小島とケア

 昨日の日曜日は例によってダブルヘッダー。昼は全日本の『サマー・インパクト2007』開幕戦だ。両国大会を1週間後に控えているだけに、各選手はいきなりフルスロットル。両国に向けてのポイントを書けば、メキシコ・アミーゴスVSサムライ・ジャパン前哨戦ではYAMADAが掌打でNOSAWAをKOした。
「あれは強烈だった。YAMADAの頭に角が見えた…」とNOSAWA。ということは、YAMADAの正体は89年に「リバプールの風になった」という言葉を残し、獣神をモチーフにしたマスクマンになった“あの男”なのか。両国のPPVでは、このアミーゴスとサムライ・ジャパンの解散をかけた6人タッグを解説することになっているが、他団体をネタに絡められたら喋りにくいなあ(苦笑)。
 勝彦とセイビンのタッグ前哨戦はなかなかよかった。勝彦が知らないムーブを次々に披露するセイビン、対する勝彦はセイビンの右頬にシャープな蹴りをバシッと決めた。この2人なら好勝負間違いなし。海外進出も視野に入れている勝彦にとってセイビンとの世界ジュニア戦は試金石になる。
 みのると健介の三冠を巡る攻防は、先シリーズの心理戦から一転して余計な要素を排除したガチガチの戦いを展開。2人のテンションが高まっていることがわかる。あとは本番を待つばかりだ。
 さて、個人的に興味を持っているのは川田&ケアに小島&TARUが挑戦する世界タッグ戦。7・29金沢で小島のイス攻撃を顔面に食らったケアは2112部上顎骨歯槽骨骨折(全治1ヵ月)という重傷を負ってしまった。今シリーズは両国以外は欠場だ。何やら難しい名前の怪我だが、ようするに鼻と唇の間…上歯の歯茎の下の骨が折れて陥没したとのこと。試合前、控室でケアに負傷箇所を見せてもらったが、上歯の歯と歯茎が金属でガッチリと固定されていた。これでは食事をするのも大変なはず。それでいて、メイン終了後にリングに駆け込んだのだから無謀だ。小島のラリアットを食って、またまた口から流血。これは本当にシャレにならない。
 だが、小島がここまでやれるのは、ある意味で大したものだ。口では「ケアを壊してやった」と言っていているが、どう考えても偶然の事故。金沢のアクシデントが故意のもののはずがない。だが、それを利用してヒールとしてノシ上がるぐらいの覚悟がないなら、小島は大成しない。両国の本番でも小島はケアの口を容赦なく攻めることができるのか? 小島にとってヒールとしてやっていく上での踏み絵になるだろう。一方、ケアがここで耐え抜いて世界タッグを防衛できれば、去年のカーニバル優勝&三冠奪取の時の輝きを取り戻すことができる。両者にとって今年下半期を占う重要な一戦だ。

みのるの夢の対決が次々実現!?

 鈴木みのるのキャパは本当に広い! 12日=MAキックでMAZADAと組んで初代タイガーマスク&スーパータイガーと激突、14日=カスイチのオールスターちゃんこランブルでラム会長、男色ディーノと初対戦、16日=OZアカデミーでAKINOと組み、ダイナマイト・関西&エル・ブレイザーとミックストマッチ。そして昨日は橋本友彦主催興行『MAKEHEN9』に出場した。
 橋本主催の『MAKEHEN』は私も初めて。会場に顔を出すと橋本が「小佐野さん、やっと来てくれましたね!」とニッコリ。こう言ってもらえるのは嬉しいことだ。何せ、肩書きのないフリーライターで会場に出入りしている立場だけに「何しに来たんですか?」などと言われたら、シャレにならない。
 それにしても『MAKEHEN』は凄い世界だった。名前は知っていてもファイトは初めて見る選手、名前すらも知らない選手がゴロゴロいるのだ。数々のリングに上がっているみのるも「ウーン、ここはインディー中のインディーだな…」とニヤリ。
 さて、注目はみのる&東京愚連隊(NOSAWA論外&MAZADA)と橋本、佐々木貴、ランス・ホイトの6人タッグ。三冠王者みのるとデスマッチ絶対王者の貴の激突なんて早々見られるもんじゃない。みのるVS橋本だって興味深い。みのると有刺鉄線バットを持った貴の睨み合いという絵はなかなかのものだった。試合の方はみのる&東京愚連隊のやりたい放題といった感じ。貴はデスマッチ3連戦直後ということでボロボロの状態だっただけに、みのるVS貴で「おおっ!」という場面は生まれなかったが、この2人が接点を持ったことが重要だ。
 大会終了後には紫雷姉妹プロデュースのバトルロイヤルが急遽行なわれ、みのるも出場。ここでも面白い顔合わせが実現した。まず、みのるVS健心。これはみのるVS健介の三冠戦の前哨戦!? 健心ばり(?)の健心のチョップに涼しい顔のみのるは、健心をぶん投げてオーバー・ザ・トップロープで簡単に料理。その他、ヒクソン・グレイシーと戦った木村浩一郎との絡みもあった。みのるは紫雷姉妹と絡もうとしたが、これは周囲の阻止で実現せず。最後は橋本に飛びつき腕ひしぎ十字固めを決めたところで、裏切った論外にフォールされて失格に。
「佐々木貴? まあ、どんなやり方してもいいけど、基礎をやりなさいってことだな。よくインディーの奴らは言うでしょ、“俺たちの方が凄いことやってる”って。でもさあ、体力が圧倒的に違うんだよ。それが上と下の差なんだよ。ってことをわかんなきゃ。健心? あいつのチョップは健介の500分の1(笑)。だから健介ファミリーに入れてもらえねぇんだよ。まあ、この『MAKEHEN』って凄い世界だったけど(苦笑)、来なきゃわかんねぇんだよ。体験しなきゃわかんねぇんだよ。こういうのが俺にとって血となり、肉となり、幅が広がっていく。今の俺はぶっち切っている自信があるよ。こういうところに来なきゃ対戦できない奴もいるんだから。どこに行っても俺は俺…俺には見せるものがある。自分が立っている姿をどう見せるかすら知らないバカばっかりだから、全部、俺の世界になる。でもさあ、遊びであっちこっちに上がってるんじゃねぇぞ。こういうインディーには眼がギラギラした奴らいっぱいいるんだ。NOSAWAとMAZADAだって、こういうインディーの中から這い上がってきたんだろ。そういう予備軍がいっぱいいるんだよ。どんな形でも今の俺に勝ちゃあ、上に上がれるチャンスがあるんだ。たとえ、俺が自分で足首ひねって怪我してフォールされても、それは鈴木みのるが負けたことになる。三冠王者の俺をフォールした奴は、どうあれ一夜にして注目される。常に何をされるかわからないリスクを背負ってやってるんだよ。これで実戦の勘が鈍らず、テンションを持って健介との三冠戦に臨めるよ」(みのる)
“世界一性格の悪い男”は“世界一研究熱心な男”でもある。

新生アパッチ宣言!

 15日~17日の3日連続で新木場において葛西純プロデュース興行が行なわれた。『Gスピリッツ』の原稿書きで残念ながら15&16日はパス。ようやく昨日の最終日だけは行くことができた。3日間連続で取材しているという週プロの松川記者に聞いたところ、毎日が濃い内容だったようだ。15日=素足画鋲デスマッチ、16日=7種類のアイテムを使ったタッグ・デスマッチ、そしてこの最終戦ではBJWデスマッチ王者で“デスマッチの絶対王者”と呼ばれる佐々木貴と葛西純のガラス・クラッシュ+αデスマッチである。
 2人ともデスマッチの天才だった。リングの対角線上に巨大なガラスがセッティングされたが、それを無暗に使おうとはしない。「一体、いつガラスに突っ込むんだ!?」という緊張感の中で試合が繰り広げられ、誰もが予想していない場面で葛西が貴をガラスに衝突させた。パーンと飛び散るガラス。リングの上にはその破片が広がる。だが本当に凄かったのは、ガラスが砕け散ったあとの攻防だ。
 キチ○イ・コールが爆発する中で、葛西は場外に机をセッティングして貴をガムテープで固定すると、2階のバルコニーの上からダイブ! 貴はガラスの破片が敷き詰められているキャンバスめがけて雪崩式Dガイスト! 葛西は+αのアイテムの剣山の上に貴をダルマ式ジャーマン! 去年のアブドーラ・小林戦を再現するかのように貴の後頭部に剣山が突き刺さった…。
 両者はまるでバケツで血をかぶったように全身が真っ赤。そのフィニッシュも壮絶だった。ダウンした貴の上にイスでガラスをセットし、その上から葛西がパールハーバー・スプラッシュ! 貴はもちろん、葛西だってガラスの衝撃を受けるわけだが、敢えて自分の体をも傷つけるのが葛西のデスマッチに懸ける心意気なのだ。
 ノンタイトルとはいえ、デスマッチの絶対王者が敗れた。その瞬間、新木場に葛西コールが大爆発。
「貴、この3日間よ、お前とやってきてようやくわかったよ。お前は本当にデスマッチが好きなんだな。おい、いいか…大日本の後味がいいデスマッチだけがデスマッチじゃねぇぞ。人間臭くて泥臭いデスマッチ…これがアパッチのデスマッチなんだ」(葛西)
「葛西、アパッチのデスマッチ…十分わかったよ。俺もアパッチのデスマッチが大好きだーっ!この3日間、楽しかったよ。でも、これだけは忘れるな。俺は諦めが悪いから、完全に負けたとは思っちゃねぇ。アパッチのデスマッチをまだまだやろうぜ!」(貴)
 今度は大アパッチ・コール!貴は大日本ではエースでも、所属するアパッチではたかし軍を結成して嫌われていた。アパッチのファンが貴を認めた瞬間だ。
「今の言葉、聞き逃さないぞ。大日本だけに力入れてんじゃねぇぞ。敵同士だけど、一緒にアパッチを盛り上げていこうぜ!」(葛西)
 ここで矢野に奪われたWEW王座の奪回を宣言しているマンモス佐々木を呼び込んだ。
「葛西、貴、3日間お疲れ様でした。凄いなあ。俺にはこんなことでけへんけど、アパッチにベルトを取り返してくるから」(マンモス)
「アパッチのリングに真壁を呼び込んだのはたかし軍かもしれないけど、オイシイところを取られてたまるか。真壁がデスマッチ云々と偉そうに言ってるけど、デスマッチの王者は俺だ。俺がぶっ潰してやるよ!」(貴)
「金村抜きでこの3日間やってきた。俺っちだけじゃなくて、この新メンバーでこれだけ満員にしてきたんだ。この3人の新生アパッチで、後楽園を満員にしてやろうぜ! そして俺っちは10月の後楽園で、俺が考えたデスマッチでその時のWEW王者に挑戦するから!」(葛西)
 ボスの金村は大日本の8・13岡山大会で負傷し、胸部圧迫骨折の疑いでこの3大会を欠場した。ここで若い人間たちの意地がいい形で出た。最近のアパッチは確かに興行不振。7月20日の後楽園ホールはわずか800人の客しか入らなかった。みんなが危機感を持っているのである。今回の3連戦は15日=250人(満員)、16日=300人(満員)、17日=400人(超満員札止め)と、会場の規模から考えたら大成功だったと言える。
「金村抜きで3日間、客を集めた。今まで口では“金村、黒田の時代じゃない”って言っていたけど、今日がスタートです。これから3人でスクラム組んで、絶対に後楽園ホールが満員になるように盛り上げていきます」
 と葛西が言えば、貴も、
「俺だってアパッチの一員だから。たかし軍団を作ったのもダンスを踊って、みんなで手を挙げてっていうナマぬるい団体を盛り上げるためだった。でも、このアパッチがなくなっちゃったら全部オジャンだからよ、俺らがリングで体と体をぶつけ合って、デスマッチやって、血を流し合って、盛り上げてやる。この前の後楽園は客が少なくて悲しかったし、寂しかった。きっと葛西もマンモも思っていたんだろう。今日は葛西に負けたけど、今日がスタート。何も終わんねぇよ。これからだよ、本当の戦いは」
 とコメント。こうした新世代のアクションに金村と黒田はどう対応していくのか? またアパッチには、これとは別に“デスマッチを排除した本当のプロレス追求”を謳うGENTARO、ウインガー、HI69のパルプ・パックス(通称・紙バック)もある。
 内部の問題、そして新日本との絡み…アパッチの先は読みにくい。だが「何とかしたい!」というエネルギーが充満していることだけは確かだ。
 なお、今日は新木場で橋本友彦興行が行なわれるが、ここでは佐々木貴と鈴木みのるが6人タッグで激突する。デスマッチ絶対王者と三冠王者の激突…これは見逃せない!

『Gスピリッツ』の同志たち

 フリーの立場の私が書くことによって清水さんや辰巳出版に迷惑をかけてはいけないと自重していたが、昨日『Gスピリッツ』宣言ができてスッキリした。プロレス専門月刊誌『Gスピリッツ』は清水さんが編集長、週刊ゴング主任だった佐々木クンが副編集長となり、モバイル・ゴングで最後まで頑張っていた斎野クン、村上クンがスタッフとしてサポートしてくれる。
 週刊ゴング最後の編集長・木幡一樹クン、93年からアルバイトとして週刊ゴングに入り、95年に入社、00年からフリーとして活動していた谷口範夫クンが執筆陣に名を連ねているのは、私にとって嬉しいことだ。木幡クンは私が週刊ゴングの編集長になった94年8月にWAR担当記者を引き継いでもらった。仕事に対する姿勢、人となりを見ていて、木幡クンなら天龍さんと相対しても大丈夫だと確信していたからだ。谷口クンは、私が副編集長時代だった時代に「ゴングに入りたいんです」と手紙をくれたり、会場で声をかけられた。そのたびに私は課題を出し、それに対して大学生だった谷口クンはエディター・スクールに通ったり、『ゴング・メイト』に投稿してきたりと努力を重ね、最後は清水さんと私が面接してゴングに入ってもらった。入る前に自分で下地を作っていたから、私が編集長の時代には、すぐに大きな戦力になってくれた。
 さらに自分の足でアメリカ、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ、南米を歩いて様々な取材をしてきた渋澤恵介クン、週刊ゴングでインディー系を担当していた竹田実クンもライターとして参加するという。 みんな気心の知れた人たちばかり。気持ちのいい人たちと気持ちのいい仕事ができるのは幸せである。
 あとはプロレス・ファンの人たちに満足してもらえるような新しいプロレス雑誌を作るだけ。週刊ファイト、週刊ゴングが相次いで休刊となり、今やプロレス専門誌は週刊プロレスだけになってしまった。業界的に考えると、たとえ月刊誌であろうとも、新しいプロレス専門誌が創刊されることは、プロレスが世間に露出する場が増えるのだからいいことだと私は信じている。また、週刊ゴングを愛読してくれていた人たちに対する“落とし前”だとも思っている。理由はどうあれ、週刊ゴング休刊は読者を裏切り、また業界のイメージを低下させてしまったのは紛れもない事実なのだから…。
 今回、はからずも『Gスピリッツ』と『Gリング』というゴングの流れを継ぐ2誌が同時創刊されることになった。「何で分裂なんだよ」「今の時代にプロレス月刊誌2誌もいらないよ」「金がかかる」という批判の声も聞く。それに対しては「出来上がった本を読んでみてください」としか言えない。ゴング・イズムについて、どちらが元祖か本家かなどというのは、土産物屋の争いでもあるまいし、ナンセンス。どちらの雑誌もゴングで仕事をしていた人間が、そこで培ったものを無駄にせず、新しい雑誌をスタートさせるということ。競うのは、読者をいかに満足させられるかの1点に尽きる。
 清水さんと私のスタートは本誌ゴング、別冊ゴングの編集者。佐々木クンはゴングに入る前に某雑誌の編集者をやっていた。9月5日、『Gスピリッツ』は今までのプロレス誌とはイメージの違う月刊誌として創刊されるはずだ。

『Gスピリッツ』宣言

 9月5日、ふたつのプロレス月刊誌が誕生する。『Gスピリッツ』と『Gリング』…共に3月に休刊になったゴングの遺伝子を持つ人間が作る本だ。で、私の立場はというと『Gスピリッツ』にライターとして参加する。
 なぜ『Gスピリッツ』なのか。答えは簡単、6月下旬に辰巳出版からプロレス月刊誌を出版できることになったこと、ついては協力してほしいという電話を清水さんからもらったからだ。清水さんが編集長になり、副編集長は週刊ゴングの主任で新日本担当でもあった佐々木賢之クンだという。もちろん清水さんの中には「ゴングで培ったものを活かしたい」という気持ちがあった。これは喜んで協力を申し出て当然だ。ただし日本スポーツ出版社を退社してから約3年フリーとしてやってきた私は、私なりに個人で積み上げてきたものもあり、週刊ゴングに関わった時と同様にフリーのライターという立場で参加させてもらうことにした。
 もうひとつの動き…つまり『Gリング』の動きを人づてに知ったのはその後のこと。理想なのはゴングに関わった人間が一丸になってゴング復刊、あるいは新雑誌を作ることだったと思う。何しろ、もうひとつの動きを知ったのがあとだったから事情はまるっきりわからないが、ゴングが2派に分裂して、それぞれに新雑誌創刊という現実は、まるでプロレス団体の分裂騒動である。正直なところ「残念だなあ」とは思ったが仕方がない。それぞれの置かれている状況や事情、考え方が違うのだから、誰がどんな行動を取っても恨みっこなしだ。
 例によって綺麗事だの偽善者だのと言われそうだが…本音を書かせてもらえば、日本スポーツ出版社に関わっていたすべての人間がしなくていい嫌な思い、辛い思いをした。だから、これから先、誰も不幸にはなってほしくない。プロレス業界に関わる者、他の世界に移った者…人それぞれだが、どこでもいいから自分の道をみつけて幸せになってほしいと思う。
 そういう思いの一方で、現実問題としては『Gスピリッツ』と『Gリング』は競合誌。となれば、私は週刊ゴング休刊時のダイアリーで書いた「健全な形で週刊ゴングが復刊され、その時の編集部が私を必要としてくれれば、そこにいる」を『Gスピリッツ』で実践するだけだ。

異次元空間でも…みのるはみのる!

 新宿FACEで月1回開催される月刊カス野郎プロレス『カスイチ』は、一度観たら結構ハマる。意外な大物ゲストが登場するし、軸となっているTARU、近藤修司、ブラザー・ヤッシーのブードゥー・マーダーズとは違う一面が見られるからだ。近藤には「普通の試合は凄いが、エンターテインメントはまだまだ…」ということで今後、エンターテインメントへの道が用意されそうだし、TARUは谷嵜なおき相手に厳しい父親のような試合をみせていた。
 あらかじめ告知されていた大物ゲストは邪道&外道で、双子のバラモン兄弟と対戦。バラモン兄弟を掌に乗せ、最後はスーパーパワーボムで一蹴した邪道&外道は、
「元祖兄弟タッグ? 舐めんじゃねぇ。俺たちは20年、兄弟としてやってんだ。あいつらがランドセル背負って、鼻たらしてる頃からやってるんだ」(邪道)
「俺たちにツバかける元気は認めてやる。でも、そのあとどうなるか? 1万倍返しだ!」(外道)
 と余裕の言葉。そう、邪道&外道はTPG(たけしプロレス軍団)の新人オーディションから20年間も一緒にやってきた。遠回りのプロレス人生だったが、今や日本を代表するタッグチームに。バラモン兄弟にとっては貴重な体験だっただろう。
 さて、この日のメインは大鷲透プロデュースの“オールスターちゃんこランブル”。カスイチ常連の大鷲、ヤッシー、菅原、KAGETORAが人脈を活かして普段参加している団体から選手を招待して行なう時間差バトルロイヤルだ。まず大鷲の招待選手はDDTの大家健(客席からブーイング)、菅原の招待選手はゼロワンMAXの浪口修(客席からエーッ?の声)、KAGETORAの招待選手はラッセ(これは拍手が)、勝手にバトルロイヤルに参加したバラモン兄弟が勝手に招待したのは666の怨霊&ラム会長(盛大な拍手)、そして…ヤッシーが招待したのは鈴木みのる!(場内騒然!)
 みのるがリングインすると、他の選手は場外に避難。リング上に残っていたのは女子小学生のラム会長だけだった。みのるとラム会長の視殺戦というのは凄い絵だ。ラム会長はビンタ一閃! みのるが凄い形相でラム会長の頭を掴むと、客席からはその大人気ない態度に大ブーイング。ラム会長は怨霊のアシストを得て、みのるに619を決めた。これは事件だ! 怒りのみのるは怨霊をオーバー・ザ・トップロープでぶん投げて失格にさせると、再びラム会長の頭を鷲掴み。毒舌と気の強さが売り物のラム会長も遂には泣き出してしまった。当然、客席からは大ブーイング。さすがに困ったみのるはラム会長によみうりランドの優待券をプレゼントして機嫌を取る。「お前、案外いい奴だな。付き合ってやってもいいんだぞ。よみうりランドなんて今さらダサイけど、せっかくだから行って来るよ」とみのるに告げたラム会長は試合を放棄して控室に帰ってしまった。うーん、みのるVSラム会長もとりあえずは成立するのだ。
 だが、もっと凄い絵が待っていた。最終的にリングに残ったのは、みのると男色ディーノ。これもある意味で夢の対決である。ディーノの濃厚なキス攻撃に対して、みのるは逃げることなく腰に両手を当てて仁王立ち。“ファイト1発!”を食らう場面もあったが、バチバチのチョップ合戦に持ち込み、最後はスリーパーからゴッチ式パイル…と思いきや、一瞬考えたみのるは、その手を離すと、ディーノが脱いだタイツを履いて、その中にディーノの頭を突っ込んで、改めてゴッチ式の男色ドライバー! 見事なフィニッシュだった。
「いつもと違う空間? 別に違わねぇよ。やることはいつもと一緒だ。相手がマスクしてようが、ペイントしてようが…オカマ(ちなみにディーノはオカマではなくゲイ)だろうが、やることは一緒だよ。キス攻撃? あんなもんは俺には効かねぇよ。くだらねぇこと聞くな、バカ!」(みのる)
 
 「やることはいつもと一緒」とは言っても、相手のキャラクターを拒絶しないのがみのるのセンス。その上で相手の強烈なキャラクター以上に“鈴木みのる”の毒を出して“みのるワールド”にしてしまうのだから凄い。16日には後楽園ホールのOZアカデミー興行でAKINOと組んでVSダイナマイト・関西&エル・ブレイザー、18日には新木場の橋本友彦興行で東京愚連隊(NOSAWA論外&MAZADA)を率いて橋本友彦、大日本デスマッチ王者の佐々木貴、ランス・ホイトと戦うが、
「女子、デスマッチ王者? そんなもん関係ねぇ。リングに上がること自体がデスマッチなんだよ。パートナーも対戦相手も、みんな後悔すると思うよ。俺を呼んだら痛い目に遭うことを覚悟しとけよ」(みのる)
 今のみのるはどんなプロレス、どんな相手も俺流に消化してしまう。いつ何時、誰とやってもみのるはみのるなのだ。
 

曙のプロレスLOVE

 今年のG1は、いわゆる大物外敵の参戦がなかっためにスケール感には欠けたが、内容的には新日本内部が充実していることを示せたのではないか。今年に入ってブレイクした真壁、越中が健闘したのは個人的に嬉しい限り。そしてWEW王者になった矢野も連日、好ファイトを見せていたとマスコミの間では話題になっていた。両国初日の中邑戦にしても硬軟を巧く使い分けて巧さが光った。反則をする時には必ずレフェリーの死角を衝くという利に適ったものだし、バックボーンとなっているレスリング仕込みのスープレックスも切れる。同じヒールとはいっても真壁とはタイプがまったく違うのだ。下半期、この矢野が意外に頭角を現してくるかもしれない。
 そしてもうひとり…私が注目していたのは曙だ。スタミナ、スピードに難はあるものの、本当に巧くなった。相手に引っ張りまわされるのではなく、ちゃんと自分のペースで戦えるようになったのだから大したものだと思う。それは本人の本気があってこそ。天山、真壁に勝ち、永田、蝶野に負け、バーナードと引分けの2勝2敗1引分けの五分の星は立派だ。
「初挑戦だし、強烈なメンバーの中で五分なら上等。星取りよりも内容が自分にとってよかったと思います。それは観ている人に判断してもらうしかないけど、自分では前の曙ではないと思ってます。経験ではペーペーなんで、相撲時代と同じで横綱の胸を借りるつもりで臨みました。最初は珍しさで応援してもらえましたけど、今はとにかく内容。ただ試合をするんじゃなくて、やることをキチッとやって、出る限りは自分が中心になって試合に臨みたいですね。プロレスは楽しいっスね。プロレスはいいっスね! ずっと前から思っているけど、一生懸命やれば、そのうちみんなに伝わっていきますよね。練習はきついですけど、一生懸命に歯を食いしばってやれば、観ているお客さんに通じるし、やっている本人もやり甲斐が出ますね。相撲の時は息子にやっている姿を見せられなかったので、こうしてプロレスで汗かいて、ぶちかましている姿を見せたいです」
 2年前に武藤敬司に導かれてプロレスに参入し、その魅力にのめった曙。武藤部屋で植えつけられた“プロレスLOVE”はさらに大きくなっている。プロレスに飛び込むのは今しかない!

世代闘争の気運の中で…棚橋!

 昨日、新日本の新たなうねりについて書いたが、G1最終戦では次なる展開にまたまた選手たちが動き出した。まずは蝶野、長州、越中、マシンとの新ユニット結成を宣言したライガーと、CTU解散後はGBHへの合流を示唆していた邪道&外道がギクシャク。試合後、控室前の通路で邪道&外道がライガーを袋叩きにし、8・26後楽園の解散興行を前にCTUは事実上、崩壊してしまった。
 長州と越中はタッグ結成。かつての維新軍の長と平成維震軍の長の合体だ。越中が所属していたGBHの天山&矢野を粉砕して初陣を飾った。「盛り上がるためなら何でもやる。これで今年の下半期が変わらなければ、来年も同じだ!」という長州のセリフは革命戦士時代に聞いた言葉だ。一方、気になるのは天山。「気力でやってきたけど、もう限界。リングに上がるのが怖い…」と、まるで戦線離脱を示唆するようなコメントを残して控室へ。
 さてG1は準決勝で棚橋が真壁を、永田が中邑を撃破して決勝に進出した。中邑は左肩鎖関節脱臼によるドクター・ストップ。つくづくツキに見放されている。そして優勝したのは棚橋! 世代闘争に突入する感がある今の新日本で棚橋が優勝した意味は大きい。この日の棚橋は前日の“黒・棚橋”ではなく、普段の“白・棚橋”。「両国の皆さん、愛してまーす!」の例のセリフも飛び出した。だが、IWGP王座から転落以来、自分の道を模索していた棚橋は明らかに変わってきている。それは試合後のコメントの端々にも滲み出ていた。印象的だった言葉をピックアップすると、
「俺は現時点でIWGP王者に何一つ劣っていないということです」
「俺の野望は、このプロレスというジャンルをもう1回てっぺんまで引き上げることです。それには俺が爆発しなきゃいけないし、俺らの世代が爆発しなきゃいけない」
「俺がプロレスの神様に愛されていたってことですよ。いつでも俺は正しいんだ」
「メディアの表記を見ると“次世代エース”って書いてあるんですよ。NJCも獲った、IWGPも獲った、そしてG1も獲った…あとは何が足りないんだって? 次の世代はいつなんだっていう。もう、力ずくでも次世代とは言わせません。次世代という表記は禁止です。エースという表記は好きなんで続けて下さい」
 さらに長州らのレジェンド・ユニットについては、
「危機感を感じているからこその動きなんだろうけど、あの軍団に負けていたら新日本の発展は1ミリもないと思いますよ。素敵な四字熟語を贈ります。“一網打尽”」
 IWGP王者時代の棚橋は何とか新日本を立て直そうと、我を殺していた印象が強かった。だが、その姿勢はマスコミには理解されてもファンには届きにくく、結果として人気という点でいまひとつだった。もう我を出していい時だし、本人もそのつもりだ。これからの棚橋は一味違う。

新日本に新たなうねり

 今日はG1クライマックス決勝。まず棚橋(Bブロック2位)と真壁(Aブロック1位)、永田(Aブロック2位)と中邑(Bブロック1位)が行なわれ、勝者同士で今年の覇権を争う。
 だが、昨日の両国では早くも“その後”に向けてのアクションがあった。真壁に敗れた蝶野の呼びかけで長州、越中、マシン、ライガーがリングに上がり、新軍団の結成を宣言したのだ。復帰後、常々「これからの新日本は俺が仕切る」と言っていた蝶野が「この5人が新日本の歴史だ。俺たちこそ新日本の大黒柱だ。今の新日本に遠慮していられない」とぶち上げたのである。
「蝶野とは、この1~2ヵ月、話し合ってきた。みんなポジションがあるから難しい部分もあったけど、この5人がやらなきゃいけない。今の新日本に何が足りないのか? これまで方法論は違ったけど、目的は同じところにある。若い連中には十分時間をやってきた。これは現状から抜け出すための行動だ」(長州)
「この何年間か、脇にズレて戦況を見てきた。確かに若い奴らが一生懸命頑張っているのは認めるよ。でも俺たちの歴史、名前を越えた奴がいるかってことだよ」(ライガー)
 今の新日本は誰にでも上に行ける自由な空気があるが、そこで敢えてベテランたちが逆襲に出たのだ。この5人の決起によって蝶野とマシンはブラック軍団を飛び出すことになるだろうし、越中もGBH離脱になるだろう。ライガーの場合はCTUが解散するから自由だが、この5人の決起によって、これまでの新日本の図式はガラリと変わる。
 その他、2勝3敗で初G1を終えたミラノはヘビー級転向を宣言し、永田とバーナードが試合後に健闘を称え合うシーンもあった。また、越中を下して今日の決勝トーナメントに駒を進めた棚橋は黒のロングタイツという新スタイルで戦い、“人気者”越中に対してヒール・ファイトを展開。
「最初から俺の持てる才能を全部出したら、他の選手にいらん気をもたせなくて済んだのに申し訳ない。このコスチュームは気分で作ったけど、使う機会があってよかった。基本的にはいい人間ではないんでね。明日は真壁選手? デビュー戦の相手だし、思い出があるますね。俺のことを温室育ちって言うけど違うんだなあ。こっちは純粋培養だから、言い方に気をつけるように。俺は、俺が勝ち上がれば、何も言うことはない。今日の俺は見事だった。見事過ぎるな、俺…」
 と、試合後のコメントも嫌味タップリな感じ。元々、センスのいい棚橋だけに意外にヒールはハマるかもしれない。
 いずれにせよ、今日のG1が終わった瞬間から、新日本は新たな局面に突入する。

2ヵ月ぶりの健介オフィス

 昨日は2ヵ月ぶりに埼玉・吉川の健介オフィスに行ってきた。全日本の8・26両国と9・1ディファ有明における自主興行第2弾に向けての公開練習ということで、健介と勝彦がそれぞれに新技を披露。
 健介は、ドラゴン・スープレックスとタイガー・スープレッスをミックスした形で後方にパワースラム気味に投げるキング・バスター、鈴木みのるのサブミッションに対抗するべくストラングル・ホールドZを公開。新しいストラングル・ホールドは左足で相手の左腕と首を巻き込み、右腕はアームロックで絞り上げ、さらに右膝を相手の腰に押しつけて固定するから、相手は逃げられない。まあ、文字で読むとよくわからないだろうから、今日のスポーツ新聞で写真を見てください。実験台になった勝彦は、
「投げ技の方は投げられている時に自分がどういう状態になっているかわからないですね。それで気付くと頭から真っ逆さまに叩きつけられる。首がヤバイですよ。一応、厚いマットを敷いていましけど、あれが普通のリングだったら、今ここにボクはいませんよ(苦笑)。サブミッションの方は動けないですね。で、足で頚動脈を締められているので、落ちちゃいますよ。落とす技はスリーパーだけじゃないんですね」
 とのこと。健介オフィスのレスラーは健介と勝彦だけだから、勝彦が実験台になるしかないのだ。
 その勝彦はR15(ジャンピング・スピンキック)の進化形のデス・ロールを披露。これまでは当てるだけのキックだったが、進化形は相手の首を巻き込むように蹴るというもの。9・1ディファでデビューする山口竜志にサンドバッグを持たせたり、グローブをつけさせたりしてタイミングを研究していた。
「デス・ロールっていうのは、ワニが獲物を捕らえた時に、その獲物が死ぬまで噛みついたまま回転するんですよ。それをイメージしました。偶然、テレビで観たんです。普段、テレビはあんまり観ないんですけど、たまに観るといいことありますね(笑)」
 健介オフィス生え抜き第1号となる山口竜志はマサ斎藤直伝のバックドロップを公開した。183センチ、110キロのガッチリした体格は、とても新人とは思えない。いかにも健介の弟子といった感じだ。
 健介は新日本時代と変わらず厳しい。普段は優しくても、練習となると半端じゃない。今、朝青龍問題で朝青龍と高砂親方の関係が取り沙汰されているが、健介オフィスの師弟関係はピシッとしていて気持ちがいい。
「俺は厳しいですよ。でもね、あいつら可愛いから厳しいんです。どうでもいい奴らだったら、叱りませんよ。ウチには心のいい人間しかいませんよ。気持ちのいい人間たちと一緒に頑張っていくのが、ウチの理想なんです」
 と、健介。フリーになってから、怖い顔よりも笑顔の方が多くなった健介だが、その根っこは変わっていない。