スタートライン

 崔領二がやってくれた。昨日の靖国神社相撲場における奉納プロレスで大谷晋二郎を下して世界ヘビー級王者になったのだ。
 正直、私はこれまで崔に歯痒さを感じていた。190センチという恵まれた体、何となく前田日明を彷彿とさせるギラリ感がありながら、ここぞというところで集中力に欠けて結果を出せないという印象を持っていたからである。
 だから、今回のタイトルマッチに向けて「ベルトを獲って時代を変える」と発言した時も、私はサムライTV『S-ARENA』で「ベルトを獲っただけでは時代は変わらない。ベルトを獲った後にどうしていくかの覚悟と自覚が必要」と辛口のコメントを出した。 これに対して崔は見事に答えを出してくれた。
 奉納プロレスは花見とプロレスを楽しめる恒例イベント。ほのぼのとした雰囲気で「やっぱりプロレスの原点は大衆娯楽なんだなあ」と思わせてくれる大会だが、観客の集中力が散漫になってしまう一面もある。そんな中で大谷vs崔は見事に観客の視線を釘付けにした。そして崔のモチベーションの高さがビンビン伝わってきた。今までの崔は、いいところまでいっても、途中でガタガタと崩れてしまうケースが多かったが、昨日は大谷がどんなに畳みかけてきても跳ね返した。最後もドラゴン・スープレックスの連発、スパイラルボムを凌いでのシドマス、スカイキック! 本当に崔の「何が何でもベルトを獲る!」という一念がもたらした勝利だったと思う。
「スタートラインだっていうのはわかってます。いろいろ言われると思うけど、とにかくスタートラインに立たないと始まらない。ゼロからの第一歩ですよ。チャンピオンになっただけじゃ駄目、大谷さんを倒しただけじゃ駄目。“ゼロワンは変わったね”と言われるチャンピオンになりたいと思います。プロレスは人生だと思うので、精一杯、悔いのない人生を送りたいと思います。いつか、俺らに憧れてプロレスに入ってくるだろう若い人とたちに背中を見せていきたい」という言葉は、私の辛口コメントに対する答えのようにも聞こえた。
 4・29後楽園では関本大介の挑戦を受けることが決定。ゼロワンは確実に去年の新日本との対抗戦一色のムードから新しい段階に入った。これから崔がゼロワンをどんなカラーに変えていくか、じっくりと見守りたい。とりあえず初めの一歩、おめでとう。

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