2つの再会ドラマ

 17日の昼、後楽園ホールで開催されたSEMブランドによる健介オフィス興行は若い息吹が感じられる大会だった。メインは健介オフィスVSノアのサバイバル・タッグ4VS4。健介オフィス=健介、勝彦、起田、健斗のフルメンバー、ノア=小橋、KENTA、青木、伊藤という布陣での激突だったが、キャリア半年の起田、健斗を抱える健介オフィスが勝利したのは大健闘と言えるし、片やノアではKENTAが5試合出ずっぱりで55分30秒も戦い抜いたのは立派。試合後、勝彦とKENTAが初めて握手したシーンも爽やかだった。
 この大会には他にも見所があった。それは2つの再会ドラマである。
 ひとつは菊タローと大阪プロレスのくいしんぼう仮面が田上明&菊タローVSなまずマン&くいしんぼう仮面という形で3年4ヵ月ぶりに相まみえたこと。菊タローこと、えべっさんとくいしんぼう仮面の激突は大阪プロレスの名物だった。だが05年4月に菊タローがフリーになったことで2人が激突することは2度とないと思われていた。菊●(一応、本名は非公開なので)がえべっさんを名乗れずに菊タローに改名したことでも、菊●と大阪プロレスの確執の深さはかわろうというもの。それが意外な形で再会が実現し、封印されていたお笑いネタを存分に披露してくれた。菊タローはくいしんぼう仮面との迷勝負数え唄の再開を宣言。24日には大阪プロレスに乗り込むという。
 そしてもうひとつはウルティモ・ドラゴン、南野武、アミーゴ鈴木VS丸藤正道、石森太二、太田一平で実現したウルティモVS石森。丸藤はこの試合の見所を「やっぱり石森でしょう。かつての師匠ウルティモ・ドラゴンとのギクシャクした関係が、リング上でどう表現されるか…」と言っていたが、石森には相当なプレッシャーがあったようだ。
 石森は闘龍門の第9期生で闘龍門Xのエースとしてウルティモが期待をかけていた男。その日本デビューもウルティモの仕掛けによって03年1月の『WRESTLE-1』の東京ドームという大舞台だった。私はウルティモと石森の関係は良好だとばかり思っていたのだが、石森はウルティモに黙って闘龍門を去り、現在に至っていたのだという。
 石森はかつての師匠の前で成長した姿を懸命に見せた。ウルティモにミサイルキック、ハンドスプリング・ハイキックを決め、最後は後輩にあたる闘龍門第11期生の鈴木をスーパースター・エルボーで下した。
 試合後、丸藤に促されてウルティモに一礼した石森。するとウルティモは張り手一閃! そして笑顔で石森を抱き締めた。思わず涙する石森。最後は師弟のサルト・モルタル競演という最高の締めくくりになった。
「いつか当たると思って心構えはしていましたけど、まさかこんなに早くその日が来るとは思ってもいませんでした。いつも以上に緊張しました。やっぱり校長はオーラがあるし、凄い威圧感でしたね。気遅れしてしまったかもしれません。何年か前、何も言わずに出て行った自分ですけど、校長の教えがあったから今がある。凄い感謝しています。戦う前は凄く嫌だったけど、戦ってよかった。今は感謝の気持ちでいっぱいです。最後、いきなりビンタを食らってビックリしましたけど“頑張れ!”って言ってくれて…。門下生の中で一番ひどい辞め方をした自分でも受け入れてくれて“頑張れ!”って言って頂いて、感謝しています」と、石森は時に涙を浮かべて語った。今年3月にはドラゴンゲートのリングにも立った石森。過去に決着をつけて、さらに次のステップに向かっていく。

後藤洋央紀の優勝に思う

 今年のG1クライマックスで優勝戦のリングに立ったのは後藤洋央紀と真壁刀義。ゼロワンMAXの火祭りに続いてG1でも最後まで勝ち上がったのだから、今年の夏男は真壁だったと言ってもいい。
 そして優勝の栄冠に輝いたのは初出場の後藤。正直なところ、これは私にとっては意外だった。というのも、今年のG1で実際に観た後藤の試合は8・11横浜の川田に負けた試合、8・15後楽園の天山にドクター・ストップ勝ちした試合だけだったからだ。どちらも後藤本来の持ち味が出た試合とは言い難かった。
 だが、成績を見れば天山、矢野、中邑、永田に勝ち、川田、吉江に敗れての8点。新日本所属選手には全勝、他団体の選手には全敗という結果。普段戦っている選手たちには勝っても、戦い慣れていない選手に負けてしまったのは経験の浅さか。これは今後の戦いの中で解消されていくものだと思う。
 それにしても新日本は新しい段階に突入しているのだと改めて感じさせられた。ただし、後藤の優勝は早すぎるということはないし、フロックでもない。91年に初めてG1が開催された時、蝶野はキャリア7年足らず、27歳だった。今の後藤はキャリア5年、29歳。このくらいのキャリアと年齢でトップに食い込む人材が出てこなければ困るのだ。全日本でも今年のチャンピオン・カーニバルに優勝し、三冠王者になった諏訪魔はキャリア4年目、31歳だし、ノアのGHC王者・森嶋猛だってキャリアは10年を迎えたが、まだ29歳だ。
 彼らにとって大変なのは、プロレスファンは古くから観ている人が多く、前の世代の人たちの記憶とも戦っていかなければならないところ。だが、焦ることはないし、立場が必ずや成長させてくれるはずだ。
 後藤は今回の快挙によって中邑、棚橋とようやく同じラインに立つことができたというのが本当のところだろう。アントニオ猪木の匂いを感じさせないこの3人が新日本の未来をどう築いていくか。新日本プロレスが真に新しい歴史を創れるかは、この3人の切磋琢磨にかかっている。

笑いなくして未来なし

 昨日はG1両国…ではなく、菊タローが主宰するアキバプロレスのプレ旗揚げ戦を目撃するために秋葉原UDXへ。やはり新団体の発信は見ておきたかったのだ。
 観客は超満員685人。G1ではなく、あえてアキプロを選択したプロレス・ファンもいる。この楽しみ方の幅の広さがあるのもプロレスのいいところ。そして当然、プロレス初観戦の人もいた。これこそが菊タローの狙いでもある。
 もちろん普通のプロレス興行ではない。そこには菊タローのこだわり抜いたプロデュースがあった。まず秋葉原だけに試合前には木原文人リングアナが「ご観戦の際にはシャツをズボンの中に入れてください」とアナウンス。そして大会のコンセプトは秋葉原をめぐっての善VS悪。アキバプロレスは表向きはプロレス団体だが、実は秋葉原の正義を守る秘密結社。そこに横やりを入れてきたのがシャンパンタワーを建設し、ゲームやフィギュア・ショップを廃止して秋葉原を女溢れるホストの街にしようとたくらむ新宿歌舞伎町ホストクラブ『ダイヤモンド・ロマンス』のNo.1ホストのRion。そう、DDTで活躍している美月凛音が今回のプレ旗揚げの重要なキャストとなった。
 第1試合からメインまでテーマとなったのはアキプロVSRionホスト軍団。第1試合の澤宗紀VS内田祥一は純粋なプロレスになるかと思いきや、Rionに新人ホスト養成シャンパンを飲まされた内田がホスト軍団の手下に。澤はポスターを入れたリュックを背負うアキバ系の若者キャラで内田を退治するというドラマ仕立てのスタートとなった。
 第2試合では『百獣戦隊ガオレンジャー』でガオブラック役だった酒井一圭が怪人ローアングラー(ローアングルで女性のスカートの中を激写する悪い奴のキャラ)&戦闘員に襲われたMCのお姉さんを救出するために登場。アキプロは戦隊ヒーローの事務所から電脳戦隊アキバVを投入する予定だったが、夏休みということでヒーローたちのスケジュールが空かずに酒井が窮地に追い込まれるも、土壇場でアキバ・ブラウンが駆けつけた。ブルー、レッド、イエローといった主力キャラを借りるのは無理だったが、微妙な色のブラウンが来てくれたというわけだ。そして酒井も無事にアキバ・ビリジアンに変身! ビリジアンも絵具で最後に残ってしまうような微妙な色。そんなちょっとしたところにも菊タローのこだわりがある。
 さて、試合はいつしか酒井VS戦闘員からアキバ・ブラウン&アキバ・ビリジアンVS怪人ローアングラー&戦闘員に。正義の味方と思われたアキバVもダークな部分があって、酒井が変身したビリジアンがレフェリーの目を盗んで急所蹴りから首固めでフォール。おまけに試合後にはMCのお姉さんを五反田にお持ち帰りしてしまった。戦隊ヒーロー物に大人のテイストもちょっぴり加わっていたわけだ。
 セミのマグニチュード秋葉原(岸和田ニイサンの秋葉原バージョン)&円華VSダンボール肉マン&エル・ブレイザーは純粋なプロレス。ブレイザーの四次元殺法が客席を沸かせた。そしてメインは菊タロー、おでん・カーン、アップルみゆきとRion軍団の全面戦争。ジャンク男1、ジャンク男2をひきつれてRion自ら出陣だ。これも試合的には純粋なプロレスに。最後はメイド服姿のアップルが見事なジャーマンを決めてアキプロに勝利をもたらして、とりあえず秋葉原の平和を守った。
 多分、これを読んでいる人はイメージしにくいだろうし、超くだらないと思うかもしれない。でも、コンセプトがしっかりしていて、しかも映像も駆使した戦隊ヒーロー物仕立てだから初めてプロレスを観た人も入りやすかったはず。菊タローは実際に戦隊ヒーロー・ショーに足を運んで研究したという。そして、どんなに面白おかしいストーリーに沿っていても肝心のプロレスの中身がしっかりしていたからプロレスファンも満足したと思う。まさに戦隊物とプロレスのコラボという試みだった。
「秋葉原で自分がいた頃の大阪プロレスをやってやろうと思っているんです。あの頃の大阪プロレスの熱気を秋葉原に持って来られれば。今回、いろいろ経費がかさんで超満員でも大赤字ですけど、1回やれば、いろいろな企業にアピールできると思うんですよ。今日もいくつかの会社の方が観に来られていましたしね。タイアップしていけばゲート収入に頼らないで収益を上げることも可能だと思うんですよ。僕はアニメ、ゲーム、プロレスはリンクすると思うし、既存のプロレスとは違う新しいジャンルとしてアキバプロレスを秋葉原に根付かせたいと思っています」と菊タロー。
 今回のプレ旗揚げにあたっては裏でマッスル坂井が随分と協力していた。だが『マッスル』とも違うカラーが出た。総合プロデュースする人間が違えば、違うカラーになるのである。
 アキバプロレスのロゴマークはガチャガチャのカプセルをイメージしたもの。このカプセルの中に菊タローの夢やアイデアがいっぱい詰まっている。そしてカプセルの上にある文字はno smile,no future=笑いなくして未来なし。人々に活力を与えるという使命感を持ったアキバプロレスは、立派なプロレスだと私は思っている。

IGF『GENOME』の面白さとは

 IGF『GENOME』は不思議な世界だ。プロレスの試合として観た場合、満足度が高いかと言えば「?」となる。昨日の両国大会にしても、プロレスの試合として満足できたのはセミのカシンVSネクロ・ブッチャーVSロブ・ヴァン・ダム(RVD)の3WAYマッチぐらいなもの。3人が3人ともにプロレス頭を持つアドリブの利く男たちだけに、かなり面白かった。ネクロに雪崩式ブレーンバスターを決めようとするRVDにカシンがパワーボム、グーパンチだけでなくタイガー・ドライバーも披露したネクロ、RVDはファイブスター・フロッグ・スプラッシュ、前転してからサマーソルト・ドロップを放つローリング・サンダーの2大必殺技を公開…と、乱戦の中でもそれぞれが持ち味を存分に発揮してくれた。他の試合に“プロレスならではの攻防”がなかっただけに、余計に光って見えたのかもしれない。
 ただ、他の試合にしても“プロレス”を取っ払ってしまえば、結構面白かった。第1試合でアレクサンダー大塚と戦ったエリック・ハマーのキーロックをリフトアップ、相手を1回転させるラリアットなどのパワフル・ファイトは特筆もの。フィニッシュの片羽絞めのような形からスープレックスでぶん投げるハマー・スパイクも一見の価値ありだ。タカ・クノウと戦ったジョン・アンダーソンの筋肉の塊のような体も凄かった。フィニッシュはニルヴァーナという名称がつけられていたが、ようはヘッドロック。今の時代にヘッドロックを決め技にしてしまうなんて、それだけでも驚きだ。何だかよくわからないが「わあ、すげぇな、こいつ!」と思わせてくれる外国人選手が登場してくるのは、昔のプロレスの定番だった。その意味ではIGFは日本のプロレスの原点を押さえているのかもしれない。
 あと私的に面白かったのは若翔洋と澤田敦士の相撲VS柔道。最後は若翔洋の相撲タックルを受け止めた澤田のDDTで呆気なく決まってしまったが、若翔洋の頭からのぶちかましの威力、顔を張られても何ともない打たれ強さは、力士の強さを体現していてワクワクさせられた。
 試合を終えて、何だか猪木さんの「屁理屈並べてもしょうがないだろ。面白きゃいいじゃねぇか!」という声が聞こえたような気がした。IGF『GENOME』には理屈も整合性も何もない。だから、すべてから解放されて楽しむのが一番いい!

Gスピリッツ第8号の表紙&主な内容です

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 8月20日(水)の発売まであと5日! Gスピリッツ第8号はこんな感じになっています。旧UWF特集は、もはや書き尽くされた「どんな理想を目指したのか?」というのではなく、その根本に立ち戻り、UWFという団体が生まれた政治的背景、その裏で動いていた人たちの思惑、UWFが本来担っていたはずの役目、この団体の誕生が日本マット界にどんな影響を及ぼしたのか等、今までとは違った視点で迫っています。あとは読んでのお楽しみ。乞うご期待!
★もうひとつのUWF史~猪木の誤算と馬場の野望~
水面下で合意に達していた新日本vs全日本の全面対抗戦
藤波辰巳&佐山聡の新団体『ワールド・プロレスリング』構想
クーデター事件の裏側で馬場が暗躍…全米制圧&タイガー獲得計画の全貌
長州ジャパンvsハリケーンズvsUWF!実現寸前だった大晦日オールスター戦
前田日明をビール瓶で殴った男・坂口征二が語る「事件の真相」
渕正信が明かす全日本道場の真実 馬場のシュートテクニックとは?
Uの扉を開けたルチャ戦士――マッハ隼人
【特別企画 Uの源流を探る】
カール・ゴッチとキャッチ・アズ・キャッチ・キャン
“蛇の穴”ビリー・ライレー・ジムの実像
欧州時代の足跡――ベルギーのカレル・イスタス
★ロングインタビュー=掣圏真陰流・興義館総監 佐山聡の未来図
【クローズアップ】
韓国プロレス界の興亡
“大帝”レネ・グアハルド
BIのメキシコ遠征秘話
【特別付録DVD=創立15周年記念みちのくプロレス特集】
『大江戸炎上』
1994年4月29日/東京・大田区体育館 観衆4800人(超満員札止め)
▼時間無制限1本勝負
SATO、ケンドー、獅龍VSスペル・デルフィン、ラムズ、愚乱・浪花
▼『新崎人生“真”八十八番札所』時間無制限1本勝負
ザ・グレート・サスケVS新崎人生
『永遠の炎~Eternal Flame~』
1994年10月30日/岩手産業文化センター屋外第一展示場 観衆5667人(満員)
▼30分1本勝負
SATO、テリー・ボーイ、獅龍VS新崎人生、TAKAみちのく、愚乱・浪花
▼『ノーロープ有刺鉄線電流地雷爆破ダブルヘル時限爆弾デスマッチ』時間無制限1本勝負
ザ・グレート・サスケVS大仁田厚

G1後楽園雑感

 昨日は後楽園ホールでG1クライマックス3日目。「遂にG1も後楽園でやるようになったか…」とお嘆きの方もいるかもしれないが、この後楽園ホールこそ基本。ここを満員にして、そのお客さんを満足させてからがスタートなのだ。G1だって90年8月の後楽園ホール7連戦の成功によって生まれた企画である。実際、昨日の後楽園も超満員で盛り上がった。この熱が16、17日の両国につながればいい。
 さて、ここで私が星取りの行方を書いても仕方がない。それは他の情報サイト等に任せて、G1公式戦以外についてツラツラと書こうと思う。まずは第1試合の小島聡とミラノコレクションATの合体について。ミラノがいつものように透明犬ミケーレを連れて登場。すると小島も透明犬を連れて登場! こういうことができるようになったのは小島の心の余裕が出てきた証拠。レスラーでありながら、今もプロレス・ファンでインディー系にも詳しい小島だけにミラノのキャラをやってみたかったのだろう。素のままに遊び心を出せるようになったのだから、もう心配ない。G1の方は1勝1敗だが、勝ち星を挙げた中西戦では相手をロープに振って、自ら走り込んでのスタン・ハンセン式ラリアットを使っていたのが印象的だった。今回のG1は小島にとっては自分を取り戻す大切な時間なんだと思う。
 小島以外に昨日の後楽園で注目していたのは川田利明と石狩太一の元・師弟コンビの復活。全日本プロレス時代、石狩は川田の付き人を務めていて、2005年春に川田がフリーになった時には追従するように全日本を退団。川田と共にハッスルを主戦場にするようになった。そして“お調子者キャラ”のハッスルIとして人気を博したものの、06年春に「エンターテインメントではないプロレスをやりたい!」とDSEとの契約を解除して、川田と袂を分かって現在に至っている。
 川田は石狩をかわいがっていた。05年7月18日の東京ドームにおける三沢戦を前にした川田を箱根の温泉で取材した時も練習パートナーとして石狩を連れてきて、取材後には美味しいお酒を酌み交わしたのもいい思い出だ。そんな過去があるから、私としては昨日のタッグは感慨深いものがあった。
「離れてしまったけど、今の僕があるのも川田さんのおかげだし、今でも師匠だと思っています。試合前に挨拶したら“元気だったか?”って昔と変わらず気さくな感じで。リング上でもリング外でも空白の時間や違和感は感じませんでした。また機会があったら組ませていただきたいと思います」と石狩。最近はミラノとの抗争でヘンな方向(?)に行っている石狩だけに、これを機会に軌道修正できればいいのだが…意外に頑固で「必ずミラノの存在自体を消す!」と意気込んでいるので、気が済むまで突き進むしかないか。

菊ちゃん、こだわりのプレ旗揚げ

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 昨日のサムライTV『S-ARENA』には菊タローが緊急出演。来たる16日午後6時から秋葉原UDXビル2FのAKIBA SQUAREでアキバプロレスのプレ旗揚げ戦をプロデュースする菊ちゃんがPRのためにやって来たのだ。
 まだプロレスだけでは生活できない時代に秋葉原でアルバイトをしていたという菊ちゃんにとって、この興行はアキバへの恩返しであり、プロレス業界活性化の行動でもある。
「アキバっていうと、何だかヘンな取り上げ方をされる場合が多いじゃないですか。そうじゃなくて、様々なサブ・カルチャーの発信地であり、いろいろ面白いものがあるよというのをプロレスファンにわかってもらえばいいし、逆にプロレスに興味がないアキバ系の人がこの興行を観てプロレスに興味を持ってくれたらいいわけです。たとえば“円華、カッコイイー”でもいいし“アップルみゆき、萌え~”でもいいんです。プロレスを観る入口になれば…」と菊ちゃん。
 試合は第1試合から順に列記すると①澤宗紀 VS 内田祥一②坂井一圭 VS ?③???④マグニチュード秋葉原&円華 VS 段ボール肉マン&エルブレイザー⑤菊タロー、オデン・カーン、アップルみゆき VS???の5試合。第1試合は純粋なプロレス、第2試合に出場する酒井は元スーパー戦隊シリーズ『百獣戦隊ガオレンジャー』でガオブラックを演じた本物の戦隊ヒーロー。最近はマッスルに出場しているだけに“楽しいネタ”が期待できる。ちなみにカード中の未発表の“?”という表記については「Xだと大物に勘違いされるので?にしてください」(菊タロー)とのこと。第3試合はカード未発表だから、当日のサプライズということになる。第4試合では岸和田ニイサンがアキバ・バージョンで登場、段ボール肉マンはアキバご当地キャラだ。そしてメインでは菊ちゃん、これまたアキバから有名になったおでん缶をもじったオデン・カーンが登場。実物を見せてもらったが、オデン・カーンのマスクは非常に作りがイイ!
 実はアキバプロレスは表の顔で、本当の目的はアキバの平和を守る組織らしい。そしてアキバにはびこる悪の組織と戦っているのだとか。ということは、この興行にも悪の組織から刺客が送り込まれるはず。随所に菊ちゃんなりのこだわり、しっかりとした設定があるのだ。遊び心と柔軟なプロレス頭を持っている菊ちゃんのプロデュース力に期待しよう!

昨日のG1横浜で印象に残ったのは…

 昨日はG1第2戦の横浜文化体育館へ。所用のために会場に着いたのが午後7時過ぎで、大谷VS井上、天山VS矢野の公式戦が観られなかったのは残念だったが、館内に入るといい感じで盛り上がっていた。
 やっぱりG1は独特の雰囲気があってイイ。選手はもちろん、客席も何だがピリッとした緊張感があるのだ。
 昨日の公式戦で印象に残ったのは川田VS後藤、棚橋VS真壁の2試合。川田VS後藤では、武藤と同じく“アドリブの天才”と呼ばれる川田の懐の深さが改めて見て取れた。後藤がゴングと同時に真っ向からガンガン向かってきても川田はガッチリと受け止める。一見、後藤のペースのように見えても、川田は余裕なのだ。実際、試合後には「お客さんの反応がちょっと鈍かったかな?」と言うほど、冷静に試合を運んでいた。川田は完全に後藤を掌に乗せていたのである。残念ながら後藤は川田の掌から飛び出すことができなかった。最後はやはりタマの数の違いが出た。川田はジャンピング・ハイを跳ねられたらラリアット。これを跳ねられたら垂直落下式ブレーンバスター、それでも駄目ならランニング顔面蹴り! 常に先を読んだ決め技があるのだ。ただ、辛口の川田も後藤の可能性は買っていた。
「プロレス界って“新しい芽”を無理やり作るパターンが多いでしょ? でも、後藤は下積みしているし、最近の“新しい芽”とは違うかな。ルックスがよくてプロレスは駄目って奴が多いけど、技も重いしね。ラリアットが喉に入った時には“このまま背中つけたっていいや”って思ったよ(苦笑)。ここから先は自分で伸びでいくしかないね」とコメント。後藤に何か感じるものが大きかったようだ。
 メインで行われた棚橋VS真壁は、真壁の緻密さが光った。タナの足に集中攻撃を加え、机の上へのニークラッシャー、足へのキングコング・ニードロップ、そして仕上げは監獄固め。ゼロワンMAXの火祭りでは準優勝している真壁は単なるヒールじゃない。ワイルドなイメージの裏ではちゃんと試合を組み立てているのである。暴走コングは確実に進化している。

青い目の飯伏!

 昨日は新木場におけるDDTのビヤガーデン・プロレス最終日。前日の後楽園ではドラゴンゲートのマット・プロレスという貴重なものを観たが、昨日の高木三四郎VSケニー・オメガのエニウェア・ストリートファイトマッチも「観てよかった!」という掘り出し物の試合だった。
 オメガは今年25歳になる米インディーの新鋭。この男が、まるでDDTのために生まれてきたようなハチャメチャなガイジンなのだ。路上プロレスが大好きということで、すぐさま会場外へ。新木場の駅まで行こうとしたから、さすがの三四郎も焦ったという。リングに戻れば、コーナー最上段の三四郎をアリーナ席に設置されたテーブルに突き落としたり、花道に机を設置してひな壇の客席からダイブしたりと命知らずのファイト。ただ破天荒なだけでなく、驚異的な跳躍力と運動神経を持っていて、まさに“青い目の飯伏幸太”である。きっと本屋プロレスをやらせたら、柔軟なプロレス頭で嬉々としてユニークなムーブを繰り出すだろう。
「オメガと俺たちは切磋琢磨していけると思いますよ。あいつのジャパニーズ・インディーの知識と、そのイメージの広がりは凄い。本当にいいガイジンですよ。年内に必ずもう一度呼びます」と三四郎。
 オメガ本人も「私はROHにも参戦したし、遂にDDTにも上がることができた。飯伏は私のアイドルだ。DDT、高木サン、そしてファンが望めば、私はまた戻ってくる。なぜなら、ここが私の居場所だからだ」とDDTを気に入った様子。6日の飯伏とのハードコア変則ルールマッチ3本勝負(1本を路上、1本をリング上で取らなければ勝ちにならない=2-1で飯伏が勝利)も観たかった!
 さて、ビヤガーデン・プロレスだが、私は今回が初体験。客席のアリーナ部分にテーブルを置いて、ビールを飲み、おつまみを食べながら観戦できる。2回の休憩時間があって、その間に飲み物や食べ物を買うことができ、試合を終えたレスラーもフード・ブースに来るからファンとレスラーのコミュニケーションもある。とても雰囲気のいい、居心地のいい空間だった。大会としては月曜から金曜までプロデュースするレスラーを変えて、それぞれ趣向を凝らしたもの。この最終日以外は観ていないので書きようがないが、以下のように三四郎は総括してくれた。
「みんな、次から次へとよく考えますよ。1週間、ずっと大喜利が続いているような状態で、ちょっとでもテンションが下がると、お客さんに伝わってしまいますから、みんな力が入りますよ。ウチはプロレス頭だけは絶対にどこにも負けていないと思います」
 来年は頑張って1週間通ってみようか!

これがDGの心意気!

 昨日のドラゴンゲート後楽園大会は超満員。観客動員数は主催者発表で2250人だったが、並べられたイスの数は半端ではなかったし、ここ最近ではこんなに入った後楽園ホールは見たことがない。
 そんな大盛り上がりの状態でアクシデントが起こった。神田裕之&Gammaと超神龍&シーサーBOYの第1試合の最中にリングが壊れてしまったのだ。試合のスタートから、やたらとリングが跳ね、大きな音がするので変だなと思っていたら、超神龍が大きくジャンプしたところで1本の鉄柱が大きく曲がってロープが緩み、さらにキャンバスがボコッとへこんでしまった。ロープに飛んだ神田はへこんだキャンバスで右足を取られて負傷。それでも試合は最後まで続けられた。神田いわく「メキシコでロープがちぎれるとかはあったけど、あんな風にキャンバスがぶっ壊れたのは初めて」とのこと。
 問題はその後だ。試合後に八木本部長が斜めになった鉄柱を直そうとエプロンに上がって鉄柱を思い切り蹴ったところ、エプロン部分が陥没したのである。調べてみたら、鉄骨の溶接部分がボッキリと折れてしまったのだ。実はこのリング、土井&吉野がアメリカで発注したもので、この日が初めての使用だった。
 これでリングは完全に使えなくなった。さあ、どうする? 場内がざわめく中、欠場中のCIMAが駆け込んできた。そしてタイフーン、WORLD-1、戸澤塾の面々がユニットを越えて集結してリングの撤収作業。さらにノーリングでの試合決行を岡村社長が発表。90年9月20日にFMWが奈良の橿原体育館で台風のためにリングが到着せずに体育用のマットだけを敷いて試合を強行したことがあったが、同じような状況になったわけだ。
 
 選手みんなでマットを敷き、その上に板を敷き、リング用のスポンジを敷いて、その上からキャンバスを被せてガムテープで固定。構造上は普通のリングとほとんど変わりがないが、フロアに固定されているから弾まずに衝撃が逃げない。これは過酷なリングだ。ロープがない、コーナーもない、そして受け身が取れないような硬いリングで一体どんな試合をするのか?
 ここからが選手の技量と心意気の見せつけてくれた。リング作りをやっていた戸澤はそのまますぐにマグニチュード岸和田との一騎打ちを迎えたが、戸惑いを見せずに気迫のファイト。これがお客さんの心を掴んだ。フィッシャーマンズ・バスターで叩きつけられると、衝撃が逃げないからドスッと鈍い音。ラリアットを食えば、後頭部をマットに打ちつけて、これまたゴツンと鈍い音が響く。最後は岸和田の逆片エビに敗れたが、戸澤は最後まで腰が引けることなく精一杯の戦いをやってくれた。
 その後に続いた選手も燃えた。堀口VSアンソニーVS忍の3WAYマッチでは、アイスリボンなどでマット・プロレスを経験している忍が持ち味を発揮。勝利をものにして「俺はこういうリングに慣れているんだよ」とアピール。望月&フジイとヤング・バックスのタッグ・リーグ公式戦はヤング・バックスが逆転勝利をモノにしたが、望月&フジイはリングと場外の段差がないことを利用して会場全体を使う戦いで盛り上げてくれた。ちなみにヤング・バックスは「アメリカのリングは駄目だ。申し訳ないことをした」と、何の責任もないのにドラゴンゲートの関係者に謝っていたという。
 休憩を挟んで行われた鷹木&キッドVSハルク&谷嵜、リョウスカVS新井&岩佐、土井吉VSサイバー&YAMATOのタッグ・リーグ公式戦3試合はそれぞれのチームが作戦を立てる時間があったためか、ノーリングの不自由さを感じさせない試合を展開。ロープがない分は花道から助走をつけて走って補ったり、イスや机を使って立体的な技を生み出したりと、ドラゴンゲートの選手ならではの臨機応変さ、センスが光った。
 そして何よりも凄かったのが、技の出し惜しみをしないで平気で投げ技をバンバンやったこと。ボディスラム1発、ショルダースルー1発が必殺技になり得る緊張感の中で次第にジャーマンやバックドロップまで爆発し、客席からは「投げ技はもうやめてくれ!」という声も。
 メインの土井吉とサイバー&YAMATOは時間切れギリギリの19分12秒という大勝負。今回のリングを発注した土井吉は、まるでファンに詫びるかのようにサイバーのパワフルな攻撃を食らってバンバン受け身を取りまくった。最後はサイバーのランニング・サイバーボムが吉野に炸裂。仕掛けも仕掛けたり、受けも受けたりだ。
 ある意味、この日の後楽園のお客さんは貴重なものが観られたと思う。極限状況の中、ドラゴンゲートのレスラーたちの隠された技量、プロ根性を観ることができたし、リングの重要性もわかったと思う。昔の整備されていないリングではボディスラム、ブレーンバスター1発でも勝負が決まるのも納得である。ただ、貴重なものが観られたといっても、それは結果論だし、中には満足していないお客さんいるだろう。だからこそ試合後にレスラーたちが自発的にお客さんを見送った姿勢には感心させられた。
「お客さんの温かさに救われました。そして、あんな硬いところで選手がよくやってくれました。今のところ大きな怪我の報告がないのでホッとしています。ウチの選手は何か起こっても、自分が何をするべきかを考えてすぐに行動してくれる。今までもそうして窮地を乗り切ってきました。もともと、あり得ないところから始まっている団体ですからね。今日はお客さんに温かい気持ちをいただき、選手たちにもいいものを見せてもらいました」と岡村社長。
 この後楽園大会はお客さんの気持ちとドラゴンゲートの選手&フロントの団結力、選手のプロ意識&力量が生んだ奇跡の大会だったと思う。