嵐の復帰問題について

 またまた11日の無我の話題になってしまうが、この日の試合前、嵐(高木功)が藤波を訪ねた。嵐は昨年7月、大麻所持で逮捕され、9月13日に執行猶予3年(懲役6ヵ月)を言い渡されている。
 私と嵐の付き合いは、嵐が87年1月に入門した時からだから、もう20年。ハッキリ言って、これまでも問題児だったが95年にWAR入りしてからは更正して、黙々とファイトしてきた。失明寸前の怪我を負っても休まずに試合に出続けた嵐のプロレスに取り組む姿勢を見てきたし、その素質も買っていたから、大麻事件の時には腹も立ったし、悲しかった。実は判決が下りる前の昨年8月に「迷惑をおかけして、すみませんでした」という電話を貰っていた。
 11日、藤波との会談を終えて控室から出てきた嵐は、私の顔を認めると、あのクリッとした愛嬌のある目を大きくして微笑んだが、今、私の気持ちは複雑だ。「リングの上からファンに訴えたい」と、敢えて謝罪の言葉は出さなかったが、果たしてそれで良かったのか?
 人間、一度失敗したからといって、すべての可能性を閉ざされてしまったら救われない。できるなら、勝って知ったるプロレスで更正して、新たな人生に踏み出すのがベストだと思う。だが、今のままで受け入れられるだろうか。嵐の犯した罪はプロレス界全体に多大な迷惑をかけたのは事実。裁判終了後、マスコミを通じて謝罪の声明を発表し、謹慎期間を経た上で公の場に出てくるのが筋だったのではないか。
 できることなら、いい形でカムバックしてほしい。でも…。今、私の心はモヤモヤしている。

無我は大人のプロレス

 昨日は4・11無我の後楽園ホール大会についてチャボ・ゲレロの引退だけしか書かなかったので、今日は肝心の無我のプロレスについて書きたいと思う。
 無我というと“大技を使わない地味なプロレス”というイメージが強いが、それは本質を衝いていない。西村が標榜しているのはオーソドックスな昔のアメリカン・スタイルだ。地味というよりも、ガチャガチャしていない、ジックリと見られるプロレスという解釈の方が当たっているだろう。
 4・11のメインは西村&吉江VS川田&長井のタッグマッチで、試合時間は実に35分19秒。大技が飛び交うわけではなかったが、これだけの長時間、観客を飽きさせなかったと思う。少なくとも私は飽きなかった。グランドだけでネチネチ戦うわけではなく、派手な場外戦もあった。大技を連発しなくても様々な局面が生まれるから飽きさせないのだ。
 探り合いから始まり、一点集中攻撃、エキサイトすれば場外戦だってある。そしてクライマックスの大技。休みなく次から次へと技を繰り出さなくても試合は成立する。最近のプロレスはスタートから大技が飛び交って目を離す暇もないくらいスリリングだと言えるが、無我の場合は落ち着いてジックリと試合を楽しめる。例えるなら、行間を楽しめるというか…。これが昔のプロレスだった。今のファンはどう捉えるかはわからないが、何か久々に大人のプロレスを見たような気がした。今のプロレスも好きだけど、こういう昔のプロレスはどこかホッとするなあ。

チャボさん日本引退

 昨日は無我の後楽園ホールでチャボ・ゲレロの日本引退試合。かつてWWWFジュニア・ヘビー級王座を巡って死闘を演じた藤波とラストマッチを行なった。56歳になったチャボだが、ゴングと同時にヒップアタック、上がらなかったもののロメロ・スペシャルにトライし、倒立してのレッグロックを披露…と、目一杯のファイトを見せてくれたのが嬉しかった。
 思えば、藤波が大流血した寝屋川市民体育館での一戦は今から29年も前。確か私は高校2年生で、修学旅行の帰りにファンクラブ仲間と会って、東京駅近くのどこかの食べ物屋でテレビ中継を見たと記憶している。
 チャボとの直接的な思い出は14~15年前のSWS、WARに来ていた頃。チャボは天龍さんに負けないくらいの呑べえで、酒なら何でもOK。酔ったチャボにドブロクの一升瓶を口に突っ込まれたこともあったっけ。とにかく陽気な酒だった。
 今回の来日に際して、天龍さんから「下手に飲みに誘って、コンディションを崩されでもしたら藤波に悪いから、とりあえず天龍がよろしく言っていたと伝えてくれよ」と言われていたので、それをチャボに告げ、天龍さんの電話番号を教えると「今晩、ホテルに戻ったら電話してみるよ!」と大喜び。どうやら真夜中に六本木から酔っ払って電話したようだ(苦笑)。
「ずっとレスリングのビジネスを続けていくつもり。WWEのコーチかロード・エージェントになれたらいいんだけど」とチャボ。この人も死ぬまでプロレスラーで在り続けるに違いない。

真壁が突きつけた現実

このところ新日本で真壁がブレイクしている。3月21日、4月8日と連続で後楽園のメインのリングに立ったのだから大したもの。そして4・8後楽園ではチェーン・デスマッチで中邑真輔に勝ってしまった。
「いいか、オイ! これが現実なんだよ!」というのが真壁の口グセ。真壁が新日本とファンに突きつけた現実とは、今のプロレスにメジャーもインディーもない、決して新日本は大メジャーじゃないし、胡坐をかいていたら足下をすくわれるという厳しい現実だ。週プロのインタビューでも「インディーが劣っているのは会社の大きさだけ」と言っている。
 真壁がノシ上がってきたのは、新日本ストロング・スタイルという呪縛から解き放たれのも大きいし、アパッチに出陣して、素直にインディーと呼ばれる世界のいい部分を吸収したこと。アルバイト感覚ではなく、真摯に取り組んだことが大きいと思う。
 今、冷静に新日本の風景を見ると、一昨年10月に長州が現場監督に復帰した頃のようなインディーへの拒絶反応はない。それはファンも同じ。すべてを受け入れている感じだ。だが、それは懐が深いというよりも新日本にしっかりした柱がないという印象。今の新日本には、いい意味でも悪い意味でも“新日本プロレス”という匂いが薄れているような気がする。芯の“新日本”がしっかりしていてこそ、トッピングが活きる。その意味では、さらに真壁がブレイクするには、新日本を体現する人間が出てこなければならない。まずは棚橋VS永田のIWGP戦、これからの真輔の動向に注目だ。

K-DOJO5周年

「あれっ? 今日は全日本じゃないですよ!」とニヤリと笑ったTAKA。昨日の昼は後楽園ホールでK-DOJOの5周年大会が行なわれたのだ。実は、私にとってこれが初めてのナマK-DOJO。
「ブログに書くんですか? 観て感じたまんま書いてくださいね」とTAKAはまたニヤリ。
 一昨年は、後楽園で興行を行なう時には大物ゲストを投入していたが、昨年からは敢えて純血で勝負。今回の5周年も、もちろん純血だ。大物ゲストを呼んでいた頃は実数で1000人以上の動員だったのが、純血になってからは5~600人程度。そんな状況についてTAKAは、
「今、どこの団体でもゲストがいるのが当たり前みたいな状況になってるけど、純血メンバーで成り立たなければ先はありませんからね。今日の目標は1000人です」
 結果は990人。10人足りなかった。
「取り置きのチケットが十何枚あったんですよ。そのお客さんがちゃんと来てくれれば1000人を越えていたんですけど。上乗せの発表もできたけど、それをやっちゃったら、これまで頑張ってきた意味がなくなっちゃいますからね。現実の990人の発表でいいんです」
 とコミッショナーの296。296クンとはK-DOJO入り前からの付き合いになるが、彼もコミッショナーとはいえ、チケットを売ったり、グッズを売ったりと頑張っている。
 さて、肝心の試合。K-DOJOの選手は体が小さい人が多いから、それを補うためにキャラが立っているし、独特のムーブをするが、なぜか懐かしい匂いを感じた。それはなぜかというと、私が昔観ていた70年代~80年代前半のアメリカン・プロレスの匂いがしたからだ。大技を連発せずに基本技で試合を組みたて、フィニッシュは自分で自信を持っている大技1発で決める。反則をする時には必ずレフェリーの目を盗む。利に適った、当たり前のプロレスをしているのだ。だから観ていて納得できる。
 TAKAと円華の試合は素晴らしかった。TAKAのジャスト・フェースロックと円華のクロスフェースが焦点だったが、共に考え抜いたムーブで自分の技に持ち込んでいく。どちらの技も地味なのに、それがスリリングなのだ。そして要所で空中技も飛び出したが、15分を越える戦いの中で相手をロープに振る場面は1回しかなかった。それでいてまったく飽きさせない。それはまさに往年のアメリカン・プロレスである。
「俺の理想のプロレスは、見せ技は使わずに相手を倒すために有効に技を使うプロレス。首なら首、腕なら腕の一点集中のセオリー通りのプロレスを体現できる団体を実現させるためにK-DOJOを創ったんですよ」とTAKAは言った。K-DOJOは昔のプロレスの良さを知るヒントになると思うので、ぜひ一度観てほしいと思う。
 最後に、この日を最後にDJニラが引退した。第1試合の8人タッグに出場し、試合後にリングから客席に向かって深々と頭を下げていたので、珍しいなと思ったが、この5周年を区切りに引退を決意していたのだという。彼はアスリートではなく、パフォーマーとしてのみのプロレスにトライしていた。
「表現者としてやりたいことがあるので、プロレスに区切りをつけます」
 と、さり気なくリングを降りたニラ。お疲れさまでした、と同時に今後の新たな場での活躍に期待したい。

奉納プロレス

 プロレスは日本に根付いた大衆芸能である。そう感じさせてくれたのが昨日の靖国神社相撲場におけるゼロワンMAXの奉納プロレスだ。今年で3年目。私は今回、ようやくナマで観ることができたが、ああいうお祭りっぽい雰囲気は嫌いじゃない。大衆芸能という表現は語弊があるかもしれないが、何の知識もない人たちが観て、純粋に「おおっ!」と声を上げて楽しめるのがプロレス本来の姿だと思う。何も理屈は必要ないのだ。
 SUNの女子プロがあり、ノアから菊地&谷口が参戦し、あの門馬秀貴が出て、ブルース・リーのバッタもんのような石天龍がいる。さらにFEC、メインは大谷VS崔の一騎打ちとラインナップも充実。何かプロレスの底力を感じさせる大会だった。結論は、こういう大会は大歓迎ということだ。
 最後に大谷晋二郎のプロレスの教科書275ページを紹介しておこう。
「プロレスを愛する人はたくさんいるだろう。しかしながらプロレスを守る者は数少ない。その数少ない中の最大のプロレス伝道者はゼロワンMAX、そして大谷晋二郎だ!」
 何年経っても変わらずにハイテンションで熱い大谷はイイぞ!

久々の会話

 昨日の午後、「元気っスかあ~?」と懐かしい男から電話がかかってきた。“トンパチ男”折原昌夫だ。折原の試合は3・7後楽園ホールにおけるリアルジャパンで見ているが、会話をするのは昨年暮れ以来。週刊ゴングの選手名鑑のアンケートで電話した以来だった。その時に「2007年の抱負」という項目について、
「そうっスねえ~、自分を取り戻したいです。元の自分に戻りたいです」
 と、意味深なことを言っていただけに気になっていたが、元気そうな声だったので安心した。
 オリちゃんは全日本の練習生時代から天龍さんに付き、明るく礼儀正しい若者だった。今では“トンパチ”と呼ばれるが、それは一本気な性格からのもの。WAR時代には頭に“WAR”のタトゥーを入れようとして、みんなで止めたこともある。そんなオリちゃんを天龍さんも愛した。SWSでメキシコ修行に出た時に、天龍さんからオリちゃんに「もうそろそろ許してやるから帰ってくるか?」と国際電話があったという。「いやあ、天龍さんも寂しいんスかねえ。ボクが傍にいないと、やっぱ駄目なんスかねえ」とオリちゃんは私に国際電話をしてきたが、その声は嬉しそうだった。そういえば、メキシコ修行の時には「今日、到着しました」「今日、アレナメヒコでトペの練習をしたんスよ」「いよいよデビューです!」と、しょっちゅう国際電話をくれたっけ。
「今度、リアルジャパンで2代目スーパータイガーに続く、新しい虎がデビューしますんで。佐山さんも天龍さんと同じように男気がある人なんスよ!」
 と、明るい声だったオリちゃん。WARを辞めた後、ずっと放浪を続けていたようだが、ようやく足場となる場所を見つけたようだ。いつまでも一本気=トンパチの心を忘れずに突っ走ってほしい。

ノア注目のふたり

 昨日はディファ有明でSEM興行。このところノア漬けだ。さて、今ツアーで私が注目している若手がふたりいる。ひとりは初来日したテッド・デビアス・ジュニア。名前の通り、あのテッド・デビアスの次男坊で25歳のヤングボーイ。キャリアも1年8ヵ月の文字通りの新人だが、ファンにアピールするロングホーン、フィスト・ドロップ、ミリオンダラー・ドリーム(コブラクラッチ)、ミリオンダラーバスター(河津落とし)、パワースラムは父親譲り。ランディ・オートンのようなルックスだけに日米で人気が出そうだ。私としては、単なる父親のコピーではなく、あの本家パワースラムを完璧にマスターしてほしいと思う。
 そして、もうひとりは8ヵ月ぶりにカムバックした伊藤旭彦。伊藤は昨年6月29日に右膝の前十字靱帯を損傷してずっと欠場を続けてきた。8月10日に手術し、9月まで入院。カムバックに向けてリハビリを開始できたのは今年の1月からだという。同じ05年クリスマスイブにデビューした谷口、青木、太田が徐々に個性を確立し始めているだけに、伊藤には焦りがあったことだろう。
「人の試合は観ないようにしてました、変に焦りが出てしまうので。でも、いざカムバックしたら一緒にデビューした人たちとの差を感じますね。間の取り方、動き、強弱の付け方、体力…最初の頃は一緒でも、やっぱり差がついている。ボクだけシングルで1勝もしていませんし…」
 と、伊藤。それでも試合勘は鈍っていないし、ファイト内容はとても半年以上も怪我で休んでいたとは思えないものだ。
「右膝を狙われるのは当たり前のことで仕方ないです。でも怖さはありません。復帰に向けて毎日リハビリ、練習を続けてきましたから!」
 その意気やヨシ!頑張れ、伊藤旭彦。

さりげなく命懸け

 昨日、ノアの横浜赤レンガ大会で三沢に会ったら、左目がパンダのように真っ黒になっていた。3日の後楽園ホールにおける開幕戦で佐野のローリング・ソバットが左目を直撃したのだ。先ツアーでは、本来ならコルセットをしていなければいけないほど首の状態が悪くても試合出場を続け、ようやく快方に向かったと思ったら左目だ。
「とりあえず、試合後に飲みに行っても腫れ上がらなかったから大丈夫じゃない? 医者は…行って、大怪我だったら精神的に参るから行ってないよ(苦笑)。女房は、普段の怒ったような顔より優しく見えるってさ。さすがプロレスラー? いや、痛点は一般の人と一緒でしょ! でも痛みと快感は共通するものがあるっていうから…って、何の話だ!?(苦笑)」
 例によって下ネタを交えながら、フツーの三沢。彼は決して悲愴な言葉を吐かない。これが「左目を失っても試合に出る!」とか言えば、記事にしやすいのだろうが、決してそういうカッコイイ言葉は吐かない。でも、それが三沢のカッコよさではないか。
 そうえいえば別冊ゴングで漫画家の河口仁さんが三沢について「さりげなく命懸けのレスラー」と書いていたが、同感。どんな局面に立たされても、フツーでいられる自分でありたいと思う。

策士・秋山準

 今日は3日夜の後楽園ホールにおけるノア4月ツアー開幕戦について書こう。メインは森嶋&ヨネに秋山&力皇が挑戦したGHCタッグ戦。先シリーズ最終戦で秋山と力皇が緊急合体、そしていきなりのタイトルマッチという急展開だったが、試合として純粋に見応えがあった。
 森嶋はROH王者になって吹っ切れているし、ヨネは先シリーズ最終戦の秋山戦から従来の明るいキャラだけでなく、根っこの部分に持っているバトラーツ仕込みのバチバチ・ファイトが顔を出すようになった。力皇も秋山がバックにいることで伸び伸びとファイト。結果は秋山&力皇がベルトを奪取したが、決して森嶋&ヨネにキズがつものではなかった。巧者の秋山がかき回す中でヘビー級の若い3人の息吹が感じられる試合だった。もはやノアの主役は次世代であることを証明するタイトルマッチだった。
「今年は自分のためにやりますよ」と言っていた秋山だが、やはりノア全体のことを見ている。この試合でも自分の存在感を出すことは忘れないが、スパイス役に徹して3選手の持ち味を引き出し、この2年間、パッとしなかった力皇を引き上げてみせた。力皇は2年前にGHC王者になった時にはプレッシャーから体調を崩すことが多く、精彩を欠いたが…今、ようやく心身共に本来の力を出せるところまできた。機を見るに敏な秋山は、ここで力皇のワインの栓をポンと抜いたのだ。
「開幕戦でベルトを取っちゃって、これで何もなくツアーが終わったらつまらないから、最終戦の武道館で高山選手相手に防衛戦をやりたい」と秋山。今、ゼロワンMAXで猛威を振るっている高山を見て、今がイジリ時と判断したのだろう。やはり秋山は、いい意味で策士である。