3ヵ月半ぶりのSEM空間

 昨日は7月16日以来のSEM。私はこのSEMという空間が好きだ。団体の枠を越えて若い選手が気持ちを剥き出しに向き合うからである。そして選手たちは試合を通して自分の力量を振り返って明日への糧とする。
 昨日の試合ではKENTAにボコボコにされながら、最後まで食らいついていった南野たけしが「このザマですわ。メチャクチャ高い壁やった。全然、あかん。何やこの壁。こんなに差があるとは。正直、ショック…」と素直なコメント。観ている側からすれば大健闘でも、やっている当人が肌で感じることは違うのだろう。
 また、中嶋勝彦に喧嘩を仕掛けて敗れた青木篤志も「今日の負けは素直に認めます。蹴りはかなりきついっスね。ちょっと羨ましいような気もします。強いです。素直に認めます。ちょっとこのショックはデカイかもしれないですね」と素直なコメントを出した。
 こうやって傷つき、悔しい思いをして若い選手は成長していくものだと思う。
 ちょっと残念だったのはHARASHIMA&円華vs石森&伊藤。試合的には面白かったのだが、共に一歩踏み込めずに20分時間切れになってしまった。HARASHIMAはDDTの元KO-D無差別級王者でDDTのエースのひとり、円華も元インディペンデントワールド・ジュニア王者でK-DOJOのトップ(来年からフリー)ということで「メジャー、なにするものぞ!」という気持ちが強かったかもしれなし、ノア勢も構えるところがあったのかもしれない。ここが難しいところだ。意地も大事だがSEMという空間では背景を度外視して純粋に戦ってほしい。HARASHIMAも円華も「技術では負けない。向こうがやるというなら、何度でも来る」と言っていただけに再戦に期待したい。
 

“今のテンコジ”の魅力は

 G1タッグ・リーグ戦はテンコジの優勝で幕を閉じた。決勝トーナメント準決勝では中西&吉江のビッグ・マウンテンズと対戦。体格的にもコンディション的にも中西&吉江の方が明らかに上だ。この相手に対して小島が体をさらした。これは天山のコンディションを考えた上でのもの。一方的に痛めつけられる小島、泣きそうな顔でコーナーから檄を飛ばす天山…これがテンコジの現実である。ファンはそんな“今のテンコジ”を応援した。「プロレス界に友情はある」というベタなテーマを掲げるテンコジだが、共に力を合わせて決して諦めないという姿勢はファンの心を打った。小島の大逆転のラリアットに後楽園ホールは大爆発。
 そして決勝の真壁&矢野戦でもテンコジは共に流血させられ、苦境に追い込まれながらも耐えに耐え、決して諦めずに最後は天山が矢野にアナコンダ・バイス! 38歳の小島と37歳の天山が友情を口にし、感激に涙する姿をファンは素直に祝福した。
 この日のテンコジはリバイバルではなかった。かつての勢いにまかせる元気いっぱいのタッグチームは、若い力に追い込まれる現実をさらした。だが、それが味になっていた。それは“やられの美学”とでも言うべきか。そんな中で仲間を信じること、諦めないことの大切さを訴えた。
「表面上、肉体的には衰えている、弱くなっていると思います。でも、ひとつだけ強くなったのは絆です」と小島。
 そういえば小島はみのる&ケアの世界タッグに挑戦する時に、強さを全面に出すみのるに対して「プロレスに大切なのは強さだけじゃないんだ!」と主張していた。このG1タッグ・リーグ戦ではそれを証明した。強さだけじゃない。だからプロレスは面白いし、味があるのだと私も思う。

リバイバルからリアルタイムへの正念場

 昨日は後楽園ホールでG1タッグ・リーグ戦の最終公式戦。Aブロックでは天山&小島のテンコジが中邑&後藤に勝って首位で決勝トーナメントへ。敗れた中邑&後藤はバーナード&フーラーと決勝トーナメント進出をかけて戦うことになった。Bブロックは現IWGPタッグ王者の真壁&矢野が中西&吉江に敗れて全勝とはならなかったものの、首位で決勝トーナメントへ。勝った中西&吉江は邪道&外道を1点上回って決勝トーナメント進出を果たした。
 さて、私が注目しているのはテンコジだ。全日本の10・11後楽園ホールで鈴木みのる&太陽ケアの世界タッグに挑戦して完敗を喫し、みのるに「もうリバイバル・ブームは終わりだ! てめぇらの知らないうちにタッグマッチは進化しているんだ。お前らの時代は終わったんだよ!」と罵倒され、そのショックを引きずったままG1タッグ・リーグ戦に突入。初戦で飯塚&石井に敗れて先行きが危ぶまれたが、結果的には首位でリーグ戦を突破した。
 だが、まだテンコジは本調子ではないと思う。11・3両国ではF4vs天山&NO LIMITという形でテンコジ対決を行って気持ちを確かめ合ったが、小島自身がブログで書いていたように2人の激突はKAI&大和vsNO LIMITの若いタッグ対決の足を引っ張っていた。私は実況席から観ていたのでよくわかったのだが、ダイビング・ヘッドバットを失敗した天山は右膝に大きなダメージを負っていた。
 昨日の中邑&後藤戦、天山は足の負傷をひた隠しにしていたが、明らかにステップがおかしかった。そして中邑&後藤の集中攻撃を浴びてしまった。耐えに耐え、最後にアナコンダ・バイスで後藤を仕留めたのは天山の意地を感じたが、やはり本来のテンコジとは程遠いものだった。後楽園ホールに充満した天山コールにしても、ほとんど同情と過去のテンコジへの想いからだったように感じられた。つまり“リバイバル”から抜け出せていないのである。
 優勝するには今日2試合戦わなければいけない。果たして天山の体は持つのか? そんな天山を小島がフォローできるのか? この先には全日本の最強タッグも控えている。結果、内容の両方で『昔の名前で出ていいます』ではなく、リアルタイムのタッグチームになれるか…テンコジは正念場を迎える。

ムタとみのるの妙味

 昨日は両国国技館で全日本のPPV解説。解説の仕事というのは、リング上のその場その場の局面を追うために試合の全体像が掴みにくいのだが、丸藤と近藤の世界ジュニア戦は好勝負だったと思う。
 初対決でありながら相手の戦術を読み合い、裏をかき…という攻防は2人のこの一戦にかける意気込みと技量の高さを示していたし、先の10・25日本武道館におけるKENTAとの60分時間切れで評価が分かれた丸藤は改めてプロレスラーとしての力量を見せつけてくれたと私は思っている。
 37分55秒の熱闘だったが、やはり丸藤の方が一枚上。近藤は精一杯、丸藤は八分の印象を受けた。丸藤は静と動を巧く操る。静の時も休んでいるのではなく、その先の試合の流れ、相手の出方をきっちりとシミュレーションして、その上で動に転じる。そんな丸藤を攻略するのは並大抵のことではないだろうが、全日本のジュニア戦線が丸藤効果でレベルアップしていくことを望みたい。
 メインのムタvs鈴木みのるは観客、PPVを観たファンにはどう映ったのだろうか? ヘッドセットを付けていたために客席の反応は掴みにくかったが、セミの世界ジュニア戦とは打ってかわってシーンとしているように感じた。セミでお腹いっぱいになってしまったのか? それとも見入っていたのか?
 私的には、この試合ではムタとみのるがレスラーとしての純粋な力量にプラスしてプロレス頭を競っていたのように感じた。「ムタと武藤敬司は同じじゃねぇか。俺には魔界なんて通用しない」と言っていた鈴木は頭髪もタイツもシューズも白黒にしてのリングイン。「俺の中にも陰と陽がある」というメッセージに受け取れた。きっと、みのるなりにムタという存在、ムタ・ワールドを消化して試合に臨んだのだろう。
 共に自分の間合いをきっちりと持った選手だけに、どちらかが敢えて相手の領域に踏み込まなければ試合は成立しない。踏み込んだのはみのるだった。結果、みのるはムタに飲まれてしまった。
 この試合の大きなテーマになったのは毒霧だ。10・23弘前でムタの闇討ちに遭い、毒霧を浴びたみのるは「あんなものは通用しない。逆にてめぇに毒霧を飲み込ませてやる」と宣言。このタイトルマッチでも一度はムタの口を塞いで逆噴射させ、その後の毒霧もかわしてみせたが、終盤、フォールに行こうとしたところで下からムタが3度目の毒霧。ムタはみのるの口めがけて噴射し、みのるは毒霧を飲み込む羽目になった。
 その後、ムーンサルト→シャイニングで決着がつき、呆気ない幕切れに客席は騒然となったが、ムタがみのるに毒霧を飲み込ませた時点で2人の勝負は着いていたのである。
 ただし、これが客席に、PPVを観ていた人に伝わったかどうか。改めて試合をジックリ観れば、随所にムタとみのるならではの妙味があると思うのだが、それがちゃんと伝わらなければ意味はない。そこがプロレスの難しいところだ。

カブキさんと家族の10年

 ザ・グレート・カブキは1998年9月7日、50歳の誕生日前日にリングを降りた。第2の人生として東京・文京区後楽に居酒屋『かぶき』を開店。そして10年が経ち、カブキは還暦を迎えた。
 昨日は新宿FACEでカブキの還暦&かぶきうぃずふぁみりぃ10周年を記念した『カブキ祭りだョ全員酒ぅ~豪!』なるイベントが催された。さすがに“東洋の神秘”と呼ばれたカブキの記念イベントだけにシークレット・エンターテインメントということで何が飛び出すかわからない破天荒な宴。来場者にはカブキの出身地・宮崎の特産品を使った弁当が配られ、お酒も飲み放題。お客さんの多くは『かぶき』の常連さんだと思われ、プロレス会場でありながら、大宴会場という“いい雰囲気”になった。
 カブキ引退試合の時にペイント&連獅子姿で花束を渡した愛娘・映理ちゃんが小カブキになって父カブキとヌンチャクの共演。当時は幼稚園に通っていた映理ちゃんも高校1年生だ。
 その映理ちゃんが大ファンのモハメドヨネが花束を持って駆けつけ、乾杯の音頭はノアの三沢光晴社長。思わぬ大物の出現に、すでにアルコールが入っている客席は大喜びである。
 第1部はバイオリン漫談、歌謡ショー、マジック、締めはキラー・カーンの熱唱。第2部は和太鼓のオープニングからプロレス編となって第1試合=JWP提供の春山&ボリショイvs日向&KAZUKI。第2試合=トークショーで、これは流智美氏と私が進行役となった。まったく打ち合わせなしのぶっつけ本番。客席の空気を読みながらのアドリブになったのが逆に良かったかもしれない。お客さんが楽しんでくれていたら幸いだ。
トークショー後はNEOの井上京子と元気美佐恵がプレゼントを持って祝辞。ここでカブキ・ファミリーが逆襲に転じてカブキ夫人のやす子さんが京子の長男の誕生日ということで逆プレゼント。家に置いてきたとばかり思っていた京子は愛息の姿を目にするや号泣という場面も…。
 メインエベントは西口プロレス提供のWWT(ワールド・ウェスト・タッグ)王座決定戦。まずはバトルロイヤルが行われ、何とカブキ本人も出場した。勝ち残ったのはカブキ、アントニオ小猪木、ジャイアント小馬場、ハチミツ真也(ハチミツ二郎の橋本真也ネタ)の4人。小馬場と小猪木が小BI砲を結成してカブキ&ハチミツと対戦。最後はカブキ&ハチミツが勝ったが、ここでハチミツが粋な計らい。パートナーの権利をやす子ママに譲り、カブキ&やす子ママの夫婦がめでたくWWT王者になった。ベルトを腰に巻かれたやす子ママは本当に嬉しそうな顔をしていた。
 今回のイベントはカブキ・ファミリーがお店のお客さんたちに対して10年間の感謝の気持ちを表したものであり、お客さん側もそれを労う温かな催しだった。
そしてファミリーそれぞれの想い。カブキさんが引退してお店をやろうと決心した時、専業主婦だったやす子ママは飲食店で何ヵ月間かアルバイトして勉強していた。カブキさんにしてみれば、今回のイベントは10年間頑張ってくれているやす子ママ、常にリスペクトしてくれる映理ちゃんに感謝を込めてのものだったと思うし、やす子ママ&映理ちゃんにとっては頼もしい“BIG DADDY”への感謝だったと思う。映理ちゃんはこの日のためにダブル・ヌンチャクを4ヵ月も練習していたという。
 カブキさん、やす子ママ、映理ちゃん…素晴らしい宴にご招待いただき、ありがとうございました。そして、改めて還暦と10周年、おめでとうございます。またBIG DADDY酒場『かぶき』にお伺いします!