懐かしくて新しいハードヒット

 昨日は新木場でDDTが昼夜のダブルヘッダー。昼の試合は抱えている原稿の締め切りが迫っていて行けなかったが、夜の新ブランド『ハードヒット』には出向くことができた。スポーツライクなプロレスを打ち出す『ハードヒット』は通常の3カウント、ギブアップ、KOに加えてロープ・エスケープ、ダウンがロスト・ポイントになる5ロスト・ポイント制を導入したもの。簡単に説明すれば新生UWFの初期の頃のルールと同じような感じだ。
 試合前に和田良覚レフェリーが若手選手を使ってルール説明、全選手入場式という流れは、かつてのUWFのようで懐かしい。
 だが、これはUWFのパロディではない。プロレスが多様化した中でのDDTの新たな試みなのだ。第1試合では、上井文彦氏がかつて上井ステーションでエースにしようとしていた総合格闘家の毛利明彦とK-DOJOの関根龍一が対戦。毛利が膝十字や腕十字でエスケープ・ポイントを奪えば、関根は何とドロップキックでダウン・ポイントを奪うというスリリングな展開に。最後は毛利が飛びつき腕十字でタップを奪ったが、膠着もなく、緊張感のあるいい試合になった。
 かつてのUスタイルというと、同じような試合が続くケースが多かったが、プロレスが多様化して、レスラーの頭が柔軟になってきているから、それぞれのカラーが出る。参加している選手がこのルールの中でどんなことができるのかを実験しているのが面白かった。UファイルのスタイルE所属の竹田誠志と戦った高木三四郎は、普段は使うことのないプロレスの基本技ダブルリストロックでエスケープ・ポイントを奪い、ボディスラムから間髪入れずにコーナーに駆け上がってダイビング・エルボーという大胆な攻撃にもトライした。最後はパワーボム、ラリアットでKOだ。
 HARASHIMAとパンクラスMISSIONの冨家飛駈の試合は17分を越えたが、UWF→藤原組→パンクラスで培ってきた冨家のキーロックから腕十字、脇固めとおもいきやアキレス腱固め、肩固めからスリーパーといったサブミッションの妙技が観客を惹きつけた。最後はHARASHIMA=3ロスト・ポイント、冨家=1ロスト・ポイントという状況からHARASHIMAがキックのラッシュで立て続けにダウンを奪って最後は逆転KOするという、まさにUWFを彷彿とさせるようなスリリングな試合だった。
 メインはユニオン所属の石川修司が飯伏を共に4ロスト・ポイントという状況で、スープレックスから32文ロケットキック(顔面へのドロップキック)でTKO勝利。195センチ、120キロの石川は池田大輔のフーテン興行に参戦してバチバチ・ファイトで頭角を現している。そこで培った実力と経験が『ハードヒット』という新ブランドで結果として出た。
「フーテンではルールが曖昧なんですけど、この『ハードヒット』はロスト・ポイントがあったり、ロープ・エスケープやダウンできっちりと攻撃をストップさせられてしまったりと勝手が違いました。特にロスト・ポイントは戦っている間にわからなくなっちゃって焦りました。でも楽しかったです。飯伏とは今まで1勝3敗で負け越していたんですけど、ユニオンに来て2年…バチバチに出たりの自分の道は間違っていなかったと思います。U出身の高山選手と、このルールでいつか戦えるような選手になりたいです」(石川)
 石川がルールについて語っていたが、これがミソ。かつてのUWFは選手がやりすぎないように制御するためのルール作り、ファンが楽しめるゲーム性のあるルール作りを心がけていた。そうなると、規制がきっちりするのは当然だし、ゲーム性ということでロスト・ポイント制を取り入れてこれが成功したのだ。ただ、3カウント・フォールを廃止したためにプロレス的な要素が薄れてしまった。
 今回の『ハードヒット』はUWFのゲーム性、スポーツ性を取り入れつつ、プロレスの3カウント・ルールを残した。そして選手たちはそのルールの中で自分自身のプロレスの可能性を試そうとしている。この懐かしくて新しい試みは、かつてのUWFファン、多様化したプロレスを消化して観ている今のプロレス・ファンの両方に受け入れられるのではないかと思う。

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