まっすぐなワタル

 昨日のサムライTV『S-AREANA』は12・8大阪で田口隆祐のIWGPジュニア王座に挑戦する井上亘がゲスト。私が週刊ゴングの編集長から編集企画室長に異動した後の99年10月デビューだから、コメントを取ったことはあっても個人的に話したことはなかっただけに“素での会話”は新鮮だった。
 ミスター・ハイテンションとして知られる井上だが、素顔は穏やかな若者。その分、リングに上がる時にはスイッチが入ってハイテンションになるのだろう。スイッチが入って別人格にならなければリングに上がれないタイプと言っていいのかもしれない。つまり、それだけプロレスラーとしての自分を突き詰めて考えているし、生真面目。まっすぐなのだ。
 昨日の放送で印象に残ったのは、無断で姿を消してメキシコに渡ったことについて「僕の行動は間違っていました。申し訳ありませんでした」と何度も謝罪していたこと。最近、スポーツ各界で謝罪が頻繁に行なわれているが、井上の謝罪が一番誠意が感じられた。
 これまでファイトがまっすぐすぎて、ここ一番の勝負に勝てなかった井上。その一途なまっすぐさが魅力でもあるのだが、それだけではトップに行けない。それは本人も十二分にわかっている。
「メキシコに行って、凝り固まっていた頭が柔軟になりました」
 という井上が、後輩のチャンピオン田口にどう挑むか? 残念ながら私は会場に行けないが、大阪のファンの人たちには井上の真摯なファイトを見届けてほしいと思う。

もうひとりの勝利者

 昨日の日本武道館では小橋建太の復帰に加えて、もうひとつ嬉しいことがあった。8月に週プロの連載コラム『ボーイズはボーイズ』で胃ガンであることを告白し、休業宣言していたフリーライターの斉藤文彦氏が現場復帰したのだ。
 何気なく記者席の左側を見るとフミちゃんがいる。「ようやく現場復帰だよ!」と以前と変わらない張りのある声。握手した時には私よりも明らかに握力があった。
 フミちゃんはベースボール・マガジン系、私は日本スポーツ出版社系だったから一緒に仕事をしたことはないが、同い年だし、会場ではいろいろな話をしていただけに、彼の大病は他人事ではなかった。我々、フリーの人間にとって体調を崩して仕事ができなくなることは一番怖いことなのだ。
 小橋の試合は並んで観戦。腎臓ガンを克服してリングに上がった小橋の姿をフミちゃんはどう見ただろうか…。
静養中はずっとテレビで各団体、アメリカン・プロレスをチェックしていたという斉藤文彦氏が再び独特の文体でアメリカン・プロレスの醍醐味を伝えてくれることを期待しています。

人生の勝利者

 今日、遂に小橋建太が花道を歩き、そして27分7秒もの試合をした。果たして今日の試合が彼の体にどんなダメージを与えたかは現時点ではわからない。でも、これだけは言える。彼は人生の勝利者だ。
 この1年半、彼は闘い続けてきた。そして様々な医療的な制約がある中で体を作り上げた。精神的にも大変な時期が多々あったと思う。そうしたすべてを乗り越えてリングに立った時点で勝利者である。
 だが、彼は自分自身にさらに高いハードルを課した。自分が自分であるためのリング復帰であると同時に、応援し続けてくれたファン、困難を抱えるファンに勇気を与える試合をするということだ。
 私が最後に小橋に接したのは多聞とのコンビでGHCタッグを獲得した昨年6月4日の札幌だった。試合後、小橋はこう言った。
「これからも1試合1試合、全力でやっていきます。俺たちがファンに返せることは1試合1試合、全力でやることだと思うんで、これからも全力でみんなの声援に応えていきたいと思います。その気持ちがなくなったら、自分じゃなくなるから。この気持ちがなくなったら、リングに上がらないと思いますよ」
 どんなことがあってもその気持ちを持ち続けていたからこそ、今日の復帰があったと思う。思えば、日本のプロレスの原点は人々に夢と希望、勇気を与えることだったはず。その意味で、今日の小橋の復帰戦は日本のプロレスの原点を見せてくれたと言っていいのではないか。
 私は今、思っている。小橋建太のプロレスに対する情熱は1987年6月20日に全日本プロレスに入門した日からまったく変わらない。
 今はありふれた言葉しか見つからない。「おめでとう!そして素晴らしい生き方を見せてくれてありがとう」

昨日の削除の件について

 昨日、モバイルGスピリッツに連動する形で『Gスピリッツ』第4号の表紙を公開しながら、その後に削除しました。それについての事情とお詫びは以下のモバイルGスピリッツのお詫び文章の通りです。
『Gスピリッツvol.4』表紙公開に関するお詫び
12月2日以降に公開するべき『Gスピリッツvol.4』(12月10日発売号)の表紙を当サイトにおいて事前に公開してしまったことで、株式会社プロレスリング・ノア様に多大なご迷惑をおかけいたしました。編集部一同、謹んでお詫びを申し上げます。今後はこのような事態を招かぬよう細心の注意を払って雑誌及びサイトを制作・運営して参る所存です。