踏ん張りどころのノア

 日にちが前後してしまうが、15日のノア日本武道館大会について書かないわけにはいかないだろう。この日のノアの空気はいつもと違っていた。何とブーイングが起こったのである。
 第6試合のKENTA&石森VS丸藤&飯伏のジュニア・タッグ・リーグ公式戦までは雰囲気が良かった。試合はKENTA&石森が勝利し、得点7。その時点のトップに躍り出た。丸藤とKENTAの良さはもちろん、DDTの飯伏の潜在能力、昨年春からフリー参戦している石森の培ってきた力も発揮された。若い力が認識されただけでも、今回のリーグ戦開催の価値はあったと思う。
 問題のブーイングは続く鼓太郎&マルビンVSブリスコ兄弟の公式戦で起こってしまった。両チームともに勝てば7点でKENTA&石森と並び、そうなると優勝決定戦になるというシチュエーション。試合内容は悪くなかった。丸藤組とKENTA組の試合に比べれば落ちていたかもしれないが、それでも4選手がノンストップで動きまくるノア・ジュニア&ROHならではの展開だった。問題のシーンは30分時間切れ間際。マーク・ブリスコのキックが福田レフェリーを誤爆、福田レフェリーがダウンしている間に鼓太郎がブルー・ディスティニーからフォールに入ったものの、サブの山本レフェリーが入ってくるのが遅れ、さらにカウント2のところで時間切れのゴングが鳴り、自動的にKENTA&石森の優勝が決まったのである。
 この瞬間に物凄いブーイング。レフェリーの不手際への抗議か、KENTA組と鼓太郎組の優勝決定戦が見られないことへの不満か…。ブーイングは表彰式でより一層大きくなってしまった。これはちょっと悲しい出来事だった。客席から不満が出るのは仕方のないことだが、このタッグ・リーグ戦に出場した選手たちには罪はない。彼らは各地で目一杯のファイトをやってきたのだ。優勝したKENTA&石森もブーイングを浴びせられることは何もしていないのである。何か、このリーグ戦のすべてを否定するようなブーイングは聞いていて辛かった。
 この空気を変えたのはKENTA。「チャンピオン(鼓太郎&マルビン)、しょっぱい試合するから、こんな雰囲気になっちゃっただろ! せっかくだからタイトルマッチをやるのかやらないのか、ハッキリしろ!」とマイクを手にしてアピール。鼓太郎が「いつでもやってやる」と返すと、KENTAは「ここまで説得力のない“いつでもやる”は初めて聞いたよ。次のシリーズ、そのベルトは俺たちが巻くから。いい試合をします。ありがとうございました」と締めた。KENTAは鼓太郎&マルビンをしょっぱいとは思っていないはず。ブーイングに怒りもあったと思う。だが、こういう形で異常な場を治めたのはKENTAのセンスだと思う。
 セミの志賀&川畑のパンパーズが秋山&力皇に挑んだGHCタッグ戦も異常なムードだった。観客がパンパーズに辛辣なのだ。パンチパーマというキャラでここまで来たパンパーズを認めていないファンもいるということだ。だからこそ秋山&力皇の攻めは厳しくなった。秋山は志賀をエグく攻め立て、力皇の川畑に対する当たりは、まるで相撲の稽古のよう。ヘロヘロになりながらもパンパーズが食い下がったことで試合は成立したが、「たとえ試合が成立しなくなっても仕方がない!」という秋山と力皇の覚悟が見えるような試合だった。秋山のパンパーズに対するメッセージは「一からやり直せ!」。
 秋山はすべてを吹っ切ってパンチ男に変身した志賀のプロ根性を認めているし、地味ながら実力とタフさを兼ね備えている川畑も認めている。だから「努力してここまできたけど、ここから先は通用しない。一から努力してきたんだから、駄目だと思ったら、また一からやり直せるだろう」というメッセージだ。
 そしてメインは三沢に田上が挑んだGHCヘビー級戦。45歳(三沢)と46歳(田上)の91歳対決などとも呼ばれたが、その中で三沢はシビアな攻めで田上を振り切った。フィニッシュの垂直落下式のエメラルド・フロウジョンは、角度が急な上に、普通なら相手の首をホールドして、受け身のレベルに合わせて落とし方を調節する右手を使わずにそのまま落とすという荒技。田上は脳天からモロにキャンバスに突っ込んでしまった。いつもとは雰囲気が違った武道館大会は、三沢にここまでやらせたのである。
 05年あたりから新日本に代わって業界の盟主と呼ばれるようになったノア。ここ最近はファンのノアを見る目が厳しくなってきていると思うし、要求も高くなってきているように感じられる。だからブーイングや辛辣な野次も飛ぶのだろう。優しい目から厳しい目へ…これは自然の成り行きでもあり、ここがノアの踏ん張りどころになる。

「踏ん張りどころのノア」への1件のフィードバック

  1. はじめまして。
    今回のジュニアタッグリーグ戦について、
    どうしても感想を言いたくて投稿します。
    私は2階席での観戦でしたが、KENTA組VS丸藤組の試合は、物凄いテンションの上がり方でした。
    私自身も感動して涙が出ました。
    正直、これがメインでいい!と思ってしまいました。
    むしろそうあって欲しかったです。
    その後の鼓太郎組VSブリスコ兄弟の試合は、決して悪い内容では無かったですが、前試合であまりにも興奮がピークに達していたので、ものすごく物足りなく感じてしまったのも事実です。
    しかもラストはレフェリー失神という事態になってしまい、あのすごいブーイングになってしまったのではないのでしょうか?(盛り上がった物語の結末が余りにあっけなかった・・という感じで)
     ブーイングすべてを肯定する気はないですが、あの時のブーイングは大多数の観客の思いを表していたと思っています。
    もちろん、選手達の頑張りを否定しているのでは決し無いと思います。
     個人的には試合順が逆だったらなぁ、と思わずにはいられません。同じ内容でもブーイングは出なかったと思います。
    (週プロにも試合順の検討も必要では?というような主旨の記事がありましたが、同感です。)
    「興奮冷めぬまま帰りたい」
    それだけあればファンは十分なはずです。

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