12月30日の後楽園ホールの風景

 昨日の後楽園ホールは午後12時からアパッチ、午後7時からDDTの昼夜興行。昼のアパッチは会社の内部的な問題があって大会開催決定とチケットの発券の遅れなどがあったためか、寂しい客入り。それでも、
「当分、後楽園ホールでの興行は無理かもしれないですけど、今度、戻ってくる時には満員に出来るように立て直します。今日の大会にしても中止にしようという意見もありましたけど、ひとりでもチケットを買ってくれるお客さんがいる限りやる。アパッチのファンは我々、選手と一緒に戦ってくれていると思う。Hi69が帰ってくるまでに万全な体制にしたいと思います」(マンモス佐々木)
 と、選手たちのモチベーションは高い。長期欠場を余儀なくされているHi69はこの12月に退院、年明けに故郷・岩手に戻ってリハビリに入るという。左膝半月板損傷で欠場中の葛西は春には復帰の見込みだし、内臓疾患で長期欠場だった非道はメインのマンモス&佐々木貴VS真壁&石井に有刺鉄線バットを持って乱入、復帰近しを印象付けた。
 試合的に最も良かったのはセミの関本とGENTAROの一騎打ち。関本のパワーとGENTAROのインサイドワークの攻防の妙は30分間、まったく飽きることがなかった。
 夜の部のDDTは超満員札止めの熱気ムンムン。ダークマッチで観たくない選手第1位の大家健と第2位の高木三四郎が対決し、しかも大家は“三四郎被害者の会”の新藤リングアナ、佐野直、矢郷良明を公認凶器として使うという“らしいオープニング”からヌルヌル6選手による黄金のローション争奪ラダーマッチなどのお楽しみが随所に盛り込まれていたが、セミのメタル・ヴァンパイア(東郷、大鷲、諸橋晴也)VSアントン、Koo、諸橋正美はお笑いなしのバイオレンスな勝負。そしてメインのファン投票第1位になったKO-D王者HARASHIMAとインディペンデントワールド・ジュニア王者・飯伏の一騎打ちは両者の技巧とハードがぶつかり合った大勝負。数々のお楽しみの後にピシッと締める理想的な大会だった。
 一度、王座から転落したものの、HARASHIMAがKO-D王者になったのは、昨年の12月29日だった。そして今年に入ってHARASAHIMAの防衛戦がDDTのメインに据えられたが、当初はお客さんの反応は今ひとつ。それまでのDDTのカラーやノリと違ったからである。それが1年経ったら、お客さんは満足している。これは大きなことだ。
 社長でもある三四郎は「1年がかりで世代交代した年だと思います。それに対抗するべく俺らはレジェンド軍を結成したわけだけど、今のDDTの興行は俺が理想としていたものだと思いますね」と言う。
 
 数年前のDDTはプロレス業界の枠をはみ出した存在だった。それはそれで戦略として正しかったと思うし、斬新だったが、今、DDTは自信と力を持って業界内に進出している。
 それにしても先週は26日を除いて、後楽園ホールで毎日試合があるというスゴイ状態。そして、どの団体にも熱いファンがいた。プロレスの潜在的なパワーを実感させられた1週間だった。
 私の年内の取材は今日・大晦日の『ハッスル祭り』で終了だ。皆さんにとっては、どんな1年だっただろうか? 今年もまた、このサイトに付き合っていただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。では、よいお年を!

エルドラドに新展開

 昨日の後楽園ホールにおけるエルドラドの2007年最終興行は、新年に向けてのリセットの大会となった。所属選手の大半は他団体で違うキャラで活動しており、今ひとつ独自のカラーが伝わりにくいなどの問題点を抱えているエルドラドだが、2008年は本格的に打って出る。昨日の大会はその布石だった。
 ミラニート・コレクションが師匠ミラノ・コレクションとの一騎打ちを最後にキャラを封印、ドラゴンゲートのマッスル・アウトローズで活躍するマグニチュード岸和田が乱入して谷嵜なおきとの遺恨が勃発、大鷲率いる猛獣惑星に全日本の荒谷望誉が加入、バラモン兄弟がヘルデモンズから菅原を追放…と、新たな展開が続出。極めつけは大会終了後のTARUの登場だ。
 スーツで正装してきたTARUは、
「ただでさえ、団体が飽和状態になっているのに、こんなクソ団体は潰してしまえ! ただ、年末の忙しい時期にこれだけのお客さんが観に来てくれているんだから、やるなら中途半端なことはやるな。いい試合をして男の生きざまを見せろ! お客さんの評価を得ろ!」
 と、後輩たちにエールを送ると同時に2008年からGMとしてエルドラドを仕切り、プロデュースしていくことを宣言した。
「あんなしょうもない中途半端なことやっているんだったら、こんな団体は潰した方がましや。それがプロレス界のためや。でも、何だかんだ言っても可愛い後輩たちやから…可愛いコには旅をさせろやないけど、来年から俺が仕切りますよ」
 と、いつものブードゥー・マーダーズのTARUではなく、多留GMとしての言葉。全日本プロレスで裏番を張っているTARUのアイデアと人脈がどう活きるか…新年からのエルドラドは注目だ。

ドラゴンゲートの年末

 昨日のドラゴンゲート後楽園ホール大会は「年末やから」ということで、スペシャルなマッチメーク。アンソニー、ハルク、キッド(鎖骨骨折のシーサーの代理)がポスハーツを一夜限りで復活させ、メインではCIMA、フジイ、鷹木の初期ブラッド・ジェネレーションとモッチー、享、クネスのファイナルM2Kが激突した。考えてみれば今年1月4日の本川越でブラッドとM2Kはラストマッチをやっている(この時、鷹木はROHにいたため、マット・サイダルがCIMA&フジイと組んだ)が、遠い昔のような気がする。それだけドラゴンゲートの流れは速いということだ。
 その他、斎藤了がサイバー・リョウに変身してサイバー・コングと激突したりと、年末ならではのお楽しみ大会の要素が強かったが、リング上のファイトは相変わらずのグレードの高さ。特にノアの金丸&青木が土井吉のGHCジュニア・タッグ王座に挑戦した試合は25分を越える熱闘だった。
 土井吉と巧者・金丸が絡むのだから好試合にならないわけがないが、印象に残ったのはキャリア丸2年の青木の頑張り。タイトル初挑戦、しかも他団体のリングで初対決の相手にもかかわらず、青木は金丸の好リードもあって土井吉のスピードとテクニックにピタリと付いていった。本人は「金丸さんにリードしてもらったのに足を引っ張ってしまった」と悔しがっていたが、ちょっとした間やタイミングのズレをきちんと認識しているだけでも大したもの。私はプロレス大賞選考会で新人賞に青木を推していたが、来年の十番勝負によって必ずや伸びるはず。2008年はドラゲーとGHCジュニアの絡みがさらに高度になっていくはずだ。
 それにしても、よくお客さんが入った大会だった。普段よりリングサイドの席を増やしても超満員札止め。今年は新日本、ノアなど他団体とも積極的に交流を図り、それが吉と出るのか凶と出るのか危惧する声もあったものの“ドラゴンゲート”という芯がしっかりしていたから、すべていい方向に出たと思う。それまではあまり外部と関わらずに独自の価値観で勝負していたが、外の世界でも十二分にやれる実力を示せたし、若手の台頭というのも大きかった。このファイナルで鷹木がCIMA、フジイをおしのけてフォールを取ったというのも大きい。
 若い世代が育つのをじっと待ち、外との交流も開始した2007年。準備は整った。2008年は一気にジャンプするだけだ。

乗り越える1年

 2007年も今日を入れてあと5日となった。年内に書くべき原稿はすべて仕上げ、昨日は2ヵ月ぶりの完全休養日。あとは明日28日=ドラゴンゲート後楽園、29日=エルドラド後楽園、30日=アパッチ後楽園&DDT後楽園、31日=ハッスル祭りの5大会に行くだけだ。以上を終了すると今年は144大会に足を運んだことになる。
 それにしても今年は本当にいろいろなことがあった。仕事面、健康面、その他諸々を考えると“乗り越える1年”だったように思う。何があるにせよ、乗り越えることができたのだから幸せ。来年も様々なことがあるだろうが、その都度、今年と同じように乗り越えればいい。
 さあ、2007年のラスト・スパートだ!

小橋建太の笑顔

 昨日は正午から都内のホテルで2007年プロレス大賞受賞式。印象的だったのはベストバウト賞&カムバック賞のダブル受賞となった小橋建太のとびっきりの笑顔だ。
「前例のない復帰戦だったし、1試合しかしていない中での前例のない受賞だと思います。どういう状態でも応援し続けてくれたファンのみんなの想いがああいう空間を作り出してくれたと思うし、ただの復帰戦にはしたくないという自分の気持ちに三沢さん、ジュン(秋山)、帝王(高山)が応えてくれた…すべての人たちに感謝しています」
 と小橋。そして、復帰したからには、この試合は小橋にとっては勝敗も重要な純粋勝負。試合後にはダメージと試合に負けた悔しさが大きかったという。「負けたままにしたくない」と言う小橋は、高山とのコンビを1回きりにはしたくないようだ。
 思えば、あの試合はリング上で戦ってきた三沢、秋山、高山の1年半と、リング外で命懸けの戦いをしてきた小橋の1年半のぶつかり合いだった。激しくなって当然である。
 さて新年には1・11高知、1・13博多での試合が決定している。小橋にとっての2008年とは?
「無理しないでと言われるけど、全力でやってこそ先が見えてくる。やらないと見えてこないでしょ? やらないで後悔するより、やるなら全力でやらないと。性格上、中途半端じゃリングに上がらないよ。ベルト? こだわってない。まず1試合1試合…」。
 小橋は汗びっしょりになりながら、多くのマスコミの取材を次から次へと受けていた。
 小橋の闘病中、残念ながら週刊ゴングは休刊になってしまった。だが、『Gスピリッツ』という新媒体ができ、創刊号ではリング外での戦いを、現在発売中の第4号では復帰戦を、ずっと小橋番をやってきた木幡一樹クンの手によって伝えられたことは大きな喜びである。
 今後も小橋の真摯な生き方を、熱い戦いを、そこから発せられるメッセージを、そして飛びっきりの笑顔を伝え続けていけたら、こんなに嬉しいことはない。

平成4年生まれのプロレスラー

 昨日のクリスマス・イブはサムライTV『S-ARENA』。ゲストはJWPのコマンド・ボリショイと新関真由香だった。12月9日にデビューしたばかりの新関は平成4年…1992年1月生まれの15歳。JWPが旗揚げした年に生まれたというのだから驚いてしまう。しかもお父さんは42歳だという。ナニ? 私より4歳も若い父親なのか! ウーン、参った。もう、こんな時代になってしまっているのだ。
 さて、昨日のテーマは大晦日に行なわれる『第5回ジュニア・オールスター戦』。96年の第1回大会では田村欣子と久住智子(日向あずみ)にベストマッチ賞のトロフィーを贈呈したことを思い出す。それからの11年、今回の主催団体であるJWPもいろいろなことがあった。一時期は5人だけになってしまった所属選手が今では12人になったのだから、これは立派というしかない。
 今回のプロデューサーであるボリショイのコンセプトは“動くジュニア選手名鑑”。実に29人もの若い選手が出場する。
「無意識に動く若手レスラーのファイトの中にプロレス最高のテクニックがある」とはデストロイヤーの言葉だったと思うが、若い力の競い合いに期待したい。

トリプル・ヘッダー

 昨日は1日で3大会を観るという強行軍。12時から後楽園ホールのみちのく、16時からディファ有明のノアSEM大会、18時30分から後楽園ホールに戻っての新日本というスケジュールだ。
 みちのくはサスケと佐藤兄弟の宇宙大戦争が目当てだったが、強く印象に残ったのは義経にハッピーマンが挑戦したメインの東北ジュニア・ヘビー級戦。義経は素顔時代から数えるとキャリア4年半。ハッピーマンは5年。ただし試合数を考えれば、もっと浅いと言っていい。そんな2人がみちのくの東京大会のメインを務めたのだ。義経は本当に天才。どんな空中殺法をやっても余裕が残っていて正確。それこそ初代タイガーマスク以上の素質だと思う。「時代が違っていたら…」と思う選手だ。また素顔の義経の性格が天然だけに、リング上を見るとなおさら天才だと思ってしまう。
「このベルトの価値を俺たちの世代で上げていく」
「みちのくは俺が守る!」
 そんな言葉を口にする義経を見ると、本当に成長していると感心する。このまま2008年も伸びていってほしい。ただし、怪我だけには気をつけてもらいたいものだ。
 後楽園からディファ有明に移動。試合開始前には到着した。今回のSEMは豪華カードだ。オープニングでは、今年のジュニア・タッグ戦線でお互いに高め合った鈴木鼓太郎と石森太二が来年のジュニア戦線を睨んで激突。第2試合ではGHCジュニア王者・金丸に来る1・18栃木で川畑の白GHCに挑戦する伊藤がアタックした。第3試合は1・20後楽園ホールでの十番勝負第1戦で健介と対戦することになった谷口がヨネと激突。休憩時間後の第4、5試合は師匠VS付人で田上VS平柳、三沢VS太田。セミは青木が秋山と十番勝負第1戦、メインは森嶋&潮﨑VS丸藤&KENTAだった。SEMのコンセプトは若手による大会だが、このラインナップは後楽園ホール級。それだけ若い人材が育っているということだ。
 ヨネとのバチバチ・ファイトでKOされた谷口だが、やはりヘビー級の馬力と頑丈さは魅力。この日のように弾ければ、健介ともいい試合になるはずだ。師匠VS付人では田上、三沢の優しさが見えた。共に若い人間の攻撃を真っ向から受け止めて、田上は喉輪落としから俺が田上、三沢はタイガー・ドライバーからエメラルド・フロウジョンと、共に必殺フルコースで仕留めた。「顔じゃねぇ!」といなすのではなく、きっちりと自身のフィニッシュ技を使って、そのダメージを体で教えてやる。特にツバ吐くなど、悪態をつきまくった平柳に肩を貸しながら引き揚げていった田上の姿は微笑ましかった。
 この2試合とは対照的に青木と同じ目線で戦ってシビアに潰しにかかったのが秋山。それは十番勝負という意味合いもあるし、青木がそのレベルまで来ているという証拠。そして「ここまでやれれば、あとの9戦も乗り切れるだろう」という秋山ならではの厳しい優しさだと思う。
 メインの森嶋&潮﨑VS丸藤&KENTAはこれからのノアのメイン。ここ1~2年、“ノア新時代”という言葉が使われるが、あと1年経ったら、この4人が間違いなくノアを引っ張っているのではないか。
 このSEM興行後、後楽園にUターンしたのが20時ちょっと前。前半戦が終了した休憩時間中だった。お目当ては棚橋VS井上亘のIWGPヘビー級王者VSジュニア・ヘビー級王者だ。これも感慨深いものがある。98年に入門テストに合格し、99年にデビューした2人(亘が少し先輩)が共にヘビー、ジュニアの頂点に立って戦ったのである。棚橋も試合後に「ヤングライオン時代の楽しさ、悔しさ、恥ずかしさ…すべての気持ちが甦りました」と言っていた。
 メキシコを経て、勢いだけでなく巧さを身に付けた亘、後楽園の亘人気に対してヒール的なファイトで試合を組み立てていった棚橋。今の2大チャンピオンは強さよりも巧さが目立つ。ひょっとしたら、これを物足りなく思うファンもいるかもしれないが、私はいいと思う。今までのキャリアの中で2人が積み上げてきたものなのだから。
 みちのく、ノア、新日本…3大会を通して観て、主役になっていたのは若い世代。プロレスの場合は時代がゴロッと変わることは難しいが、ジワジワと世代交代が成されていることを実感した。

私的ハッスル論

 現在発売中の『Kamipro』118号で『Kamipro』編集部のジャン斉藤編集長、坂井ノブ氏、堀江ガンツ氏(進行役は阿修羅チョロ氏)と11月25日の『ハッスル・マニア2007』についての座談会をやった。従来のプロレス業界に住んでいて、なおかつ天龍番と呼ばれる私がハッスルについてどう考えているのか、『Kamipro』編集部的には興味があるのかなと思いつつの出席だったが、それだけに面白かった。
 基本的に私はプロレスは何でもありだと思っているから、ハッスルについても肯定派だが、やはり他のメンバーとは微妙に感覚が違う。でも、それだからいい。プロレスはいろいろな角度から各々勝手に楽しめるジャンルなのだ。あとはそれが「好き」か「嫌い」かの個人的な好みの問題になると思う。
 ハッスルはファンタジーの世界。ファンタジーを完璧に創り上げることで、そこからリアリティーを生む。で、私個人のモノの好みからすると、映画にしろ何にしろファンタジーってあんまり好きじゃない。だからハッスルには感心もするし、今のところ「面白い」と思っているが、ファンタジーがさらに突き詰められたら、私の琴線に触れるものではなくなるだろう。でも、それは私の好みの問題であって、別に否定するものではない。それに夢中になるファンがいて、ショーとして完成されたものであれば、私は支持し続けるだろうし、肯定し続けるだろう。
 ハッスルについての現時点での私の考えは、この『Kamipro』118号、そして現在発売中の『Gスピリッツ』第4号の山口日昇代表との対談を読んでいただきたい。大晦日の『ハッスル祭り』の参考になれば幸いです。

IGFは猪木のオモチャ箱

 昨日の有明コロシアムにおけるIGF『GENOME2』は、いろいろな意味でスゴイ大会だった。もはやカードが当日にならなければわからないことにはファンもマスコミ関係者も慣れっこ。で、実際に純粋なプロレスの試合と言えたのはオープニングのAJスタイルズVSセンシとセミのカート・アングルVSケンドー・カシンの2試合だけ。
 だが、この2試合が良かった。まずスタイルズVSセンシはTNAのノンストップ・アクションのファイトだから、いきなり観客を引き込むには効果的な試合。かつてロウキーとしてゼロワン、ノアに上がっていたセンシは相変わらず人気があるし、スタイルズは試合巧者。アメプロ好きにはたまらないカードだ。
 そしてブッカーTの来日中止によってサプライズ的に実現したアングルVSカシンは、私的にイチオシ。どんなタイプとでも好ファイトができるアングルの実力が改めて確認できたし、カシンの約2年ぶりのプロレスもブランクを感じさせないもの。レスリングから入り、エルボー・スマッシュ合戦、カシンは立会人のデストロイヤーをいじり、雪崩式腕ひしぎ、絞首刑を決め、アンクルロックをクルリとエビ固めに丸め込むなど、持ち味を十二分に発揮した。カシンには、やっぱりプロレスに戻ってきてほしいものだ。
 その他の試合もそれなりに楽しめた。ブラジルの巨人軍団は胡散臭くてイイ。やたらとハイキックを振り回していたアマゾン・ブレードは205センチという発表だったが、どう見ても190センチぐらい。もう一方のダニー・イグアスは発表どおりに215センチありそうだった。でもこちらはブレードに比べてデクの棒度高し。こういうわけがわからない選手が登場するのも、プロレスのヘンな面白さである。
 WWEでクリス・マスターズとして活躍していたクリス・ムーアは格闘技色の強い柳澤相手にWWE流を通してフルネルソンで快勝。客席から「えーっ!?」という声もあったが、これこそWWEで話題になった必殺技マスターズロックなのだ。相手がどうあれ、自分のキャラを押し通すのもプロだ。
 タカ・クノウがあのノルキヤをフット・チョークで仕留めた試合、小原のヘッドバット攻撃に怒った人喰い義生が逆襲のタコ殴りで勝った試合も通常のプロレスとは違った面白さがあったと思うし、ジョシュ・バーネットとモンターニャ・シウバはヘビー級の迫力あり。シウバが和田良寛レフェリーを殴ったり、スリーパーをかけちゃったりというハプニング・シーンが生まれるのもIGFならではか。
 メインは安田、レネ・ローゼ、小川の三つ巴戦ということだったが、第1試合で安田がローゼをイスでぶっ叩いて失神させて、続く安田VS小川では立会人の猪木が試合途中でリングに駆け上がって小川をチョーク・スリーパーで失神させて、終わってみれば「勝者アントニオ猪木!」というふうなムチャクチャな展開に。それでも「1、2、3、ダァー!!」が出れば、すべてが許されてしまうのだ。
「猪木さんなら何をやってもいいのか!?」「いい」――それがIGFの世界。そう、IGFはプロレスにも格闘技にもこだわらない猪木のオモチャ箱である。猪木さんはリングを通じて“元気”を発信することを第一にしているのだ。IGFは“大バカ野郎”にならなければ楽しめない。

コンちゃんの別の顔

 昨日のサムライTV『S-ARENA』のゲストはエルドラドの近藤修司とミラニート・コレクションA.T.。ここでミソなのは近藤が全日本で暴れまくるVMの近藤ではなく、エルドラドの近藤として来たこと。全日本ではワルのイメージが強いが、エルドラドではSUKIYAKIなるユニットのリーダーを務めつつ、団体全体を牽引するベビーフェイスなのだ。
 エルドラド自体が試合数が少ないこともあって、この近藤を始め、ブラザー、大鷲、菅原、シュウ&ケイのバラモン兄弟(佐藤秀&恵)などが積極的に他団体で活動している。しかもそれぞれにエルドラドとは違ったキャラクターという状況だから、エルドラド自体のカラーがわかりにくいというのが難点だったが、それも今年に入ってのユニット分け(近藤率いるSUKIYAKI、大鷲率いる猛獣惑星、菅原率いるヘルデモンズ、ブラザー率いる南京レスリング部=消滅)によって、スッキリとした。
 その1年の締め括りとなるのが12・29後楽園だ。メインはヘルデモンズの菅原&バラモン兄弟が保持するUWA世界6人タッグに元南京のブラザー、沖本、ディック東郷が挑戦するラダーマッチ。その他、近藤、谷嵜、アントン、清水のSUKIYAKIと大鷲、福田、千賀、CHANGOの猛獣惑星による4VS4イリミネーションマッチ、飯伏にKAGETORAが挑戦するインディペンデント・ワールド・ジュニア・ヘビー級戦などがラインナップされている。
 さらに注目はミラノ・コレクションA.Tにミラニート・コレクションA.T.が挑むシングル戦。ミラニートはこの一戦をもってミラノのキャラを封印するという。ミラノはミラニートにとってプロレスのイロハを教えてくれた先生。闘龍門卒業生の中で、ミラニート世代は闘龍門とドラゴンゲートの狭間にあって不遇な環境に置かれてしまったが、それでもここまで頑張ってきた。ミラニートにとって、師匠ミラノから独立する大事な試合なのだ。
 それにしても無口だと思っていたコンちゃんは、エルドラドのことになると雄弁になる。VMとは別の近藤の顔を見たい人はぜひエルドラドに足を運んでみてください。