中邑スタイル

 昨日は後楽園ホール昼夜2連戦。昼はドラディション、夜は新日本プロレスだった。順番から行けばドラディションだが、やはり夜の中邑真輔VS棚橋弘至のIWGP戦について書きたい。1・4東京ドームで棚橋から中邑に王座が移動したばかりだが、棚橋は春の祭典NJCを勝ち上がり、現時点での新日本のトップであることを実証してリマッチ=挑戦権を掴んだ。シチュエーション的には最高だ。
 後楽園ホールは超満員。立ち見客が膨れ上がっている光景は久しぶりのような気がする。振り返ると、去年のNJC決勝の永田VS真壁あたりから後楽園ホール大会に熱気が戻ってきた。あれから1年…この熱が両国、東京ドームまで波及することを願いたい。
 さて、注目のタイトルマッチは…私的には1・4東京ドームより見応えがあった。共に自分の技を大切にして、試合のペースを自分に引き寄せようという感じでいたずらに大技を出すことはない。たとえば、開始5分過ぎまでの段階で王者・中邑はヘッドロックを中心に試合を組み立て、出した技は基本のボディスラムぐらいなものだった。
 先に試合を転がしたのは棚橋。巧みに足攻めでペースを掴んでテキサス・クローバー・ホールドの布石を打つ。中邑が雪崩式ランド・スライドを狙えば、棚橋はそれをパワーボム、だが中邑は下から三角締め、その三角締めをテキサス・クローバー・ホールドに切り返す棚橋…といった高度な読み合いも展開された。
 最後も見応え十分。棚橋はスリング・ブレイド2連発、ハイフライフロー、中邑もランド・スライドと決め技を出したが決まらない。奥の手として巻き込み式の飛びつき腕十字を決めにかかった中邑だが、これを見切った棚橋は丸め込み、決まらないと見るや、すかさずジャパニーズ・レッグロールに入ったが、カウント2で中邑が腕十字に切り返す。私は腕十字というフィニッシュは好きでなないのだが、この中邑の切り返しはビシッと決まった。文句のないフィニッシュだった。
 正直な話、私は、今まで中邑真輔に魅力を感じていなかった。それは中邑をプロレスラーとしてイメージしにくかったからだ。だが、この棚橋との防衛戦を見て、腕十字でも様々な表現ができるのだなと感じた。今後、世界や他団体にも目を向けるというが、その中で「一番すげえのはプロレスなんだよ!」という言葉に説得力を持たせられるようなオリジナルの中邑スタイルを築いていってほしいと思う。

ノアのタッグリーグ戦開幕

 ノアの『グローバル・タッグリーグ戦』がスタートした。昨年はジュニア・タッグリーグ戦、GHC次期挑戦者決定リーグ戦、GHCタッグ王座決定リーグ戦を開催して地方でのカード強化をしたノア。今回のタッグリーグ戦は年間の恒例行事として定着させたいようだ。
 開幕戦となった昨日の後楽園ホールはいいムード。このところSEMでやり合っている伊藤と山口のノアVS健介オフィス若手対抗戦が第1試合に組まれたこともあって、いきなり会場は熱気ムンムン。私にしてみれば、何だか全日本プロレスにジャパン・プロレスが乗り込んできた時のような活気を感じる。山口竜志だけでなく、2月にデビューした起田高志、宮原健斗も新人とは思えない体力と技量を持っているから今後の若手戦線が楽しみ。今、ノアの中で谷口、青木、伊藤に差をつけられてしまった感がある平柳と太田にVS健介オフィスできっかけを掴んでほしいと思う。
 タッグリーグ公式戦は2試合。まずは健介&勝彦VSディーロ&ブキャナン。かつて全日本マットで戦っているから知らない間柄ではない。健介&勝彦にとっては、やりやすい初戦だったはずだが…ディーロ&ブキャナンはやっぱりメジャーリーガーだった。体がデカイ、パワーがある、当たりも強い、動きも速い、そして巧い! 昨年5月にノアに初参戦した時には、全日本のROD時代のようなファンの支持がなくてどうなることかと思ったが、10月にGHCタッグ王座を奪取して実力を証明し、10・27武道館で丸藤&杉浦にベルトを奪われた試合で完全にノア・ファンに認知された。昨日の後楽園ホールでも、ちゃんと観客とコミュニケーションを取っていたから全日本時代の経験は無駄ではなかった。最後はブキャナンが健介のノーザンライト・ボムに敗れたものの、私は敢えてこのディーロ&ブキャナンを優勝候補に推したい。
 メインは森嶋&ヨネVS秋山&力皇。これは去年の4・1後楽園の再戦でもある。その時はGHCタッグ王者の森嶋&ヨネに秋山&力皇が挑戦して、秋山組が王座奪取に成功している。結果から書いてしまえば、今回も秋山組が勝った。ハッキリ言って、セミの健介&勝彦VSディーロ&ブキャナンの方がいい試合だったと思うが、このメインもハードな戦い。森嶋とヨネは爆弾を抱えている力皇の首を徹底的に狙ったし、また新GHC王者・森嶋が試合の途中から右腕を気にし始めて、試合後には医務室に直行している。各選手が体を張った過酷なリーグ戦になることを予感させるような試合だった。
 やはり注目は健介&勝彦絡みのカードになると思うが、どれもタッグ選手権と言っていいようなカードばかり。今日の越谷・桂スタジオでは、早くも健介&勝彦と現GHCタッグ王者の丸藤&杉浦が激突する。
 
 

金村キンタロー復帰について

 昨日のメビウス新宿FACE大会で金村キンタローが復帰した。今回、金村に復帰の場を提供した折原昌夫に対して批判の声が相次いだ。これは当然だと思う。ただ、折原が自分の興行の話題作り、金儲けのために金村をリングに上げるのはいかがなものかという批判はちょっと違うと私は思った。私が知っている折原はそんな人間ではないからだ。だいたい当たり前に考えれば、金村を上げるのは興行的にむしろリスクを背負うことになる。誰がわざわざそんなことをするだろうか。試合前、控室の通路で折原とバッタリ顔を会わせた。
「いや、いろいろ言われるのは承知の上ですよ。最初に金村を上げる団体は絶対に叩かれるでしょ。だから、本当は金村を上げたいと思っている団体もあるはずなのに二の足を踏むんですよ。あいつはね、1年も試合しないでいたら駄目になっちゃうんですよ。今日、試合前、俺も一緒にリングに上がってお客さんにお詫びしますから…」
 と折原。是非はともかく、折原は過ちを犯した友人を社会復帰させたいの一念だったように思う。ただ、試合後に批判的なファンに対して挑発的なコメントを発したのはいただけない。それは「わかってほしい」という意味なのだろうが、そうやっていらぬ誤解を招いて、これまで損をしてきたではないか。折原の純粋さ、一本気な性格を知っているだけに、くれぐれも誤解を招くような言動、行動は慎んでほしいと願う。
 金村は終始、神妙だった。ちょっと痩せていた。私は、金村に反省はあると思うし、折原への感謝もあると思う。被害女性と示談が成立したのなら、遅かれ早かれプロレスラーなのだから試合をするという流れになっていたはずだ。
 だが、それでも、業界に及ぼした影響を考えれば、やっぱり早過ぎる復帰だったと言わざるを得ない。アパッチプロレス軍だって活動を自粛しているのだ。少なくともアパッチが活動を再開し、アパッチのメンバーが受け入れてくれて、最初にアパッチのリングで活動を再開するというのが筋ではなかったか。この復帰を、様子を窺っていた他団体はどう見たか? 今回の“早過ぎる復帰”によって、金村は逆にいばらの道を選んでしまったかもしれない。

SEMに集まるエネルギー

 今、プロレスリングSEMが面白い。元々はノアの若手のための大会だったのが2月から他団体に門戸を開放し、まず健介オフィスが参戦。若手による対抗戦という形になって、とにかく熱いのだ。
 昨日の第11回大会では青木が第1試合で健介オフィスの起田をぶっ潰し、第2試合では石森&谷口VS南野&宮原という形で、かつて闘龍門Xでしのぎを削った石森と南野が火花を散らした。メインでは3月5日の第10回大会で20分時間切れ、5分延長時間切れの熱闘を演じたKENTA&伊藤と中嶋&山口が再戦。伊藤が山口をドラゴン・スープレックスで破り、24分50秒の戦いを制した。
 だが、熱いのは対抗戦だけではない。杉浦VS太田、丸藤VS平柳のノア内の先輩VS後輩は、熱い…というより凄かった。もう、ほとんどかわいがりなのだ。杉浦は太田に何もさせず、ダウンすれば「立て!」と踏み潰して、最後は後頭部にフルスイングのキックをぶちこんで終わり。丸藤も普段の華麗なファイトではなく、張り手、踏みつけ、強引にマットにねじ伏せる体固め…と、エゲツないファイト。あの平柳が悪党ファイトをする余裕がまったくなかった。そして最後はヘッドロックでねじり上げて終わりだ。
「下で健介オフィスの起田クンが見ていたので、甘っちょろいことはできないなと。いや、平柳とは高校時代にレスリングで2回ぐらい対戦しているんですよ。俺は18歳でこの世界に入って、あいつは遅れて入ってきたけど(高校卒業後、サラリーマンを6年やった後にノアに入門)年は一緒。あいつは俺をどう思っているのか…追いつこうと思っているのか、追い越そうと思っているのか、このままでいいと思っているのか。もっと早く潰そうと思えば潰せたけど、裏で言ってもわからないので、お客さんの前で俺はあいつにメッセージを送ったつもりです。あれが今の俺と平柳の差ですよ。これからどれくらいの勢いで、どれくらいの時間で成長するのか…今日のお客さんに次のシリーズでも、その次のシリーズでも成長を見せろと。平柳のヒール? まだ俺の方が悪いでしょ。ワルだって探究していけば、それはそれでいいんですよ。中途半端が一番悪い。俺をワルできりきり舞いさせられるならやればいいし、できないなら方向転換は今のうちですよ。今、若手の間で差がつく分岐点にきているでしょ。そこで何をすべきかですよ。プロなんだから、俺たちの厳しい練習をクリアーしてデビューしたんだから、その頃の気持ちを思い出せって。最後の決め技? ヘッドロックだって決め技になるってことです。俺もそうだけど、若い頃は技を考えたり、大技を使いたかったりするんだよね。俺の場合は世渡り上手だったから、すいすい来ちゃったけど、平柳は俺と違って真面目で世渡り下手だから、しっかりやった方がいいんですよ」
 と丸藤は厳しいファイトを語った。そこには高校で同期だった平柳への気持ちもあるし、セコンドで見ている健介オフィスの選手に見せつけてやるという気概もあった。健介オフィスだけではない。この日のセコンドには、昼間に道場に練習にきていた柿本大地以下、DDTの若手の姿もあった。
 今、SEMの世界には団体の枠を超えて若いレスラーのエネルギーが集まってきている。そのエネルギーは今後のプロレス界の大きなパワーに転換されるはずだ。

Gスピリッツが目指すものは…

 すでにモバイルGスピリッツで告知され、アマゾンなどのネットショップでも明らかにされているが、Gスピリッツ第6号の発売が4月16日(水)に決定した。言い訳させてもらえば、このところダイアリーの更新が不定期になっているのは、Gスピリッツ用の様々な仕込み、取材、原稿書きがスタートしているから。本当は昨日のゼロワンMAXの靖国プロレスにも行きたかったのだが、原稿を優先させた。
 前回の第5号の発売は1月12日。3ヵ月以上も間隔があいてしまい、それまで毎月楽しみにしてくれていた方々には申し訳なく思う。その分、僕たちGスピリッツにかかわる人間は充実した本を提供したいと思っている。
 私は、Gスピリッツに競合誌はないという感覚でいる。週刊プロレスともGリングともまるっきり方向性が違う本だからだ。極端に言ってしまえば、共通点はプロレスを取り上げているということぐらいか。いち早く情報を知りたければネットもある、新聞もある、週刊プロレスがある。そちらでどうぞと言うしかない。
 では僕たちGスピリッツが目指しているものは何か? 「今のプロレスが載っていない懐古趣味の本」という声もある。そういう人たちはちゃんと読んでくれていないのではないかと思うし、そう受け取られたとしたら、それは僕らの力量不足でもあるのだろう。
「あの時代はよかった!」「昭和はよかった!」がテーマではない。あの時代のプロレスはなぜ熱かったのかを、今の視点に立って考察することに僕たちは重きを置いているのだ。そこに必ずや未来のプロレスのヒントがあるはずだから。
 また、物凄いスピードで過ぎていく時間の中で忘れ去られたり、埋没してしまったものの、実は気になっていた試合や事件を独自の視点で発掘することも大事な作業だと思っている。その時には見えなかったものが、時間を経た今だからこそ見える、あるいは明らかにできるということもある。そうやってプロレスを深く味わえる材料を提供したいのだ。
 Gスピリッツはプロレス情報誌ではなく、プロレスを考える専門書。とはいえ、もちろん作り手の自己満足では本はもたない。でも、こういうコンセプトで、本として丁寧に作られたプロレス専門書があってもいいのではないかと私は勝手に思っている。4月16日…ご期待ください。

ドラゲー大田区大会の3人のドラマ

 昨日の大田区体育館大会はドラゴンゲートの2008年初のビッグマッチ。見所はいくつもあったが、ここでは3人のレスラーについて書きたい。エルブレイザー、谷嵜なおき、石森太二。根っこが闘龍門の3人…谷嵜は会社の体制が変わったドラゲーにも上がっていた。
 かつて闘龍門XでミニCIMAを名乗っていたエルブレイザーはPACと組んでツインゲート統一王者の新岩相手に初のドラゲーでのファイト。どんなに難易度が高い空中殺法でも滅多にミスをしないエルブレイザーが飛距離が短かったり、ロープの上でバランスを崩したりと失敗を連発。初めてのリングということでロープの太さ、弾力などが計れなかったのもあるだろうが、やはり相当のプレッシャーがあったのではないか。試合はPACがアラケンに押さえられて、白星を飾ることはできなかった。
「付いていけないです。僕が今までやってきたことは何なんだろう。凄く速いし、巧い。取り残された人間は、所詮、取り残された人間なのかなと悲しくなりましたね。今は、またこのドラゴンゲートに出たいという気持ちが大きいです」
 と、傷心のエルブレイザー。だが、かつて神戸の道場で鬼教官をやっていたアラケンは、
「僕の中では感傷的な気持ちが抜けないままの試合でしたね。神戸の道場で流した汗は血よりも濃いってことですよ。時間さえあれば、いつでもこのリングに来てほしい。いや、来てください…敬語ですね。だって昔は練習生だったかもしれないけど、今、彼は独りでゼロワンMAXさんとかで立派にやっているわけですから、それは凄いことですよ。業界内では未だにヤンチャだって聞きますけど(苦笑)、大人になりました」
 と、素直にその成長を喜んでいた。
 谷嵜の場合は1年8ヵ月ぶりの出戻りだけに観客の反応も微妙。前回の後楽園で噛みついてきたYAMATOをインプラントで下したが、客席は爆発とはならなかった。
「僕がこのリングに上がること、YAMATOが拒絶するのはわかります。お客さんの中にも納得していない人もいると思います。だけど俺はこのリングで死に物狂いで戦っていきます。また一からやり直したいと思います」
 と試合後にマイクで挨拶。控室でも、
「言いたいことはいっぱいあるけど、リング上で見せていきたいと思います。よろしくお願いします」
 とコメントするにとどまった。YAMATOへのタッグ結成呼び掛け、その一方での斎了からのラブコール。プロレスに悩んだ末にドラゲーに戻ってきた谷嵜には、今、新たな運命が押し寄せている。
 そして最後にプロレスリング・ノア代表としてKENTAと共に鷹木信悟&B×BハルクのGHCジュニア・タッグに挑戦し、見事に王座奪取に成功した石森太二だ。
 石森は闘龍門Xのエースだった。闘龍門ジャパンが揉めずに体制が変わらなければ、石森は今現在、かなりのポジションにいたと思われる。ところが体制の激変に伴って石森はドラゲーに上がることなく、エルドラドのリングに上がった。そしてノアに触れたことでエルドラドを退団、フリーとしてノアに上がってきた。ノア所属になったのは今年に入ってからだ。紆余曲折あっただけに、このドラゲーに上がるにあたってはエルブレイザー、谷嵜とは違った複雑な気持ちがあったことだろう。
「ドラゴンゲートに上がるのは、これが最初で最後だと決めていたので、ベルトが獲れてよかったです」
 と試合後の石森。だが、その表情に喜びはなく、
「相手の2人はとても自分より後輩とは思えませんでしたね。お客さんが満足してくれたとしても、自分では納得してないです。存在感ではあの2人より負けていましたから。自分の持ち味を出せないままの試合でした」
 と唇を噛んだ。
 エルブレイザー、谷嵜なおき、石森太二。誰ひとりとして自分の試合に満足していなかった。それだけドラゴンゲートに対する特別な感情がそれぞれにあるのだ。

3月の天龍

 昨日のサムライTVはハッスルハウスの生中継のために『S-ARENA』はいつもより1時間遅れの午後10時スタート。9時過ぎにスタジオ入りすればいいので、ナマでハッスルハウスを観ようと後楽園ホールへ。結局、HG&崔VS天龍&RGのセミハッスル終了まで観ることができた。
 今の私はハッスル特有の会場の空気に違和感を感じない。お客さんに「楽しんでやろう!」というハッピーなエネルギーがあるのがいい。ハッスルの世界を丸ごと楽しめばそれでいいのだ。
 オープニングの川田と崔の歌対決というお楽しみもあれば、第1ハッスルではTAJIRI、KUSHIDA、チエの軽快なプロレスがあり、そこにゲストとして8歳のカンフーくんがいる。安生VSバボでは、安生がグランドでバボの鼻と口を塞いで呼吸をできなくするという、道場のスーパーリングではよくある厳しい攻撃にどよめきが起きた。セミハッスルのテーマはHGとRGの喧嘩。芸人同士のプロレスである。そうした諸々の要素すべてがハッスル。プロレスを中心に置いたエンターテインメントという意味では、こなれてきたと思う。
 さて、やはり注目は天龍だ。この3月は天龍にとって充実していたに違いない。1日の全日本・両国で32年前にプロレスのイロハを教わったドリー・ファンク・ジュニアと戦い、13日のリアルジャパン後楽園では初代タイガーマスクと初対戦。そしてこのハッスルではお笑い芸人のRGとタッグを組んで、これまたお笑い芸人のHGと試合をした。師匠、交わることのなかったレジェンド、お笑い芸人…58歳になった天龍だが、今もなおプロレスを堪能している。
 

懐かしくて新しいハードヒット

 昨日は新木場でDDTが昼夜のダブルヘッダー。昼の試合は抱えている原稿の締め切りが迫っていて行けなかったが、夜の新ブランド『ハードヒット』には出向くことができた。スポーツライクなプロレスを打ち出す『ハードヒット』は通常の3カウント、ギブアップ、KOに加えてロープ・エスケープ、ダウンがロスト・ポイントになる5ロスト・ポイント制を導入したもの。簡単に説明すれば新生UWFの初期の頃のルールと同じような感じだ。
 試合前に和田良覚レフェリーが若手選手を使ってルール説明、全選手入場式という流れは、かつてのUWFのようで懐かしい。
 だが、これはUWFのパロディではない。プロレスが多様化した中でのDDTの新たな試みなのだ。第1試合では、上井文彦氏がかつて上井ステーションでエースにしようとしていた総合格闘家の毛利明彦とK-DOJOの関根龍一が対戦。毛利が膝十字や腕十字でエスケープ・ポイントを奪えば、関根は何とドロップキックでダウン・ポイントを奪うというスリリングな展開に。最後は毛利が飛びつき腕十字でタップを奪ったが、膠着もなく、緊張感のあるいい試合になった。
 かつてのUスタイルというと、同じような試合が続くケースが多かったが、プロレスが多様化して、レスラーの頭が柔軟になってきているから、それぞれのカラーが出る。参加している選手がこのルールの中でどんなことができるのかを実験しているのが面白かった。UファイルのスタイルE所属の竹田誠志と戦った高木三四郎は、普段は使うことのないプロレスの基本技ダブルリストロックでエスケープ・ポイントを奪い、ボディスラムから間髪入れずにコーナーに駆け上がってダイビング・エルボーという大胆な攻撃にもトライした。最後はパワーボム、ラリアットでKOだ。
 HARASHIMAとパンクラスMISSIONの冨家飛駈の試合は17分を越えたが、UWF→藤原組→パンクラスで培ってきた冨家のキーロックから腕十字、脇固めとおもいきやアキレス腱固め、肩固めからスリーパーといったサブミッションの妙技が観客を惹きつけた。最後はHARASHIMA=3ロスト・ポイント、冨家=1ロスト・ポイントという状況からHARASHIMAがキックのラッシュで立て続けにダウンを奪って最後は逆転KOするという、まさにUWFを彷彿とさせるようなスリリングな試合だった。
 メインはユニオン所属の石川修司が飯伏を共に4ロスト・ポイントという状況で、スープレックスから32文ロケットキック(顔面へのドロップキック)でTKO勝利。195センチ、120キロの石川は池田大輔のフーテン興行に参戦してバチバチ・ファイトで頭角を現している。そこで培った実力と経験が『ハードヒット』という新ブランドで結果として出た。
「フーテンではルールが曖昧なんですけど、この『ハードヒット』はロスト・ポイントがあったり、ロープ・エスケープやダウンできっちりと攻撃をストップさせられてしまったりと勝手が違いました。特にロスト・ポイントは戦っている間にわからなくなっちゃって焦りました。でも楽しかったです。飯伏とは今まで1勝3敗で負け越していたんですけど、ユニオンに来て2年…バチバチに出たりの自分の道は間違っていなかったと思います。U出身の高山選手と、このルールでいつか戦えるような選手になりたいです」(石川)
 石川がルールについて語っていたが、これがミソ。かつてのUWFは選手がやりすぎないように制御するためのルール作り、ファンが楽しめるゲーム性のあるルール作りを心がけていた。そうなると、規制がきっちりするのは当然だし、ゲーム性ということでロスト・ポイント制を取り入れてこれが成功したのだ。ただ、3カウント・フォールを廃止したためにプロレス的な要素が薄れてしまった。
 今回の『ハードヒット』はUWFのゲーム性、スポーツ性を取り入れつつ、プロレスの3カウント・ルールを残した。そして選手たちはそのルールの中で自分自身のプロレスの可能性を試そうとしている。この懐かしくて新しい試みは、かつてのUWFファン、多様化したプロレスを消化して観ている今のプロレス・ファンの両方に受け入れられるのではないかと思う。

龍虎相打つ!

 ミドルキック、ローリング・ソバットが分厚い肉体に突き刺さる。重いチョップが白い胸板をみるみるうちに真っ赤に腫れ上がらせる。昨日のリアルジャパン後楽園大会で実現した初代タイガーマスクと天龍源一郎の激突は見応えのあるものになった。
 初代タイガーは仮面シューター・スーパーライダー、天龍は折原昌夫をパートナーにしてのタッグ対決だったが、いきなりキックVSチョップの真っ向からの打撃戦に。初対決で相手に体をさらすのは怖いはず。特に打撃だったら1発でもっていかれる危険性もある。だが、両雄共にプロレスラーの心と意地を持っていた。「初代タイガーマスクのキックがどれほどのものか確かめてみたい」「噂に聞く天龍のチョップを受けてみたい」という感情があったに違いない。
 初代タイガーはハイキックも決めたし、旋回式のフライング・クロスアタック、ツームストン・ドライバーも決めた。一方の天龍は顔面ステップキック、グーパンチ、キックをキャッチしてのドラゴン・スクリューを披露。はっきり言って、ふたりとも全盛期を過ぎている。それでも残された夢の対決としてファンの期待に応える試合、攻防をやってのけたのだから、さすがとしか言いようがない。最後は初代タイガーのブレーンバスターを天龍が首固めに丸め込んで決着をみた。
「ローリング・ソバットがアバラ、ミゾオチに入ってペースが落ちたね。下半身の力がスーッと抜けた。それが彼にとっては俺が重くなっちゃってコントロールできなくなったんだと思う。あの重いペースになったら俺の勝ちだよ。初代、2代目(三沢光晴)とやったけど、やっぱりタイガーマスクは魅力的な人だね。今度は絶好調のタイガーマスクとワクワク感だけじゃなくて中身で勝負してみたい」(天龍)
「場外に飛んだ時に(右の)股関節を脱臼してしまいました。チョップは噂に聞いていた以上でしたね。あれで余裕がなくなった。相手に合わせて体重を増やして思い切り蹴る練習をしていましたけど、裏目に出ましたね。蹴っていても200キロぐらいのサンドバッグを打っているみたいな感じで(苦笑)。真っ向から行っちゃって、いつものタイガーマスクのスピードのファイトではなかった。次は本来のタイガーで、体を絞ってスピードで勝負したいですね」(初代タイガー)
 どうやら一夜だけのドリームカードではなく、続きがありそうなムード。そう、ふたりとも頑固な昭和のプロレスラーなのだ。

全日本開幕

 昨日の後楽園ホールからスタートした全日本プロレス新シリーズの主軸になるのはジュニア・タッグ・リーグ戦。ジュニアと言うと新日本のイメージが強いが、全日本のジュニア・タッグの歴史は古い。一番最初は1984年9月。メキシコUWAと業務提携したことで『世界最強ジュニア・タッグ決定リーグ戦』が行なわれ、チャボ&ヘクターのゲレロ兄弟を破ったマイティ井上&グラン浜田が優勝している。その他、大仁田厚&渕正信、ベビー・フェース&フィッシュマンなどが参加していた。2002年にも『世界最強ジュニア・タッグ』は開催されて、渕&浜田のベテラン・コンビを退けてカズ・ハヤシ&ジミー・ヤンが優勝。そして2年前の06年には『2006ジュニア・タッグ・リーグ戦』が開催されてNOSAWA論外&MAZADAが優勝したわけだ。
 2年ぶりとなる今大会は参加チームの実力のバランスが取れているが、そんな中で近藤修司&シルバー・キングはテクニック、パワー、ラフ、インサイドワークとすべての要素を兼ね備えており、メチャクチャ強い。文句なしの大本命である。個人的には新日本を退団して全日本に新天地を求めてきたエル・サムライに注目している。半年のブランクをどうカバーしていくのか、ベテランならではの戦い方を見ていきたい。
 昨日の後楽園でジュニア・タッグ公式戦以外に印象に残ったのは、全日本ファンの諏訪魔に対する大きな期待感。今、三冠王者は健介だが、やはりファンは全日本所属選手の戴冠を望んでいるのだと強く感じた。今、それを託せるのは諏訪魔しかいないということだ。VMでの2年間は諏訪魔がプロレスを感じる上で、レスラーとしての器量を広げる上で必要だった時間。ここからが真のスタートである。
 もうひとつ感じたのは、昨日のダイアリーでも書いたが、健介オフィスの新人たちの骨太なファイト。タッグ・リーグ公式戦に出場した勝彦を除く竜志、起田、健斗が健介と組んで諏訪魔、荒谷、平井、駿河と8人タッグでぶつかったが、全日本初登場となる起田&健斗はまったく物怖じせずに闘志を剥き出しにしての好ファイト。たまたま帰りのエレベーターで吉田万理子に会ったが、吉田は若手を育成する『息吹』興行を主催しているだけに、健介オフィスの新人たちのファイトに感心していた。メインで武藤と組んだ真田、西村と組んだ征矢ももっと頑張らなければ! ということでメインのテレビ解説は多分、辛口になっていたと思います。