今のプロレスは別物かって? 別物とは言わない。一番強い奴を決めようという部分とコテコテのお笑い…大阪プロレスとしての活動は変わっていないと思う。その中でチャンピオンにいるビリーの実力は評価していますよ。ベルト? 大阪プロレスのベルトそのものには興味がないけど、今までフリーとしていろいろな団体に上がってきて、その団体のベルトをほとんど獲ってきているわけだから、大阪のベルトも俺のキャリアに箔をつけるということで(タイトルマッチは)あり得る。ここからのストーリーは俺とビリーのものだから」と、ビリーを称えると同時に継続参戦を示唆。しっかりと両者の心は通じたようだ。そして印象に残ったのが次の言葉だった。 
「プロレスっていうのは昔も今もそんなに変わらないですよ。スタイルは流行り、廃りで変わるかもしれないけど、プロレスは変わらない」
 うーん、さすがディック東郷!

昨日のダイアリーへの反応

 昨日の『“プロレスラーではない者”がリングに上がることについて』に多くのコメントが寄せられた。「掲載していただかなくて結構ですが…」「ブログに反映して頂かなくても結構ですが…」というコメントも多かったので、この件についてのコメントは一切掲載することをやめたが、皆さんがプロレスを真面目に考え、そして自分なりの姿勢を持って見ていることを嬉しく感じた。
 これからも自分の眼で、自分の感性でプロレスを楽しんで頂くことを願います。私はやっぱりプロレスはどこまでも深くて、タフで、面白いものだと思っています。

“プロレスラーでない者”がリングに上がることについて

 私のサイトを見てくれるファンの多くが“プロレスラーではない者”がリングに上がることに拒絶反応を示している。これは当然だと思う。私もそうだったし、私のファン時代には試合はおろか、歌手がリングで歌を歌おうものなら「神聖なリングを汚すな!」と怒号が飛び交う状況だった。
 そして今のプロレスは“プロレスラーではない者”がリングに上がる時代になった。ハッスル、武藤敬司&お笑い芸人・神奈月がタッグを組んだF1、そして先日の全日本プロレス&『腐男塾』のコラボ・イベントなどなど。
 私は、F1は完成された武藤ワールドの中でのお楽しみアトラクション、全日本&『腐男塾』は『腐男塾』のイベントに全日本が参加した新たな試みと解釈しているから、そこに抵抗はない。難しいことは考えずに単純に楽しませてもらっている(と言いつつも、いろいろ感じることもあるが…)。
 そこでマサマサさんから「アトラクションと“本戦”の線引きがないようなシチュエーションで素人がリングに上がって試合をしてしまっているハッスルをなぜ肯定するのか?」というコメントを頂いた。ハッスルについては最近会場に足を運んでいなかったが、23日=草加、27日=後楽園に取材に行く予定なので、その2大会を観てから改めて見解を書かせてもらおうと思う。
 もうひとつ、掲載は控えさせてもらったが、全日本&『腐男塾』コラボ・イベントについて「本当に頑張ったと思う。だけど、ぶっちゃけプロレスはやってほしくなかった。1年間、道場に住み込んで練習してもデビュー出来ないのが現実なわけで、簡単にはプロレスラーになれないから」というカズ・ハヤシの言葉を載せたところ「カズ選手の意見に同意。でもカズ選手は主催側の人間で、一緒にリングに上がっている。反対との意見を持っているのなら、なぜイベントの前にきっちりと発言しないのか? 認めてしまった以上、肯定してるのと同義。あの女の子(青明寺浦正)が怪我でもしてたら、どう責任を取るつもりだったのでしょう? そのことによって業界が被るダメージも…」。さらに「女の子だけじゃなく、カズ選手の所属する全日本ではお笑い芸人を平気でリングに上げています。彼らもいつ、大怪我するか、もっと言うと死ぬ可能性だってあるわけです。そのあたりもどう考えているんでしょう」というコメントがあった。もちろん、この方は素人がリングに上がることに大反対している。
 まずカズのコメントだが、自己保身のための発言ではなく、本音がポロッと出たと私は感じた。それは全日本のコーチとしては当然の気持ちだろう。
 だが、あのコラボ・イベントは浦正が試合をすることで成り立っていたものであり、カズはそのイベントのプロデューサーを任されている立場だった。だからカズは「最低限、怪我だけはしないようにしなければ!」と浦正を道場で厳しく指導した。私は、カズは置かれた立場で最善を尽くしたと思うし、『S-ARENA』に一緒に出演した時に浦正が「プロレスファンに失礼になっちゃいけない。怪我をして迷惑をかけちゃいけない」と真摯に取り組んでいるのがわかったから好感が持てた。
 F1に上がった芸人たちも事前に全日本の道場で指導を受けていたし、プロレスをリスペクトして真摯に取り組んでいたから、私は好感を持った。もっとも、そういう姿勢を持ったタレントでなければ全日本もリングに上げることはないはずだ。
 確かに怪我は本当に心配。いくら指導を受けても、怪我をする危険性は高いし、お楽しみイベントでアクシデントが起こったら、これはもう話にならない。タレント・サイド(本人、事務所を含めて)もリスクを承知の上でリングに上がっているはずだが、やはり何かあってはいけないのだ。そこには対するレスラーの技量というものも大きなウェートを占める。
 最終的に私はシンプルにこう思っている。興行はビジネスだから拒絶反応を示す人間が多くて客入りが悪ければそのイベントは淘汰されるだろうし、逆に「面白い!」と思う人が多ければ継続されると。最終的にはお金を払うファンがチョイスできるということだ。
 一番大切なのは報道や評判でなく、自分の眼で見て、自分の感性で判断してほしいということ。そこには理屈はいらないし、正しいも間違いもない。そういう意味では、全日本&『腐男塾』コラボ・イベントは単純に楽しめたし、今後の持っていき方では可能性があるものだと私は感じた。あくまでも私個人が感じたことである。

新時代の息吹

 昨日は後楽園ホールで全日本5月シリーズ開幕戦、そしてディファ有明でKENTAプロデュース興行のダブルヘッダー。そこで目撃したのは若い力の台頭、新しい時代の息吹だった。
 全日本では今シリーズから総合格闘家に転向していた河野真幸が4年ぶりにプロレス復帰。これに若手陣が敏感に反応した。第4試合で真田&征矢vsKAI&大和という07年デビュー組のタッグマッチが行われたが、これが昨日の大会で一番沸いた試合。特にKAI&大和はF4として売り出され、真田はチャンピオン・カーニバル出場という中にあって、後塵を拝している印象が強い征矢が闘志を剥き出しにしたから試合はヒートアップ。4選手はバチバチとやり合い、最後は征矢が若手のトップを走るKAIを垂直落下式デスバレーボムでねじ伏せた。
「これは俺たちにしかできない試合だと思います。今日は第4試合だったけど、試合を重ねるごとにメインに近づきたいと思います。今まで取り残されていたけど、そんなに差はないことを見せつけたかった。これからチャンスがあると思うんで」と征矢。それはKAI、大和、パートナーの真田に向けられた言葉であるのはもちろん、出戻りの河野を意識していたのは明らか。時の流れは速く、征矢は20日の熊本・興南大会で、真田は5・22鹿児島大会で河野と一騎打ちを行うが「接点がない」(征矢)「ナマで試合を観たことがない」(真田)という。2人とも“入門前の先輩”にこの2年をぶつける覚悟だ。
 メインの武藤&河野vs小島&諏訪魔では河野が小島を雪崩式の飛びつき腕ひしぎ十字固めで仕留める大金星を挙げたが、内容的には小島&諏訪魔が河野を圧倒した。河野の実質的なプロレス・キャリアはデビューした03年3月から右肩を負傷して1年2ヵ月もの長期欠場を強いられることになった04年3月までのわずか1年。ハッキリ言って新人と変わらないだけに小島&諏訪魔に太刀打ちできるはずがない。まだ体はプロレス仕様になっていないし、打撃への耐久力ができていない。プロレス復帰というよりも、今デビューしたのと変わりがないのだ。
 だが、私は河野に期待している。03年3月にデビューした当時、192センチの恵まれた体を持ち、コーチ役だったケンドー・カシンに徹底的に鍛え上げられた河野は“全日本の将来のエース”にふさわしい基礎を持っていた。もし右肩の怪我がなければ諏訪魔より早く三冠王者になっていたかもしれない。昨日の試合では敢えて総合の技術を封印してプロレスに専念していたのも好感が持てた。フィニッシュは総合の技術を出したというよりも、カシンに教わったものが咄嗟に出たのではないかと思う。
 とりあえず勝ったが「ショッパイのはわかっています」と唇を噛んだ河野。ようやくプロレスラーとしてスタートラインに立ったことを実感したのではないか。
 そしてKENTAプロデュース興行でも若い力が弾けた。潮﨑との一騎打ちで“ヘビー級の逸材”として05年12月のデビュー当時から期待されていた谷口周平が弾けたのだ。
 国体3度優勝の経歴を持ち、素材的には申し分ない谷口だが、根が器用ではないのか、なかなかプロレスに馴染めない印象のまま今まできたが、先の『グローバル・タッグリーグ戦09』では肉体改造で体を絞り、髪を金髪に染めてイメージチェンジ、パートナーの秋山のリードもあってか、吹っ切れた感じだった。特に開幕戦の4・11後楽園における三沢&潮﨑との公式戦では潮﨑相手にストレートに感情を爆発させた。それがあっての昨日の一騎打ちである。潮﨑のチョップに退くことなくエルボー、タックルで前に出て、ナチュラルなパワーで押しまくった谷口。最後は鉄柱で頭をカチ割られ、ゴーフラッシャー、ラリアット、ムーンサルトの畳みかけに屈したが、帰国してから勢いに乗る潮﨑にまったく余裕はなし。谷口は互角といっていい頼もしいファイトを見せてくれた。ここから谷口がもうワンステップ上がったら…ノアの未来は本当に面白くなると思う。
 メインの秋山vsKENTAのヘビー級vsジュニア・ヘビー級王者対決はノアの頂点に立つ者同士の大勝負だった。ノアの現状を打破するべく、このカードを考えたプロデューサーのKENTAはキックの嵐で序盤は圧倒、試合後に秋山は「立ち上がるのも俺より早いし、スタミナも俺より上。俺は意地しかない。気持ちだけですよ。出せるもの、全部出したね。あんなに蹴られたのは川田さん以来ですよ」と語っていたが、それほどKENTAの攻撃は凄かった。
 もちろん秋山の反撃も半端ではなかった。花道で垂直落下式ブレーンバスターを決めるや、雪崩式バックドロップ、ジャンピング・ダブルアームDDT、ダイビング延髄エルボー…と、徹底した首攻撃。最後はリストクラッチ式エクスプロイダー、変型スターネスダストαで29分14秒の熱闘を制した。
 王者対決はリスクも背負っていた。この試合の内容でノアという団体の評価が下されてしまうからだ。だが、両王者にはきっと「俺たちの試合を見てくれ! これが今のノアだ!」という自信と気概があったはず。だからこそシビアな展開になったし、シビアさの中には「お前はどんな覚悟でノアを引っ張っていくんだ!?」というお互いの問いかけもあったと思う。秋山もKENTAも荒波を行く箱舟の舵取りにふさわしい男だと確信できた戦いだった。

全日本&『腐男塾』コラボは成功!今後の課題は

 昨日は新宿FACEで全日本プロレスと『腐男塾』のコラボ興行。会場の雰囲気は普段の全日本の会場とはガラリと変わって、観客のほとんどが『腐男塾』ファンという印象だった。オープニングは『中野腐女子シスターズ』のライブで盛り上がり、その熱気のままにプロレスに突入。メイン前には『腐男塾』のライブ、メイン終了後にも『腐男塾』のライブ…『中野腐女子シスターズ』&『腐男塾』のイベントのアトラクションとしてプロレスがあるという感じだったが、プロレスを観たことがない人がノリノリでプロレスを楽しんでくれたのだから、これはこれで良かったと思う。
 さて『腐男塾』の青明寺浦正が暴露マンと組んでTARU&クライシスと激突したメインではTARUが「プロレスは痛いんじゃ、ボケ!」と背中へのキック、股間への踵落としなどを浦正に容赦なく繰り出して『腐男塾』ファンを引かせるところもあったが、それは仕方がない。たとえ相手が素人でも、アトラクション的な試合であってもキッチリとやるところはやるのがTARU流なのだ。
 そんな中、浦正の頑張りは評価したい。TARUたちの攻撃に耐え、反則勝ち後のカズ&浦正&暴露マンvsTARU&ヘイト&クライシスの6人タッグによる再試合ではカズと暴露マンのアシストを得て、最後はクライシスをブルー・トルネード(ロープを利してのスイングDDT)で仕留めて大会名の『勝つんだ!』を体現した。
 会場の盛り上がりからして今回のコラボ・イベントは成功。大会プロデューサーのカズは「プロレスファンとアイドルファンのいい相乗効果が生まれたと思うし、これで終わりにしたくないですね」と感触を語っていたが、その一方では浦正が出場した試合について「本当に頑張ったと思う。だけど、ぶっちゃけプロレスはやってほしくなかった。1年間、道場に住み込んで練習してもデビュー出来ないのが現実なわけで、簡単にはプロレスラーになれないから」とも。
 私はこのカズの意見に賛成。今回の浦正は本当に頑張ったと思うし、そのひたむきな姿勢には好感が持てたが、これが今後もコラボ・イベントが続いたとして、そこでリングに上がり続けるとなるとちょっと“?”となる。今回は「頑張った」ということで評価されたが、これが続くとなるとハードルがどんどん高くなるし、アトラクションでは済まなくなってくる。そのあたりの線引きをキチンとした上で、アイドルが試合に参加しなくてもうまくコラボできるイベントを模索していってほしいと思う。