アメリカンな天龍源一郎

 今日17日はGスピリッツ第10号の発売日。今回の特集は『漢たちの昭和・全日本』だ。となると、天龍革命で昭和・全日本末期を熱くさせた天龍源一郎の存在を外すわけにはいかない。
「また小佐野の天龍インタビューかよ!」という声が聞こえてきそうだが、今回はこれまでと趣が違う。前号でカブキが天龍同盟のファイトを「あれが本当のアメリカンプロレス」と絶賛していたことを受けて、アメリカンプロレス的な視点で話を聞いてみたのだ。
 天龍が大相撲の元前頭筆頭から全日本に入団したのは76年10月。そして第3の男という地位を確立し、“風雲昇り龍”として日本に定着したのは81年5月。その間の4年7ヵ月のうち、実に3年9ヵ月もアメリカで過ごしていたことを考えれば、天龍のバックボーンは確かにアメリカ・プロレスということになるのだ。
 今回のインタビューではアメリカ・マット界で養った感性やプロ意識、アメリカ各テリトリーで感じたこと、フロリダでのマスクマン時代、龍原砲がファンに提示したかった本当の部分などなど、9ページにわたってたっぷりと聞いている。天龍ファンはもちろん、そうでない人にも、ぜひ御一読を!

折原昌夫登場!

2008_1215_013.jpg
 昨日のサムライTV『S-ARENA』には折原昌夫とリブレ・アトミコがゲスト出演。折原は今年3月にメビウスの活動を再開、12月26日に新宿FACEで行う年内最終興行のパブリシティのためにやってきた。
 メビウスは折原独自の世界観を表現するもので、折原率いるメビウスとリブレ・アトミコ総帥率いる悪のジョリー・ロジャー・メビウスの対立が柱になっている。12・26新宿FACEは折原&ディック東郷&金村キンタローが保持するエイペックス・オブ・トライアングル王座にジョリー・ロジャー・メビウスと通じる東京愚連隊(NOSAWA論外&MAZADA&TAKEMURA)が挑戦。黄金のマスクを持つザ・グレート・サスケの防衛戦(現時点で挑戦者はX)、ソルジャーがFMWの先輩・黒田哲広相手に引退試合。さらにトンパチ・マシンガンズvsバトラーツ&SUNのミックストマッチとして小野武志&三田英津子vs澤宗紀&前村さき、「メビウスが挨拶なしに勝手に歌舞伎町に進出してきた」と怒っている新宿ナンバーワン・ホストの美月凛音がMIKAMIと歌舞伎町一番GUY’Sを結成しての殴り込み、ウルティモ・ドラゴンの友情参戦など総勢30選手の豪華な興行になっている。
 さて、折原といえばピアス&タトゥーの風貌、過激なファイト&言動によってアブナイ奴というイメージが強いようだが、一本気で真面目な性格のゆえに突拍子もない行動に出てしまったり、思ったことを口にするから誤解を受けることも多いのだと思う。
 それだけに折原がメビウスとしての活動を再開し、選手のブッキングや諸々の手配、パブリシティ活動をひとりでやっている姿を見ると、何だか嬉しい気持ちになる。私にとって折原は、一生懸命に天龍さんの付き人をやっていたオリちゃんのままなのだ。実際、昔とまったく変わらない態度で接してくれる礼儀正しい筋の通った男である。

諏訪魔の課題

 23日にJCBホールでA BATHING APEとのコラボ・イベント『BAPESTA! PROWRESTLING2008』があるものの、昨日の後楽園ホールが純粋な08年度全日本プロレスの最終興行。恒例の『ファン感謝デー』が開催された。
 1年を明るく楽しく締め括ろうという同大会の目玉は武藤&神奈月のF-1タッグ防衛戦。今回の挑戦者は“女の中の男”神取忍と“男の中の女”前田健のコンビ。前田健のあややは確かに一見の価値あり! あややと同じキーで歌えるのだから凄い。そして“カミングアウト”したことによってすべてが解放されたのか、男色ディーノも真っ青の独特のオーラがあった(苦笑)。
 まあこれは年末のアトラクションとして…私が注目したのはメインの諏訪魔vs近藤修司だ。今年1月にVMを離脱し、4月にチャンピオン・カーニバル優勝&三冠王座を獲得、その後、多くの苦しみと戦いながら成長した諏訪魔。10月にVMを離脱、11・3両国で丸藤に敗れて世界ジュニア王座奪取はならなかったものの、その試合が08年度ベストバウトに選ばれた近藤。そしてタッグを組んで最強タッグ準優勝を果たしたこの2人が年度最終試合のメインで激突したのである。
 果たして、最後の心技体の真っ向勝負は見応えがあった。あの諏訪魔の体を吹っ飛ばす近藤のキングコング・ラリアットはジュニアの枠を超えたものだったし、フィニッシュの諏訪魔のラストライドも完璧だった。だが、敢えて書くと序盤から中盤は盛り上がりに欠けていたのが残念だった。
 当然、両雄共に08年を締め括る試合にしなければという想いが強かっただろう。そうなると、立ち上がりはジックリした展開になる。序盤から中盤を優勢に進めたのは諏訪魔だったが、その攻めに緩急がなく、単調に見えたのだ。スピードや攻め方に変化がないと観ている方は飽きてくる。どんな戦法でも観客を飽きさせないのがプロの戦いであり、ここに諏訪魔の課題があると改めて感じた。
 今、天才と呼ばれる武藤敬司や丸藤正道は地味な展開の中でも独特のリズムを持っている。そして要所で緩急をつけるから観客を飽きさせない。今の諏訪魔はナチュラルな強さと体力だけで戦っているが、そういう自分なりのリズムを持ってほしいのだ。
 考えてみれば、諏訪魔はやっとキャリア4年。普通に考えたら新人である。だが、今年1年の彼のファイト、プロレスに取り組む姿勢を見てきて、やはり全日本プロレスを、日本マット界を背負って立つ大器だと確信を持った。だからこその苦言だと捉えてもらいたい。私は09年の諏訪魔に大きな期待を抱いている。

BI対立の時代を分析

 来たる1・4東京ドームには全日本、ノア、ゼロワンMAXが参加し、厳しい日本プロレス界は一致団結、大連立の動きを見せ始めているが、昭和の日本プロレス界は新日本プロレスと全日本プロレスの仁義なき戦争の時代だった。
 そこで17日(水)発売のGスピリッツ第10号では昭和・全日本特集のひとつとして「新日本から見た昭和・全日本」ということで、かつて新日本プロレス取締役営業本部長・新間寿氏にインタビューした。
 新間氏はアントニオ猪木の片腕として“過激な仕掛け人”と呼ばれ、全日本プロレス壊滅に全精力を注いだ武闘派。第8号のUWF特集では、戦争停戦後の馬場と猪木の水面下での蜜月を語ってもらったが、今回はそれより前の時代…新日本と全日本が、猪木と馬場が命懸けで戦争をしていた時代の秘話である。
 外国人ルート、猪木の馬場への挑戦、人材の発掘&育成、国際プロレスとの関係、引き抜き戦争…今回、初めて明かされる意外な話も当然、出てくる。
 このインタビューを読んでいただければ、BIの確執と対立がスリリングでダイナミックな流れを生み、70~80年代のプロレスを結果的に隆盛に導いたことを理解していただけると思う。

20年ぶりの輪島大士!

o081119wajima080essei_1.jpg
 17日(水)に発売されるGスピリッツ第10号の目玉のひとつが元横綱・輪島大士インタビュー。今年、石井慧のプロ総合格闘家転向が世間でも大きな話題になったが、今から22年前の1986年春の輪島のプロレス転向はそれを上回るニュースだったと思う。当時の輪島は引退から5年が経過していたものの、昭和を代表する大横綱だったし、金色の廻しを着けたり、純白のリンカーン・コンチネンタルを乗り回したりと、破天荒なキャラでも国民的ヒーローだった。加えてプロレス転向当時はスキャンダラスな話題もあり、世間の関心度は相当なもの。
 輪島の入団によって全日本プロレスはTVゴールデンタイム復帰を果たし、興行的にも日本全国で超満員。この輪島人気が長州らジャパン・プロレス勢の新日本Uターンの引き金になったとも言われている。また長州離脱後には天龍の容赦ない攻撃を浴びて、これが天龍革命の凄みにつながり、天龍vs輪島を観た前田日明が危機感を覚えて、これが長州蹴撃→新生UWF誕生につながっている。よくよく考えてみると、日本プロレス界における輪島効果は多大なものがあるのだ。ただ、輪島がプロレスラーとして活躍したのは86年8月7日のカンサスシティにおけるデビュー戦から88年12月16日、日本武道館においてカブキと組んでのvsクラッシャー・ブラックウエル&フィル・ヒッカーソンまでのわずか2年4ヵ月。88年の日程をすべて終えた時点で馬場に引退の意思を告げ、記者会見もなくひっそりとプロレス界を去ったのである。
 今回、輪島さんに会ったのは88年12・16武道館から実に20年ぶりのこと。私は当時、週刊ゴングの全日本プロレス担当記者だったから、全日本入団会見から輪島さんを追った。トレーニングを始めて1ヵ月も経たない頃にハワイで取材したし、日本デビュー後の88年11月にはノースカロライナ州シャーロッテで1週間寝食を共にした。そのあたりのエピソードもインタビュー中に出てくるが、それは実際に本を読んでいただきたい。
 引退後、プロレスについての取材は受けたことがないという輪島さんだったが、そんな関係もあってか、私の取材には快くOKを出してくれて、おまけに取材場所も行きつけのお寿司屋さんを自ら予約してくれた。
 20年ぶりに会った輪島さんは全然、変わっていなかった。そう、やっぱり横綱は横綱だった。
 インタビューはプロレス転向を決意した本当の理由、体感したプロレスの難しさ、ジャイアント馬場との関係、容赦なく攻撃してきた天龍への感情、引退の理由…など、たっぷり2時間。横綱ゆえのプライドと葛藤、プロレスへの真摯な想いを読み取っていただけたら幸いだ。
そうそう、『DVDが付かなければ買いません。立ち読みですませます』という書き込みがあったが、我々は面白い本を作るために毎号力を尽くしている。だから実際に手に取ってから判断してほしいと思う。DVDを楽しみにしていた方々には申し訳ないとは思うが、中には「DVDはいらない」という人もいて、こちらも試行錯誤中なのだ。ただ、我々には立ち読みでは済まない、買って損のない本を作っているという自負があります。あとは皆さんの判断次第なので。 

会見で早くも前哨戦!新日本vsノア決定

 昨日の午後6時から東京・九段のホテルグランドパレスで1・4東京ドームのカード決定最終会見。セミの第9試合で中邑真輔&後藤洋央紀vs三沢光晴&杉浦貴、休憩明けの第7試合で中西学vs秋山準の新日本vsノア対抗戦2試合が行われることが発表された。
 会見には試合に出場する6選手、新日本の菅林社長が出席したが、それぞれの思惑が垣間見れて、なかなか面白かった。
 ようやくノア引っ張り出しに成功した菅林社長は、今後のノアとの対抗戦について「ここまでくるにはいろいろな交渉事があって、やっと実現したわけで…あとは選手を信じ、勝利を奪ってもらって、勝てば次につながるものが生まれると思います。とにかく選手を信じ、選手に期待しているということです。対抗戦であるからには負けられない。選手たちにはプレッシャーと団体の威信を背負って試合に臨んでほしいと思います」と、“その先”に大きな期待を寄せていることを隠さなかった。また、12・7日本武道館で森嶋を破って次期GHCヘビー級王座挑戦者に決定した秋山に中西をぶつけることについても「ここで中西が勝ったら、ノアさんとしても(中西の挑戦を)考えざるを得なくなるでしょう」と、完全に戦闘態勢だ。
 中西と秋山が激突するのは03年8・12静岡におけるG1クライマックス公式戦以来、5年4ヵ月ぶり。この時は秋山が野人を覚醒させた上で強引な首固めで勝利を奪っている。そして、この2人は専修大学レスリング部の先輩後輩で同部屋だった間柄。秋山が入部して合宿所入りした時に3年先輩の中西がアメリカのエロビデオを観ていたというのは有名なエピソード。かつて秋山は「新入りの僕を楽しませようと思ったんでしょうけど、中西先輩に“一緒に観るか?”って言われても、観られませんでしたよ。でも、そんな気さくないい先輩でした」と笑っていたものだ。
 さて、今回の一戦に向けての両者のコメントは以下の通り。
「同じ専修大学を卒業していながら、これだけスタイルが違うっちゅうのも珍しいんじゃないかと。まあ、気になる存在なんでちょくちょく試合は観ていますけど、5年前から随分と風貌が変わっているのにビックリですよ。まあ、団体の代表として最高の相手と戦うからには交流戦ではなくて対抗戦ですが…“新日本の中西学”というよりも、中西学として秋山準と戦いたいです」(中西)
「最初、中西さんが狙っているのはGHCでも白GHCの方だと思ったんで橋誠を行かせようと思ったんですけど、黒GHCということらしいので。黒の方のチャンピオンは佐々木健介選手が持っているので次期チャンピオンの僕が出ることにしました。(次期挑戦権を中西戦に賭けるかについては)中西さんが考えることですけど“寄こせ”と言うなら、それはそれで構いません。観てる人にとっちゃ、その方が面白いかもしれないですね。先輩後輩の間柄はずっとそういうことなんですけど、卒業して何年も経っているわけで、1レスラーとして新日本とノアの戦いだと思っています。5年前のことはそんなに憶えてないんですけど、試合のクオリティー的に高くなかったと思うので、それを踏まえて、いい試合をしたいと思います」(秋山)
 中邑&後藤vs三沢&杉浦では中邑が熱かった。後藤は「自分は他団体にあまり興味はなかったんですけど、今はワクワクしていますね。(三沢の印象は?)テレビで観るより意外とデカイんですね。中邑だけにオイシイところは持って行かせませんよ。(三沢と杉浦の)どちらを狙うというよりも、勝負にこだわります」と、三沢&杉浦を目の前にして、初めて実感が湧いてきたという感じだったが、中邑はピリピリ・ムード。
「新日本vsノアということで、容赦なく戦って新日本の凄みを見せつけたいですね。交わることのなかったノアとこういう形で戦うことで自分に大きな変化をもたらせてくれると思っています。杉浦さんに関してはノアの中でも他競技に参戦する力を持っている怖さを感じますね。用心棒的な感覚で捉えています。まあ、ノアの若い選手たちが、強い人の名前を挙げる時に必ず三沢さんの名前を挙げるので、それだったら象徴とやるのが手っ取り早いと思って社長に交渉をお願いしました。イメージとしては経験を武器に戦う選手。経験を武器にする人は誤魔化しがあったり、煙にまいたりする人が多いですけど、三沢さんは誤魔化しがなくて真っ向から勝負が出来るというイメージがあります。三沢さんは首が悪い? 知らないッスよ! リングに上がる以上は、レスラー全員が覚悟を持っているわけだから。今回、ドームに参加しなかったノアの若い選手のこの試合の後の反応が見てみたい。どう反応するか楽しみですよ、反応しなきゃおかしいと思う。これは対抗戦なんだから、新日本プロレスとして勝ちにこだわります!」と中邑の言葉はどんどん熱気を帯びていった。
 一方のノア・サイドは例によって泰然自若といった感じ。杉浦は「会社の人に“正月は暇?”って聞かれて“暇です”と答えたら“ドームに行ってくれ”ということだったので、行くことにしました。一応、ノア代表ということなので社長に迷惑かけないように頑張ります」と、人を食ったような言葉だ。
 05年5・14東京ドームにおける藤波と組んでのvs蝶野&ライガー以来の新日本出陣になる三沢も以下のように淡々と話した。
「こういう機会じゃないと出来ないので楽しみにしています。若い力に負けないように頑張ります。僕の場合は“あと、どれくらい出来るのか”っていうのがあるんで、やれる時にやろうと。一個人としての興味という部分が大きかったですね。まあ、こういう形になったんで、今後(の対抗戦)を期待すると思いますけど、試合もしていないし結果も出ていないので、今は何とも言えませんね。そういう話があれば、その都度、前向きに考えていくということで。ウチはいい選手がいっぱいいるんで、これを対抗戦と言われても困るんだけど(苦笑)、会社の看板を背負うことにはなるんで負けられない。杉浦の足を引っ張らないように頑張りますよ」
 ちなみに1・4東京ドームの全カードは①ミスティコ&田口隆祐&プリンス・デヴィットvsアベルノ&邪道&外道②獣神サンダー・ライガー&佐野巧真vs井上亘&金本浩二③IWGPジュニア・タッグ選手権=裕次郎&内藤哲也vsアレックス・シェリー&クリス・セイビン④IWGPジュニア・ヘビー級選手権=ロウ・キーvsタイガーマスク⑤長州力&蝶野正洋&カート・アングル&ケビン・ナッシュvsジャイアント・バーナード&飯塚高史&石井智宏&カール・アンダーソン⑥永田裕志vs田中将斗⑦中西学vs秋山準⑧IWGPタッグ選手権3WAYマッチ=真壁刀義&矢野通vs天山広吉&小島聡vsブラザー・レイ&ブラザー・ディーボン⑨中邑真輔&後藤洋央紀vs三沢光晴&杉浦貴⑩IWGPヘビー級選手権=武藤敬司vs棚橋弘至の10試合。
 新日本、全日本、ノア、ゼロワンMAX、アメリカTNAが揃い踏みするオールスター戦とも言える今回の東京ドームが、まずはプロレス・ファンにどう届くか!? 今後の日本プロレス界を左右する勝負の大会だ。

Gスピリッツ第10号の表紙&主な内容です!

Gスピリッツvol.10表紙_1.jpg
 12月17日(水)に発売されるGスピリッツ第10号の表紙と主な内容を公開します。
【王道特集――第2弾】
漢たちの昭和・全日本
★輪島大士
名横綱、王道プロレスを語る
★ジャンボ鶴田
怪物の正体――最強説の真実に迫る
★天龍源一郎
馬場&猪木を倒した“第3の男”
★越中詩郎
サムライ・シローが誕生するまで
★新間寿
全日本プロレス壊滅計画の真相
★グレート小鹿
今、明かされる『暗闘』と『闇』
★ウルトラセブン
真説――悲劇のスーパーヒーロー
★MEN’Sテイオー
歴代チャンピオンの技術を徹底解析
【考察――シュートレスリング】
デーズ&ゴッチが認めた最強レスラー全リスト
ディアブロ・ベラスコとメキシカン・キャッチ
ハム・リーとゴッチの友情
【日系レスラー列伝】
“神風親分”キンジ渋谷
【好評連載】
アリーバMEXCO=エル・サントからミスティコまで~聖者伝説の光と影~
世界・ふしぎ再発見=謎の格闘技『バリツーズ』捜し求めて
 今号は前号で好評だった王道・全日本プロレスを昭和という視点から特集しています。私が担当したのは巻頭の輪島インタビュー、今までとは角度を変えた天龍インタビュー、今だからこそ明かせられる新間氏の全日本壊滅計画、テイオーの超マニアックな歴代世界王者の技術解析の4本。それらの取材エピソードは順次、このダイアリーで綴っていこうと思います。

2008年度プロレス大賞選考会議

 お約束通り、昨日の正午から行われた2008年度プロレス大賞選考会議の結果と、その過程を綴らせてもらう。選考委員は東京スポーツのプロレス担当記者&カメラマン、サンケイスポーツ、スポーツニッポン、デイリースポーツ、東京中日スポーツ、報知新聞、内外タイムスの各プロレス担当記者、週刊プロレスの佐久間一彦編集長、プロレス評論家の菊池孝さんと門馬忠雄さん、サムライTVキャスターの三田佐代子さん、私、選考委員長の柴田惣一さん、特別選考委員の内館牧子さんの31人。内館さんは所用のために会議を欠席、MVP、ベストバウト、最優秀タッグチームの3賞の候補を事前にノミネートしており、他の賞については30人による選考になった。
〔最優秀選手賞=MVP〕武藤敬司
 2008年の顔にノミネートされたのは新日本のIWGPヘビー級王座を奪取し、もうひとつの顔のグレート・ムタで三冠ヘビー級王座も奪取してメジャー2冠に輝いた武藤と、ノアのGHCヘビー級王座を奪取して史上初の新日本、全日本、ノア3大メジャー・タイトル制覇を果たした佐々木健介。さらに「今のジュニア・ヘビー級はヘビー級を凌駕しており、そのトップに立っている男」として丸藤正道の名前が挙がった。
 私が推したのは武藤。IWGP王者の武藤としても、三冠王者のムタとしても自分の世界を創り上げて両団体を王者として盛り上げた力量を評価したからだ。特にIWGPに関しては全日本のシリーズの合間に新日本のビッグマッチに出陣して挑戦者の持ち味を引き出しつつ、それを上回る光を放って王者の責任をまっとうしていたと思う。武藤の戴冠は新日本にとってマイナスにならなかったはずだ。
投票の結果、武藤が28票を獲得して2001年度以来のMVPに輝いた。
〔年間最高試合=ベストバウト〕丸藤正道vs近藤修司(世界ジュニア・ヘビー級戦=11・3両国国技館)
 ここでノミネートされたのは①エメリヤーエンコ・ヒョードルvsチェ・ホンマン(07年12・31さいたまスーパーアリーナ)②永田裕志vsカート・アングル(1・4東京ドーム)③鷹木信悟&B×BハルクvsKENTA&石森(GHCジュニア・タッグ戦=3・20大田区体育館)④諏訪魔vs棚橋弘至(チャンピオン・カーニバル優勝決定戦=4・9後楽園ホール)⑤中邑真輔vs武藤敬司(IWGPヘビー級戦=4・27大阪府立体育会館)⑥KENTA&石森太二vs中嶋勝彦&飯伏幸太(GHCジュニア・タッグリーグ公式戦=8・30ディファ有明)⑦丸藤正道vs近藤修司(世界ジュニア・ヘビー級戦=11・3両国国技館)の7試合。
 議論&投票の結果、永田&アングル、中邑vs武藤、丸藤vs近藤の3試合が残り、決選投票の結果、丸藤vs近藤が過半数以上の19票を獲得した。
 私の中では2試合が候補だった。ひとつは4・9後楽園のチャンピオン・カーニバル公式戦として行われた武藤vs棚橋、もうひとつはチャンピオン・カーニバル優勝決定戦の諏訪魔vs棚橋だ。武藤vs棚橋は、棚橋が武藤ワールドに飲み込まれずに存在感&表現力でも互角に渡り合った試合。30分時間切れに終わったものの、棚橋がハイフライ・フローの3連発で畳みかければ、武藤もシャイニング・ウィザードの乱れ打ちからムーンサルトの態勢に入ったところで時間切れのゴングという最後までスリリングな試合だった。だが、私が最終的に私がノミネートしたのは諏訪魔vs棚橋。全日本と新日本の次代を担う2人が真っ向からぶつかりあった試合だ。技術的には、特に諏訪魔はまだまだ荒削りだが、変な駆け引きなしにお互いの「勝負しよう!」という気迫と技が真っ直ぐにぶつかり合ったし、会場の盛り上がりも凄かった。こういう若さと気概に満ちた試合こそプロレスなのではないかと私は感じたのだ。
 残念ながら第1回の投票で脱落してしまったため、決選投票では試合として純粋に最高レベルのプロレスを提供してくれた永田vsアングルに入れた。武藤vs中邑もいい試合だったが、あれは完全に武藤の試合。丸藤vs近藤もベストバウトにふさわしい試合ではあるが、それだったら一昨年の近藤vsカズ、昨年の近藤vs中嶋も負けていないはず。どちらの試合も私的には決め手に欠けていた。
 興味深かったのはカメラマンによるKENTA&石森vs中嶋&飯伏のノミネート。やはりカメラマンは被写体として絵になる試合を推すのである。
〔最優秀タッグチーム〕鈴木みのる&太陽ケア
 これも激戦。世界タッグ王者の鈴木みのる&太陽ケア、IWGPタッグ王者の真壁刀義&矢野通、GHCタッグ王者のバイソン・スミス&齋藤彰俊、G1タッグ&最強タッグ制覇の天山広吉&小島聡、GHCジュニア・タッグ王者の金丸義信&鈴木鼓太郎、ドラゴンゲートの土井成樹&吉野正人の6チームの名前が挙がった。
 私は去年と同じく土井吉をプッシュ。タッグ王座は失ったものの、タッグ・リーグ戦は2連覇を果たしたし、最優秀タッグチームと言うからには個々の技や実力ではなく、タッグチームとしての魅力が一番重要視されるべきだと思ったからだ。
 だが、案の定(?)土井吉は第1回投票で脱落し、みのる&ケア、真壁&矢野、テンコジで2回目の投票。最終的にみのる&ケアとテンコジが残り、16対14でみのる&ケアに凱歌が上がった。
 第2回投票からは私はみのる&ケアを支持。確かにテンコジは新日本と全日本のタッグ・リーグを制覇したが、再結成した以上は、新しい魅力を提供してほしかった。みのる&ケアは5月のタッグ結成から当時のIWGP王者&三冠王者コンビの武藤&諏訪魔、健介&勝彦に勝ち、武藤&ジョー・ドーリングから世界タッグを奪取、諏訪魔&西村、テンコジ相手に防衛と着実な歩みを見せていた。合体技を売りにするコンビではないが、考え抜いた戦略、タッチワークの巧さは抜群だったし、あのみのるが入場曲を『風になれ』から『ヒーロー』に変え、リングアナには「鈴木みのる、太陽ケア、GURENTAI!」と個々ではなくチームとしてコールさせ、ケアの潜在能力を引き出すファイトに徹していた。そしてそれにケアも応えた。この2人には「何が何でもタッグチームとして成功してやる!」という強い意志が見えたのだ。地味ではあるが、みのる&ケアの最優秀タッグチームは満足のいく結果だ。
〔殊勲賞〕佐々木健介
〔敢闘賞〕田中将斗
〔技能賞〕鷹木信悟
 昔と違って団体の数、レスラーの数は多いし、スタイルも多種多様。それに対して個人賞の枠は少ないから、ここからは選考委員各自の思い入れや「この選手には何か賞をあげたい!」という気持ちが強く表れるのが殊勲・敢闘・技能の3賞だ。
 まず選考結果からすると、殊勲で名前が挙がったのは佐々木健介、森嶋猛、田中将斗、永田裕志の4人。惜しくもMVPを逃した健介の受賞は当然の成り行きだと思う。
 敢闘賞は諏訪魔、田中、森嶋、KENTA、永田、曙、後藤洋央紀、中西学、鷹木信悟の9人の名前が挙がり、6票の諏訪魔と11票の将斗で決選投票。9対21で田中が勝ち取った。
 技能賞は飯伏、鷹木、杉浦貴、ジョシュ・バーネットの4人から、最後は鷹木とジョシュの争いになり、16対14の僅差で鷹木が受賞。鷹木はスピード&テクニック主体のドラゴンゲートにあってパワーを武器にしていてキャラが際立っている。それでいて他の選手の負けないスピードを持ち、難易度の高い技を仕掛けられても対応できる技術がある。キャリア4年弱でドリームゲート王者になって若きエースに君臨している。私も決選投票では鷹木に入れた。ここではカメラマンがこぞって飯伏を支持していたのが興味深かった。
 私はこの3賞については健介、諏訪魔、森嶋、将斗、真壁を考えていて、誰を落とし、誰をどの賞にノミネートするか悩んだ。そして私の中での結論は殊勲=健介、敢闘=諏訪魔、技能=将斗だった。健介の殊勲は3大メジャー制覇の実績とCMやテレビ番組での知名度を併せたもの。諏訪魔の敢闘はチャンピオン・カーニバル、三冠奪取という実績はもちろんだが、彼が全日本のエースにふさわしいレスラーになるために考え、もがき、苦しんでいた姿を近くで見ていたからだ。これはGHC王者になった後の森嶋にも共通していたが、今年は森嶋ではなく諏訪魔だと思った。将斗の技能賞というのは正直、苦しい感もあり、敢闘の方がふさわしい気がするが、ジュニア・ヘビー級にも入れる体格で火祭り3連覇を果たし、新日本との対抗戦の矢面に立って永田や中西と互角に戦い、かと思ったらガッツワールドなどのインディーでも相手を光らせつつ、きっちりと田中将斗の試合として成立させるのは技能と言ってもいいのではないか。去年、何も賞が貰えなかったのはおかしいぐらいなのだ。ぶっちゃけ、将斗を敢闘賞にしたら、さすがに諏訪魔=技能賞とは言えないので、あくまでも将斗=技能賞で推したかったのだが、結果的には私の目論見は外れてしまったわけだ。
〔新人賞〕澤田敦士
 この賞にも様々な名前が挙がった。受賞した澤田の他にKAI、内藤哲也、浜亮太、坂口征夫、女子プロの松本浩代。新人賞の規定はデビュー3年以内となっていて、あとは選考委員各自の捉え方次第になってくる。私としては「この選手は何年かしたら素晴らしいレスラーになっているだろうなあ」というフレッシュさを大事にしている。言い換えれば、何年か後に「やっぱり新人賞をあげてよかった」と思う選手だ。
このノミネートの中でふさわしいと思ったのはKAIと内藤。11月にデビューした浜は最強タッグの巡業各地で会場を沸かせたが、まだあまりにも未知数。IWGPジュニア・タッグ王者になった内藤は、もはや新人賞の枠を飛び越えているという感覚だ。だから私が推したのは昨年2月にメキシコでデビューし、3月に日本デビューしたKAI。春のジュニア・リーグ優勝はラッキーな面が強かったと思うが、その後の8・31両国での土方に挑戦した世界ジュニア戦は予想をはるかに上回るものだったし、センスと度胸がいい。華もある。そしてジュニアにとどまらずに大きくなりそうな体も魅力。それがプッシュした理由だ。
 受賞した澤田の試合は昨年12・20有明コロシアムのアマゾン・ブレード戦、今年に入って2・16有明コロシアムの小原道由戦、8・15両国の若翔洋戦の3戦しか観ていない。イメージとしては小川道場所属だけに小川直也を小型にしたような感じ。鼻っ柱の強さと骨太さは印象に残っているが、少なくとも夏の両国の時点ではプロレスラーとして身につけているべき基本的なことをマスターしていないように思えた。私の範疇ではプロレスラーではないのだ。
 選考も揉めて、最後は澤田とKAIの決選投票になり、17対13で澤田に軍配。あの石井慧を11・24名古屋でセコンドに付け、リングに上げたことで世間でも話題になったことも加味されての選考になった。そこには「世間に届くレスラーがいてほしい」という要素もあったわけだ。
 私が澤田に望むのは本当の意味でプロレスラーになってくれること。5年後、10年後に「やっぱり2008年の新人賞は澤田で正解だったね!」と言えるレスラーになってくれることだ。
〔功労賞〕グレート草津
〔女子プロ大賞〕該当者なし
 功労賞は6月21日に亡くなった元国際プロレスのエース、グレート草津さん。女子プロ大賞は5年連続で該当者なしとなった。今の細分化された女子プロレス界では「この人が今年の女子プロの顔!」と呼べる人が生まれにくい状況にある。ノミネートされたのは年内で引退する元気美佐恵と子宮筋腫を乗り越えてカムバックし、一度はNEO2冠王者にも返り咲いた井上京子。私は11・12後楽園で小島聡とシングルマッチを行って男子プロレスのファンも振り向かせようとした元気に1票を投じたが、元気も京子も過半数に至らず、残念ながら該当者なしになってしまった。
〔その他〕
話題賞にヒール転向でファンをアッと驚かせた飯塚高史、インリン様、マッスル坂井、団体賞に年間180以上の興行を行い、不況下でも観客を動員しているドラゴンゲート、カムバック賞に永田と小島の名前が挙がったが、どれも過半数には至らず、特別賞は設けられなかった。
 ここからは一度エントリーした内容に補足です。おそらく去年と同じように様々なコメントが寄せられると思います。それは選考委員のひとりとして私自身がしっかりと受け止めようと思いますが、収拾がつかないような状況になることは避けたいし、誰かのコメントだけ掲載して、誰かのコメントは削除するというのも嫌なので、サイト上では敢えて公開しないつもりでいます。ご了承のほどを。

寒いが熱かった全日本・広島大会

 昨日はGAORA中継の世界最強タッグ決定リーグ戦優勝戦解説のため広島へ出張。
今年の最強タッグは混沌とした。首位を走っていたジョー・ドーリング&ゾディアックのブードゥー・タワーズは、真田&征矢との公式戦を残した段階の12月4日にゾディアックが急性腹膜炎の緊急手術という思わぬ事態になってリーグ戦をリタイア。世界タッグ王者チームの鈴木みのる&太陽ケアのGURENTAIは最終公式戦でTARU&ヘイトの場外心中作戦にはまって脱落。かくして優勝戦に勝ち進んだのは新日本のG1タッグ・リーグ戦を制した天山&小島のテンコジ、諏訪魔&近藤のスワコンだった。
 これは両チームにとって2008年の総決算。共に負傷欠場からカムバック後に方向性に迷った末に再合体したテンコジにとってはメジャー2団体のタッグ・リーグ戦を制覇して復活をアピールしたいところ。諏訪魔と近藤は共にブードゥー・マーダーズを離脱して新たな道を切り開いた1年を有終の美で締め括りたい。また、タッグ世代闘争という見方もできる組み合わせだ。ちなみに11・24後楽園における公式戦では真っ向勝負の上で近藤がラリアットで小島を完璧にフォールしている。
 さて、試合は今回も28分36秒という激闘に。詳細はGAORA中継を観ていただくとして、栄冠を勝ち取ったのはテンコジ! 会場を包む小島コール、天山コールを聞いて、改めてテンコジはファンに愛されているのだと感じた。そしてコールが起きるほどテンコジを追い込んだスワコンは来年が楽しみなコンビだとも思った。
 友情を全面に押し出して新日本&全日本のタッグ・リーグを制覇したテンコジ。クールに見れば滑稽なコンビだが、そのベタさが観ている人に活力を与えたのだから立派。観ている人を元気にするのがプロレスのひとつの大きな役目でもあるのだ。
 今回の広島大会は月曜日の開催、しかも雨という状況で、主催者発表2400人という寂しい入り。だが、何人かのファンと話をしてみると「この広島サンプラザホールはどの団体が来ても厳しいんですよ。でも、最強タッグの決勝戦を広島でナマで観られるとは思ってなかったから嬉しいですね」という喜びの声がほとんどで、試合後には「やっぱりテンコジは最高ですね! でもスワコンはこれから楽しみですよ!」と興奮気味に話しかけてくれる人もいた。
 正直、寒い会場だったが、それを上回るファンの歓声、熱気があり、心温まる大会だった。今、経費的にどの団体も地方興行が減っているが、本来は全国各地を回ってナマの迫力を提供するのが日本のプロレスの在り方だった。その意味では、今回の最強タッグ決勝の広島開催は冒険ではあったが、やって良かったと思う。2009年、プロレス熱が日本全国各地に少しずつでも伝わっていく流れが生まれたら、こんなに嬉しいことはない。
 話は変わって、今日は正午からの2008年度プロレス大賞選考委員会出席のために朝6時46分発の新幹線で帰京した。その結果と選考過程、私自身のノミネート等は明日のダイアリーでアップします!

2009年の秋山に注目!

 昨日は今年最後のノア日本武道館大会。健介に彰俊が挑戦したGHCヘビー級戦、KENTA&石森が金丸&鼓太郎に挑戦したGHCジュニア・タッグ戦、秋山と森嶋の次期GHCヘビー級王座挑戦者決定戦、三沢vs勝彦と、それぞれカラーが違う好カードが揃った。
 この中で私が最も注目していたのは秋山vs森嶋。レスラーとしての性格はまったく違うが、どちらも私的に好きなレスラーだからだ。
 そして秋山がやってくれた。森嶋の巨体に押し込まれながらもラリアットを脇固めに切り返して腕折りに持ち込み、リストクラッチ式のエクスプロイダーからスタンディングのフロント・ネックロックで若い力を攻略した。
「正直、森嶋はデッカイんで、リストクラッチ式も最後までクラッチ出来ないんですよ。今日はあれで決まるとは思っていなかったから、首なり、肘なりを極めようと。足は太いからちょっと極めるのは無理なんでね。まあ、まんべんなく、(攻める箇所を)いろんなところに散らしてやろうと。GHCへの挑戦はまだしっくりこないですね。挑戦が次の武道館だとしたら3月(1日)ですからね。それまで1シリーズあるわけだから、今からでも何か言ってくる奴がいたら受けますよ。募集します」と秋山。
 9月初旬、私はGスピリッツ用に秋山のインタビューをした。その時はGHC挑戦等はインタビューのテーマではなかったので雑談の中で「そろそろ話題の中心に行かないの?」と聞いたら「いいトシこいて、KYなのも嫌なので。いや、敢えてKYに行くのもいいんですけど…」との答え。ちょうど迷っていた時期なのかもしれない。だが「もし僕がGHCに挑戦するとしたら…」という話の中には様々なアイデアがあった。
 普通に考えるなら、秋山の挑戦はやはり3・1日本武道館が濃厚。となると、それまでの3ヵ月間、秋山はあらゆる方法で話題を提供してくれるだろう。2009年、いよいよ秋山準が動き出す!