プロレスを示した春の祭典

 昨日のチャンピオン・カーニバル最終戦は「これがプロレスなんだ!」というメッセージに溢れた大会だったと思う。もちろん、人によって好き嫌いはあるだろうし、考え方の違いはあると思うが、私にはそんなメッセージが伝わってきたし、私好みの大会だった。
 健介―大鷲は、健介が「お前も本当のパワー・ファイターを目指すなら、これくらい当たりが強くなければ駄目だし、これくらいタフじゃなきゃ駄目だ」と言わんばかりの真っ向からの叩き潰し。それも一方的に叩き潰すのではなく、ちゃんと大鷲の技を真正面から受け止めていたところに健介の懐の深さを見た。みのるーTAJIRIは、TAJIRIがエディ・ゲレロから学んだ“ズルしていただき!”の真骨頂。私がTAJIRIを評価するのは、ズルする時にちゃんとレフェリーの死角を衝いているところだ。
 そして武藤ーケア、川田ー小島、優勝戦の武藤ー川田。いずれもプロレスの基本を押さえた試合だったと思う。彼らが使う技は誰でもできるものだし、種類も多くない。だが戦術、その場に応じた機転で試合を組み立てていく。その技を使うまでのプロセスの重要さを示してくれていた。
 それにしても武藤と川田は別格。勝負どころでの集中力、瞬発力、無駄のない動きはさすがだ。武藤ー川田の優勝戦を見ていて、去年の暮れに武藤にインタビューした時の「来年(07年)は三銃士&四天王の時代だよ!」という言葉を思い出した。
 今の全日本はパッケージという名のもとに何でもありの状態。だが、それは武藤敬司が中心にいるからこそである。根本には武藤の昔からの伝統を引き継ぐ“確かなプロレス”があるのだ。

今日の注目はTAJIRI

 今日はいよいよチャンピオン・カーニバル優勝戦。A、Bブロック共に混沌としていて、最後の最後まで誰が優勝戦に勝ちあがってくるかわからない状況だ。優勝の行方はともかく、今日の公式戦で私が注目しているのは鈴木みのるーTAJIRI戦。
 TAJIRIは大技に頼らないプロレス、利に適ったプロレスを目指している。今回のカーニバルにしても、まだバズソーキックもタランチュラも使わないで試合を構成しているし、急所打ちをやるにしてもグリーンミストを噴くにしても、必ずレフェリーのブラインドを衝いてやっている。TAJIRIには、こうした細かいこだわりがあるのだ。今日の三冠王者みのるとの対戦についてはこう言った。
「時間的なキャリアは向こうの方があるでしょうけど、経験というキャリアでは、向こうは5回ぐらい生まれ変わらないとボクに追いつかないと思いますよ。鈴木選手は強過ぎて困っているんですか? 確かに強いでしょうけど、プロレスは強さだけじゃない。ただ強ければいいのなら、今のところPRIDEとかK-1ではプロレスラーは勝てないんだから、プロレスは総合より弱いことになりますよね。でも、プロレスには総合にはない要素がある。プロレスは頭脳で勝負できますから。だから、こんなに体が小さいボクでも通用するんです。今、ボクにはエディ・ゲレロが宿っています。エディから学んだ頭脳で鈴木選手を攻略します。ボクは強がりません。等身大で喋っていますから」
 そう、エディ・ゲレロはジュニア・ヘビーの体格ながらブロック・レスナーを破ってWWEヘビー級王者になった。あのカート・アングルも攻略している。“ズルしていただき!”の戦法で頂点に立ったのだ。TAJIRIはそのエディと組んでWWEタッグ王者になって奥義を学んでいる。これが今のTAJIRIのバックボーンになっている。
 対する鈴木みのるも頭脳をフル回転させる男。鈴木みのるとTAJIRIの一騎打ちは、カーニバルの星取りを超越した興味深いカードだ。

消耗戦

 今年のチャンピオン・カーニバルは5日連続で後楽園ホール。これは選手にとってキツイ。ただでさえ、シングルマッチの連続なのに、同じ会場でとなると気分の切り替えが難しい。そして毎日、来ているお客さんもいるだろうから気が抜けない。肉体的にも精神的にもハードなはずだ。
 当然、怪我人も出てしまう。健介は右腕、川田は首、諏訪魔は右膝に大きなダメージを負ってしまった。武藤の膝の具合も心配だ。あと2日、対戦相手はもちろん、自分自身の体調管理が各選手の大きな勝負となるだろう。
 さて、放送席も連日、大変な状況に陥っている。ゲスト解説にお笑い芸人がいることでTARUの格好のターゲットに。昨日のイジリー岡田さんは、去年のファン感謝デーで試合をした時に武藤のエルボーでアバラを折ってしまったというが、今回は小島VSロージーの場外乱闘で右肘を痛め、TARUと鈴木の場外乱闘に巻き込まれて散々な目に遭ってしまった。ゲスト解説席は私の隣だから、私も常に巻き込まれる形になるので、たまったものではない(苦笑)。
 今日のゲストは、かつて東京・御徒町で超世代軍を交えてよく飲んでいたダチョウ倶楽部。ヨゴレの王道を行く上島竜兵ちゃんがいるから、ただでは済むまい…。

プロレスラーになりたかった三又又三さん

 昨日のチャンピオン・カーニバル2日目のテレビ解説ゲストは三又又三さん。三又さんとは以前、サムライTVで一緒に番組に出たこともあるし、週刊ゴングに寄稿してくれていたので顔馴染みだ。幼稚園の頃、お父さんが国際プロレスのリング・ドクターをやっていて、さらにお兄さんがプロレス・ファンだったこともあって、三又さんも古くからのプロレス・ファン。プロレスラーになりたくてレスリングを始めたが、体が小さいために断念して芸人に。芸人になってからもUファイル・キャンプに通ったり、カシンと飲みに行った話も聞いたことがある。そんな三又さんだから、金八先生になりながらも、試合に熱視線。特に鈴木みのるの技の妙には唸っていた。
 今回のチャンピオン・カーニバルはGAORAプレゼンツということで5戦すべてをGAORAが中継。日替わりでゲストとしてお笑い芸人が入ってくる。私としては、ちょっと不安だったが、いざ一緒に放送席についてみると、彼らの芸人としてのプロ意識、プロレス・ファンとしての熱さを間近で感じることができて、勉強になることばかり。お笑いネタだけでなく、彼らの“ファン目線”が視聴者にうまく伝わってくれたらなあと思う。
 さて、今日のゲストはイジリー岡田さん。果たして、どうなるか…。

春の祭典開幕!

 昨日、全日本のチャンピオン・カーニバルが開幕した。公式戦は4試合。そのうち小島ーTAJIRIが両者リングアウト、ケアー諏訪魔が時間切れ引分けと、半分が決着がつかない試合だったわけだが、客席からブーイングはなし。TAJIRIの試合の組み立ての巧さによる両者リングアウトは納得がいくものだったし、ケアー諏訪魔は昨年の優勝戦よりさらにボリュームアップした熱闘だった。
 公式戦以外でも、オープニングでミゲル・ハヤシ・ジュニア、ペペみちのく、エル・ノサワ・メンドーサのメキシコ・アミーゴスが客席を温め、公式戦の合間には健介ファミリーVSブードゥー・マーダーズと隙のないマッチメーク。やはり全日本のパッケージとしてのプロレスは完成されている。
 さて、昨日のテレビ解説のゲストは原口あきまささん。原口さんはジャパン・プロが全日本に上がっている頃からプロレスを観ているそうで、純粋なファン。「舞台出身だから、喉が強いんですよ!」と全7試合、声を張って喋ってくれた。お笑い芸人というスタンスを崩さずにネタを盛り込みながらも真剣に試合を観て、大興奮。ファン時代に友達と試合を観ていた頃のようで楽しかった。今日、2日目のゲストはサムライTVでご一緒したことがある三又忠久さんだ。さて、どうなるか…。

今日から

 今日、東京・後楽園ホールでチャンピオン・カーニバルが開幕する。これから5日間連続でGAORA『全日本中継』の解説。日替わりでお笑い芸人がゲストで参加してくるし、結構、プレッシャーを感じていたりするのだ。基本的には自分自身も春の祭典を楽しんで、その空気を伝えられればと思っている。
 今回のカーニバルで個人的に注目しているのはTAJIRIと大鷲。TAJIRIは変則ファイターのようでいて、実際は利に適ったレスリングをする。彼のハッスルとは違ったファイトが今の全日本の選手とどう絡むのか興味深い。そして大鷲がビッグネーム相手にどこまで通用するのか。リーグ戦を引っ掻き回す存在になってほしいと思う。

永田が見せつけるもの

 話が古くなってしまうが、一昨日=21日夜の新日本・後楽園について書きたい。この日はNJC優勝戦。勝ち上がってきたのは永田と真壁だった。こういう1発勝負のトーナメントは、時の勢いがある選手が有利。その意味でこの2人の進出は順当と言えば順当だったと思う。
 試合は真壁がGBHのメンバーも使ってのやりたい放題。中には「これが新日本の春の覇者を決める優勝戦か!?」と文句を言う人もいるだろうが、私としては是。真壁が“新日本ストロング・スタイル”の呪縛から解き放たれてヒールとしてのスタイルを確立してイキイキしているのは喜ばしいこと。客の煽りもうまい。やはりレスラーにとって一番大事なのは、自分を活かすキャラクターを確立することだ。
 対する永田は、そんな真壁をすべて受け止めた。試合後、真壁のファイトを非難することもなかった。あらゆるファイトを受け止められなければ新日本の看板を背負えないことを永田は知っている。
 そして勝ったのは永田。今の永田には、本人が言うように「風が吹いている」と思う。02年4月から翌03年5月まで第31代IWGP王者として10回防衛の記録を作ったにもかかわらず、それ以降、今日まで丸4年も挑戦権すら与えられなかったのである。
 永田はバランス感覚を持つ頭のいい男だから、自分を殺してしまうことが多かった。新日本がガタガタするたびに捨石的な役目を負わされ、それを本人も受け入れていた。去年も試合では棚橋に勝っているにもかかわらず「営業サイドの意見なので…」と挑戦権が棚橋に回った。その理由を公表されてしまったら、ハッキリ言って永田の立場はないのだ。それでも永田はそれを受け入れた。
 もちろん永田の中には葛藤があった。去年の秋ぐらいだったか、
「いや、今は新日本もいいムードになってきましたけど、昨年(05年)の秋から今年の春にかけては、口にこそしなかったけど、俺もいろいろ考えたんですよ。自分のこれからのレスラー人生の時間を考えたら“このまま新日本にいていいのか!?”って。外に出たら、また違う世界が見えるんじゃないかって。ガタガタした当時は口に出せませんでしたけどね」
 という話を聞いた。新日本のことを思うからこそ、自分の本音をグッと抑え込んでいたのだ。
 そして、そんな日々があるから今の永田がいる。真壁に勝利後の控室でのマスコミとの応答の中で、私は「今度の挑戦で棚橋選手に見せつけたいモノはありますか?」と尋ねた。ちょっと意地悪い質問だったかもしれないが、永田はしばし考えた後、
「ミスターIWGPを見せつける」
 と答えた。
 新日本低迷の中で1年間、IWGP王者として頑張った永田。そして不遇だったこの4年間。そのすべてを棚橋にぶつけるのだ。今度の棚橋VS永田は大勝負になる。

みのるは世界一…

昨日は後楽園ホールで昼=UWAI STATION、夜=新日本のダブルヘッダー。上井駅の興行は昨年12・30後楽園以来。不評だったという柴田も鈴木みのるも高山も出なかった2・9後楽園はボルネオに行っていたために観ることができなかった。そういえば、今年に入ってから上井さんとは1回も話をしていない。
 で、久々に観た上井駅。三冠王者のみのるをトップに666のラム会長まで…それこそプロレスのオモチャ箱のような興行。改めてプロレスというものの振幅の大きさを感じさせられたが、それはノンポリシーということにもつながり、かつての新日本&UWFの夢を見たBML時代からのファンが離れているのは明らかだった。
 そんな中で主役として大会に1本の芯を通したのがみのる。メインで総合の高瀬大樹のプロレス・デビュー戦に胸を貸したが、“みのる流”を貫きつつ、高瀬の潜在能力を引き出そうとしていたのが印象的だった。
「どうだ、プロレスは面白かったか? どうせなら総合の片手間にやるんじゃなくて、どっぷりと浸かってみたらどうだ!?」
 と試合後にはエール。一度プロレスから離れて、また戻ってきたみのるだからこそ、高瀬に“プロレスって面白いぞ。本気でやるに値するものだぞ”と言っているような気がした。
「あいつ、俺に勝つまでプロレスをやるって言ったよな。一生、俺には勝てないから、一生、プロレスをやることになる。どうせやるなら、ちゃんとやれって。プロレスは浅くもあり、広くもあり、海のように深い。すべてをひっくるめてプロレスじゃねぇか。今日のメンバーだって見てみろよ。これが全部、プロレスなんだよ。最近、俺はプロレスのできる相手とプロレスのわかる客の前でしかやってなかったけど、今日はプロレスを初めて観に来た人もいるだろうし、改めてプロレスっていろいろだと感じたよ」
 みのるの言葉はプロレス愛に満ちていた。そして、その舌鋒は上井さんにも向けられた。
「上井のオッサン。あんたから離れた前田も船木も柴田も、新日本だって力強く生きている。アンタが俺とライガーを戦わせたいと言って、俺はプロレスに戻ってくることができたんだ。今日もアンタがいるから来たんだ。いつまでもひねくれた中年をやってんじゃねぇぞ!」
 これもみのるならではの言い回しによる上井さんへのエール。控室に戻ったみのるは、
「上井に対して? 思ったことを言っただけ。ムカつく奴には噛みつく。俺は世界一正直な男なんだよ」
 と素っ気なかったが、上井さんがどんなに迷走しようと、叱咤激励しつつ、そのリングに上がり続けるみのるは男気がある。
 この日のみのるは“世界一性格の悪い男”ではなく“さりげなく優しさに溢れた男”に見えた。
 

オフの土曜日

昨日は2月初旬のコタキナバル旅行以来の完全オフ日。まずは京橋の『深町』でおいしい天ぷらを食べ、その後に六本木の国立新美術館へ。『異邦人たちのパリ1900-2005 ボンビドー・センター所蔵作品展』を見学したが、こんなにも多くの作品を一度に展示されると頭がバクハツしそう。そそくさと逃げ出して乃木坂から六本木へ。
 新日本、全日本の事務所が移転してから六本木に来ることはなくなったなあと思いながらプラプラ。全日本の事務所があったインターナショナルビルは健在だったが、道の反対側の旧防衛庁跡地には六本木ミッドタウンがドドン! でも、ちっちゃいタバコ屋さんやドラムカン・ラーメンなどが残っているのは懐かしかった。新日本事務所があった辺りは、これまた六本木ヒルズがドドン! どこもかしこも、こんな景観になってしまったら風情がなくてつまらないなあ。
 そしてバスに乗って渋谷へ。途中、新日本の事務所があった南青山6丁目の井植ビル(もう名前は変わっているかも)を目撃。1階の喫茶店『MIO』は、まだやっているようだった。この店ではファンクラブ時代に凱旋帰国したグラン浜田にインタビューし、一緒にインベーダーゲームをやった記憶がある。浜田さんの凱旋帰国は79年だったから…もう28年も前か! 当時、私は高校2年生。3年生になる直前の春だった。
 などと“旧跡”も訪ねたりしての休日。これまで土曜日に仕事をしないことなど有り得なかったから、結構、新鮮な1日でありました。
 PS.コメントにゴング休刊に関する温かい書き込みをありがとうございました。今の私はというと、週刊ゴングがメインの仕事だったことは事実ですが、この2年3ヵ月のフリーとしての活動で仕事の幅が広がっていて、しばらくは少しのんびりしながら、そうした仕事を従来通りにやっていこうと思っています。早急に何か新しいことを始めようとバタバタするつもりはありません。
 92年6月にSWSが解散する時に最終試合が阿修羅・原さんの故郷・長崎になって、そのことを天龍さんに聞くと「どこであっても、そこにリングがあってお客さんがいれば、レスラーにとっては故郷だよ」という答えが返ってきました。
 今の私も同じ気持ちです。「そこに書く媒体があって、読んでくれる人がいれば、どこであっても故郷」。そういうつもりで今後の仕事をしていきます。現段階では日本スポーツ出版社及び週刊ゴングがどうなっていくのかはわかりませんが…何がどうなっても“私は私!”と思っています。健全な形で週刊ゴングが復刊され、その時の編集部が私を必要としてくれれば、そこにいるでしょうが…。
 この27年間、もしも私の記事でプロレスが好きになったり、元気づけられた人がいたとしたら幸いです。改めて御礼を申し上げます。そして、これからもよろしくお願いします。

崇高なる美

 2日遅れになってしまったが、どうしても書いておきたいことがある。それは大日本プロレスの後楽園大会について。
 佐々木貴と宮本裕向のBJWデスマッチ・ヘビー級選手権は本当に素晴らしかった。私はそこにかつての大仁田厚、四天王時代の三冠戦という表面的には相反する2つの感覚を味わった。大仁田は電流爆破マッチという観る者の想像をはるかに超えた試合でカリスマになり、四天王時代の三冠戦は極限の戦いで観る者を唸らせた。佐々木VS宮本には、その両方の要素があったと思う。
 高さ4メートル以上の足場からフットスタンプ、ムーンサルト・プレスを放った宮本。対する佐々木は足場からリング上に設置した机の上にD-ガイストをやってのけた。まさに想像を超えたファイトだったし、そこにある2人の覚悟と信頼の絆には感動を覚えた。そこまでして大日本デスマッチのブランドを守ろうとした心意気も凄い。今や大日本のデスマッチは崇高なる戦いなのだ。どんなに血が出てもグロではない。そこに戦うレスラーの精神の美しさがある。
 試合後の大ミヤモト・コール。失礼ながら1年前、宮本に注目したファンがどれだけいただろうか? 頑張れば、観てくれる人がいて、報われる。今の大日本プロレスには、プロレス界が忘れかけている夢がある。
 こういう試合を見せられると、週刊ゴングの休刊が残念でならない。宮本のような選手を取り上げるのはスポーツ新聞ではなく、専門誌。きっと週プロが大きく取り上げてくれるだろうが、頑張っている選手は自分の手で記事にしたいものだ。そうそう、この後楽園の日は週刊ゴング最終号の発売日だったが、ゴングで大日本を担当していたフリーの竹田実君を選手たちがねぎらっていたのが印象的だった。選手たちの信頼…これが、この仕事をしていく上での大きな財産である。