2008年度プロレス大賞選考会議

 お約束通り、昨日の正午から行われた2008年度プロレス大賞選考会議の結果と、その過程を綴らせてもらう。選考委員は東京スポーツのプロレス担当記者&カメラマン、サンケイスポーツ、スポーツニッポン、デイリースポーツ、東京中日スポーツ、報知新聞、内外タイムスの各プロレス担当記者、週刊プロレスの佐久間一彦編集長、プロレス評論家の菊池孝さんと門馬忠雄さん、サムライTVキャスターの三田佐代子さん、私、選考委員長の柴田惣一さん、特別選考委員の内館牧子さんの31人。内館さんは所用のために会議を欠席、MVP、ベストバウト、最優秀タッグチームの3賞の候補を事前にノミネートしており、他の賞については30人による選考になった。
〔最優秀選手賞=MVP〕武藤敬司
 2008年の顔にノミネートされたのは新日本のIWGPヘビー級王座を奪取し、もうひとつの顔のグレート・ムタで三冠ヘビー級王座も奪取してメジャー2冠に輝いた武藤と、ノアのGHCヘビー級王座を奪取して史上初の新日本、全日本、ノア3大メジャー・タイトル制覇を果たした佐々木健介。さらに「今のジュニア・ヘビー級はヘビー級を凌駕しており、そのトップに立っている男」として丸藤正道の名前が挙がった。
 私が推したのは武藤。IWGP王者の武藤としても、三冠王者のムタとしても自分の世界を創り上げて両団体を王者として盛り上げた力量を評価したからだ。特にIWGPに関しては全日本のシリーズの合間に新日本のビッグマッチに出陣して挑戦者の持ち味を引き出しつつ、それを上回る光を放って王者の責任をまっとうしていたと思う。武藤の戴冠は新日本にとってマイナスにならなかったはずだ。
投票の結果、武藤が28票を獲得して2001年度以来のMVPに輝いた。
〔年間最高試合=ベストバウト〕丸藤正道vs近藤修司(世界ジュニア・ヘビー級戦=11・3両国国技館)
 ここでノミネートされたのは①エメリヤーエンコ・ヒョードルvsチェ・ホンマン(07年12・31さいたまスーパーアリーナ)②永田裕志vsカート・アングル(1・4東京ドーム)③鷹木信悟&B×BハルクvsKENTA&石森(GHCジュニア・タッグ戦=3・20大田区体育館)④諏訪魔vs棚橋弘至(チャンピオン・カーニバル優勝決定戦=4・9後楽園ホール)⑤中邑真輔vs武藤敬司(IWGPヘビー級戦=4・27大阪府立体育会館)⑥KENTA&石森太二vs中嶋勝彦&飯伏幸太(GHCジュニア・タッグリーグ公式戦=8・30ディファ有明)⑦丸藤正道vs近藤修司(世界ジュニア・ヘビー級戦=11・3両国国技館)の7試合。
 議論&投票の結果、永田&アングル、中邑vs武藤、丸藤vs近藤の3試合が残り、決選投票の結果、丸藤vs近藤が過半数以上の19票を獲得した。
 私の中では2試合が候補だった。ひとつは4・9後楽園のチャンピオン・カーニバル公式戦として行われた武藤vs棚橋、もうひとつはチャンピオン・カーニバル優勝決定戦の諏訪魔vs棚橋だ。武藤vs棚橋は、棚橋が武藤ワールドに飲み込まれずに存在感&表現力でも互角に渡り合った試合。30分時間切れに終わったものの、棚橋がハイフライ・フローの3連発で畳みかければ、武藤もシャイニング・ウィザードの乱れ打ちからムーンサルトの態勢に入ったところで時間切れのゴングという最後までスリリングな試合だった。だが、私が最終的に私がノミネートしたのは諏訪魔vs棚橋。全日本と新日本の次代を担う2人が真っ向からぶつかりあった試合だ。技術的には、特に諏訪魔はまだまだ荒削りだが、変な駆け引きなしにお互いの「勝負しよう!」という気迫と技が真っ直ぐにぶつかり合ったし、会場の盛り上がりも凄かった。こういう若さと気概に満ちた試合こそプロレスなのではないかと私は感じたのだ。
 残念ながら第1回の投票で脱落してしまったため、決選投票では試合として純粋に最高レベルのプロレスを提供してくれた永田vsアングルに入れた。武藤vs中邑もいい試合だったが、あれは完全に武藤の試合。丸藤vs近藤もベストバウトにふさわしい試合ではあるが、それだったら一昨年の近藤vsカズ、昨年の近藤vs中嶋も負けていないはず。どちらの試合も私的には決め手に欠けていた。
 興味深かったのはカメラマンによるKENTA&石森vs中嶋&飯伏のノミネート。やはりカメラマンは被写体として絵になる試合を推すのである。
〔最優秀タッグチーム〕鈴木みのる&太陽ケア
 これも激戦。世界タッグ王者の鈴木みのる&太陽ケア、IWGPタッグ王者の真壁刀義&矢野通、GHCタッグ王者のバイソン・スミス&齋藤彰俊、G1タッグ&最強タッグ制覇の天山広吉&小島聡、GHCジュニア・タッグ王者の金丸義信&鈴木鼓太郎、ドラゴンゲートの土井成樹&吉野正人の6チームの名前が挙がった。
 私は去年と同じく土井吉をプッシュ。タッグ王座は失ったものの、タッグ・リーグ戦は2連覇を果たしたし、最優秀タッグチームと言うからには個々の技や実力ではなく、タッグチームとしての魅力が一番重要視されるべきだと思ったからだ。
 だが、案の定(?)土井吉は第1回投票で脱落し、みのる&ケア、真壁&矢野、テンコジで2回目の投票。最終的にみのる&ケアとテンコジが残り、16対14でみのる&ケアに凱歌が上がった。
 第2回投票からは私はみのる&ケアを支持。確かにテンコジは新日本と全日本のタッグ・リーグを制覇したが、再結成した以上は、新しい魅力を提供してほしかった。みのる&ケアは5月のタッグ結成から当時のIWGP王者&三冠王者コンビの武藤&諏訪魔、健介&勝彦に勝ち、武藤&ジョー・ドーリングから世界タッグを奪取、諏訪魔&西村、テンコジ相手に防衛と着実な歩みを見せていた。合体技を売りにするコンビではないが、考え抜いた戦略、タッチワークの巧さは抜群だったし、あのみのるが入場曲を『風になれ』から『ヒーロー』に変え、リングアナには「鈴木みのる、太陽ケア、GURENTAI!」と個々ではなくチームとしてコールさせ、ケアの潜在能力を引き出すファイトに徹していた。そしてそれにケアも応えた。この2人には「何が何でもタッグチームとして成功してやる!」という強い意志が見えたのだ。地味ではあるが、みのる&ケアの最優秀タッグチームは満足のいく結果だ。
〔殊勲賞〕佐々木健介
〔敢闘賞〕田中将斗
〔技能賞〕鷹木信悟
 昔と違って団体の数、レスラーの数は多いし、スタイルも多種多様。それに対して個人賞の枠は少ないから、ここからは選考委員各自の思い入れや「この選手には何か賞をあげたい!」という気持ちが強く表れるのが殊勲・敢闘・技能の3賞だ。
 まず選考結果からすると、殊勲で名前が挙がったのは佐々木健介、森嶋猛、田中将斗、永田裕志の4人。惜しくもMVPを逃した健介の受賞は当然の成り行きだと思う。
 敢闘賞は諏訪魔、田中、森嶋、KENTA、永田、曙、後藤洋央紀、中西学、鷹木信悟の9人の名前が挙がり、6票の諏訪魔と11票の将斗で決選投票。9対21で田中が勝ち取った。
 技能賞は飯伏、鷹木、杉浦貴、ジョシュ・バーネットの4人から、最後は鷹木とジョシュの争いになり、16対14の僅差で鷹木が受賞。鷹木はスピード&テクニック主体のドラゴンゲートにあってパワーを武器にしていてキャラが際立っている。それでいて他の選手の負けないスピードを持ち、難易度の高い技を仕掛けられても対応できる技術がある。キャリア4年弱でドリームゲート王者になって若きエースに君臨している。私も決選投票では鷹木に入れた。ここではカメラマンがこぞって飯伏を支持していたのが興味深かった。
 私はこの3賞については健介、諏訪魔、森嶋、将斗、真壁を考えていて、誰を落とし、誰をどの賞にノミネートするか悩んだ。そして私の中での結論は殊勲=健介、敢闘=諏訪魔、技能=将斗だった。健介の殊勲は3大メジャー制覇の実績とCMやテレビ番組での知名度を併せたもの。諏訪魔の敢闘はチャンピオン・カーニバル、三冠奪取という実績はもちろんだが、彼が全日本のエースにふさわしいレスラーになるために考え、もがき、苦しんでいた姿を近くで見ていたからだ。これはGHC王者になった後の森嶋にも共通していたが、今年は森嶋ではなく諏訪魔だと思った。将斗の技能賞というのは正直、苦しい感もあり、敢闘の方がふさわしい気がするが、ジュニア・ヘビー級にも入れる体格で火祭り3連覇を果たし、新日本との対抗戦の矢面に立って永田や中西と互角に戦い、かと思ったらガッツワールドなどのインディーでも相手を光らせつつ、きっちりと田中将斗の試合として成立させるのは技能と言ってもいいのではないか。去年、何も賞が貰えなかったのはおかしいぐらいなのだ。ぶっちゃけ、将斗を敢闘賞にしたら、さすがに諏訪魔=技能賞とは言えないので、あくまでも将斗=技能賞で推したかったのだが、結果的には私の目論見は外れてしまったわけだ。
〔新人賞〕澤田敦士
 この賞にも様々な名前が挙がった。受賞した澤田の他にKAI、内藤哲也、浜亮太、坂口征夫、女子プロの松本浩代。新人賞の規定はデビュー3年以内となっていて、あとは選考委員各自の捉え方次第になってくる。私としては「この選手は何年かしたら素晴らしいレスラーになっているだろうなあ」というフレッシュさを大事にしている。言い換えれば、何年か後に「やっぱり新人賞をあげてよかった」と思う選手だ。
このノミネートの中でふさわしいと思ったのはKAIと内藤。11月にデビューした浜は最強タッグの巡業各地で会場を沸かせたが、まだあまりにも未知数。IWGPジュニア・タッグ王者になった内藤は、もはや新人賞の枠を飛び越えているという感覚だ。だから私が推したのは昨年2月にメキシコでデビューし、3月に日本デビューしたKAI。春のジュニア・リーグ優勝はラッキーな面が強かったと思うが、その後の8・31両国での土方に挑戦した世界ジュニア戦は予想をはるかに上回るものだったし、センスと度胸がいい。華もある。そしてジュニアにとどまらずに大きくなりそうな体も魅力。それがプッシュした理由だ。
 受賞した澤田の試合は昨年12・20有明コロシアムのアマゾン・ブレード戦、今年に入って2・16有明コロシアムの小原道由戦、8・15両国の若翔洋戦の3戦しか観ていない。イメージとしては小川道場所属だけに小川直也を小型にしたような感じ。鼻っ柱の強さと骨太さは印象に残っているが、少なくとも夏の両国の時点ではプロレスラーとして身につけているべき基本的なことをマスターしていないように思えた。私の範疇ではプロレスラーではないのだ。
 選考も揉めて、最後は澤田とKAIの決選投票になり、17対13で澤田に軍配。あの石井慧を11・24名古屋でセコンドに付け、リングに上げたことで世間でも話題になったことも加味されての選考になった。そこには「世間に届くレスラーがいてほしい」という要素もあったわけだ。
 私が澤田に望むのは本当の意味でプロレスラーになってくれること。5年後、10年後に「やっぱり2008年の新人賞は澤田で正解だったね!」と言えるレスラーになってくれることだ。
〔功労賞〕グレート草津
〔女子プロ大賞〕該当者なし
 功労賞は6月21日に亡くなった元国際プロレスのエース、グレート草津さん。女子プロ大賞は5年連続で該当者なしとなった。今の細分化された女子プロレス界では「この人が今年の女子プロの顔!」と呼べる人が生まれにくい状況にある。ノミネートされたのは年内で引退する元気美佐恵と子宮筋腫を乗り越えてカムバックし、一度はNEO2冠王者にも返り咲いた井上京子。私は11・12後楽園で小島聡とシングルマッチを行って男子プロレスのファンも振り向かせようとした元気に1票を投じたが、元気も京子も過半数に至らず、残念ながら該当者なしになってしまった。
〔その他〕
話題賞にヒール転向でファンをアッと驚かせた飯塚高史、インリン様、マッスル坂井、団体賞に年間180以上の興行を行い、不況下でも観客を動員しているドラゴンゲート、カムバック賞に永田と小島の名前が挙がったが、どれも過半数には至らず、特別賞は設けられなかった。
 ここからは一度エントリーした内容に補足です。おそらく去年と同じように様々なコメントが寄せられると思います。それは選考委員のひとりとして私自身がしっかりと受け止めようと思いますが、収拾がつかないような状況になることは避けたいし、誰かのコメントだけ掲載して、誰かのコメントは削除するというのも嫌なので、サイト上では敢えて公開しないつもりでいます。ご了承のほどを。

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